カセットオーディオの名門、アイワが70年代末期にラインアップしていたステレオラジカセの中核モデルです。高性能・長寿命を誇るフェライトガードヘッドの採用やカセットデッキ並みのワウ・フラッターを実現した高精度な走行メカニズムなど随所にアイワらしさを発揮した実力派ラジカセです。
目次
CS-80とは
アイワというブランド
アイワというブランドはどうも親会社であったソニーの影に隠れがちな印象ですが、カセットオーディオにおいては高性能なカセットデッキからカジュアルなラジカセにポータブルプレーヤーまで、幅広く魅力的でコストパフォーマンスの高い商品展開を行っていた実力あるメーカーでした。
ステレオラジカセ熟成期の主力機種
ステレオラジカセが機能・性能とも熟成されてきた70年代末期、アイワは「CSシリーズ」として複数のモデルをラインアップしていましたが、本機はそのうちの中核モデルです。
本機の登場より1年前となる1978年、アイワから『TPR-820』というステレオラジカセが販売されていましたが、『CS-80』はそのブラッシュアップモデルと呼べるもので、色調や仕上げがやや異なるもののデザインは非常によく似ています。
FG(フェライトガード)ヘッドを採用
カセットデッキの音質を大きく左右するのが録音・再生ヘッドです。電気信号と磁気信号の変換をつかさどる、レコードでいえばカートリッジにあたるパーツと言えるでしょう。
優れた電磁特性が求められるのはもちろんのこと、録音・再生時には常時テープと接触して摩耗にさらされていますから、耐摩耗性も重要になってきます。
アイワのFGヘッドは、テープと接触するガード部とともに電磁変換の核であるコア部にもフェライトを使用したヘッドで、ソニーが採用していたF&F(フェライト&フェライト)ヘッドと同等のものと思われます。
フェライトは非常に硬度が高いため、極めて寿命の長いヘッドとすることができるというメリットがありました。
高精度な走行メカ
音揺れの原因となる回転ムラを表すワウ・フラッターは僅かに「0.07%」という単品コンポのデッキ並み性能を実現していました。カセットデッキ開発で培ったノウハウが活きています。
ピークレベルインジケーターを装備
録音レベルの設定は、オートとマニュアルが選択できました。マニュアル録音時には、レベルメーターを見ながら録音レベルの設定を行うわけですが、瞬間的な大入力にはメーターの針が追従しきれないことがあります。そのような時に役立つのがLEDによるピークレベルインジケーターです。
+3dBと+7dBの2段階で最大入力をチェックすることができますので、ダイナミックな音源でも上手にレベル設定することができます。
高音質2ウェイスピーカー
迫力ある低音と伸びやかな高音を再生することができる2ウェイスピーカーを採用。ウーハーは16cm、ツイーターは5cmです。出力は7.4Wと十分パワフル。
デジタル表示付きミュージックセンサー
カセットテープに録音された楽曲のうち、何曲目かを指定して頭出しできる機能です。シャープのAPSSが先鞭をつけた頭出し機能の進化形ですね。デジタル表示で飛ばす局数を確認することができます。このデジタル表示はスリープタイマー使用時には残分表示として機能します。
その他の機能
小音量時に低音と高音を補って迫力あるサウンドが楽しめるラウドネススイッチ。
クロームテープが使えるテープセレクター。(TRP-820ではクロームのかわりにフェリクローム対応でした)
レコード再生用のフォノ入力端子を装備。
広がりのあるステレオ感を演出するワイドポジション付きモードセレクター。
フロントオペレーション
すべての操作が前面パネルで可能なフロントオペレーション・レイアウトです。そのため、比較的背の高いプロポーションになっています。
データ
- モデル名:CS-80
- 発売:1979年(昭和54年)
- 定価:66,800円
- サイズ:W 490 x H 370 x 130(mm)
- 重量:7.0kg(電池含む)
管理人のつぶやき
アイワのラジカセは価格の割に高性能、という評判は当時もよく耳にしていました。しかしながら、デザインがパッとしないきらいがありました。
友人がTPR-830というステレオラジカセを持っていて、12cmフルレンジスピーカーながらとても良い音がしました。マニュアル録音もできて、自分の持っていたソニーのゴング55より全然良いなとうらやましく思ったものの、デザインは地味というか垢ぬけないところがイマイチだなと気を取り直していたものです。
しかし、このCS-80はとても良いデザインですね。高性能なラジカセらしい切れ味を感じます。上位モデルのCS-90Xよりも優れたデザインだと思います。