海外短波放送を受信して楽しむBCLが流行した70年代半ばには、BCLラジオとカセットを合体したラジカセも登場しました。アイワのTPR-255は単体のBCLラジオにも匹敵する機能を備えた本格的なBCLラジカセでした。
目次
アイワ TPR-255(BCL255)とは
BCLブームに乗り遅れるな
ソニーのスカイセンサー5800が火をつけたBCLブームに乗り遅れまいと、それまで単体ラジオには力を入れていなかったアイワがラジカセにBCL機能を盛り込んで作り上げたのがTPR-255です。
単体BCLラジオではなくラジカセにBCL機能を持たせることで市場参入したパターンは、本機のほかにビクターのRC-515がありました。
いずれも単に短波が受信できる、という安直な製品ではなく、BCLラジオに求められる機能と性能を吟味して設計された魅力的なBCLラジカセに仕上がっています。
短波をほぼフルカバー
短波の周波数レンジは1.6Hzから30MHzという広大なもの。
一般的なFM/AM/SWの3バンドラジオでは、短波の受信帯域は3.9MHz~12MHzでした。全帯域の約1/3に過ぎませんが、主要な放送局ならこれでも十分カバーできていました。
しかし、趣味としてのBCLではむしろ「主要でない」放送局、いわゆる珍局や難局をいかに受信するかが醍醐味でもありましたので、BCLラジオでは短波に複数のバンドを割り当てて受信帯域を広げていました。
TPR-255は短波に3バンドを奢り、受信帯域は1.6MHz~28MHzとほぼフルカバー。
メカニカルファインチューニングを搭載
短波は中波(一般的なAMラジオの周波数帯)と比べ、地図に例えると縮尺がけた違いに小さいので、チューニングが難しくなります。そこで威力を発揮するのがファインチューニングというダイヤルの微調整機能です。
ファインチューニングには電気的な仕組みを機械的な仕組みの2通りがあり、本機では後者のメカニカルな方式を採用していました。
メカニカルファインチューニングは、ダイヤル駆動機構のギアまたはプーリーの径を変えることによってダイヤル回転に対するフィルムの送り速度を変化させる仕組みになっています。スカイセンサー5800もメカニカル方式を採用していました。
BFOピッチコントロール付き
アマチュア無線等を傍受するには、BFOという機能が必要になります。簡易的にはBFOスイッチがあればよいのですが、より正確に信号を復調するにはピッチコントロールがあると便利です。
本機はピッチコントロールを装備。チューニングスケールの右側にあるダイヤルがそれです。
単体のBCLラジオでもピッチコントロールを装備しているものは多くなかったので、本機の特徴のひとつと言えます。
外部アンテナ端子を装備
微弱な電波をキャッチするには、本体に付属しているロッドアンテナでは力不足です。本格的なBCLには外部アンテナは欠かせません。
もちろんラジオ側に接続用の端子が必要。本機は抜かりなく端子を装備しています。
音楽は良い音で
ラジカセの楽しみ方はもちろんBCLだけではありません。FM放送やミュージックテープなど、音楽を良い音で鳴らすことができなければラジカセとしては物足りません。
TPR-255では15cm x 10cmの楕円形ウーハーと2.2cmツィーターの2ウェイスピーカーを採用。出力は2.8Wと十分。高音と低音が独立したトーンコントロールで好みの音質に調整できます。
データ
- モデル名:TPR-255
- 発売:1976年(昭和51年)
- 定価:38,800円
- サイズ:W288 x H227 x D102(mm)
- 重量:3.2kg(電池含まず)
カタログより
管理人のつぶやき
アイワの製品は性能は良いのに他社比で割安、というイメージを持っていました。ならば購入の選択肢だったか、といえばそうでもありませんでした。それはデザインがイマイチだったからです。
イマイチと感じた原因は何かな、といま考えるに、配色に難があったように思います。まずボディ。黒とやや暗めの灰色のツートーンですが、これがとても地味に見える元凶ではないかと。いっそ黒か灰色一色にして部分的にアルミシルバーを入れたらずいぶん印象が変わったのではないでしょうか。
あとチューニングスケールで短波に黄色の文字を使っていますがこれは白で良かった。短波を目立たせようとしたのでしょうが、ヘタに色を使ったためダサいイメージになってしまった感があります。