VM型カートリッジで名高いオーディオテクニカから1986年に発売されたMC型カートリッジ。初代AT33Eから2度のモデルチェンジを経て完成度を大きく高めています。
オーディオテクニカ AT33ML/OCCとは

ベースはVM型
磁石とコイルを使って発電する電磁式カートリッジは大別すると2種類に分けられます。ひとつはコイルを固定して磁石を動かすMM(ムービングマグネット)型。もうひとつはMM型とは逆に固定した磁石による磁界の中でコイルを動かすMC(ムービングコイル)型。
MM型のほうが大きな出力が得られるうえに針先交換が可能というメリットもあるため多くのメーカーが参入しましたが、アメリカのシュア社とドイツのELAC社が特許を持っていたため、ライセンス料を支払う必要がありました。
オーディオテクニカはマグネットをカンチレバーに対して垂直かつV字型に配置するという独創的なレイアウトを開発し、MM型の特許を回避することに成功。マグネットの形状からVM型と呼ばれるようになりました。
VM型では、V字のふたつの辺にあたるマグネットがそれぞれ左チャンネルと右チャンネルの発電を担うようになっています。これはレコードの原盤に音溝を掘るカッティングマシンと相似形の構造といえます。「カッティングマシンと相似形」はオーディオテクニカの謳い文句になりました。
AT33シリーズに代表されるオーディオテクニカのMC型カートリッジは、VM型にならってV字型(正確には逆V字に近いハの字型)に左右独立したコイルを配置した構造になっているため、VM型の優位性である高いチャンネルセパレーションを共有しています。
黄金のカートリッジ
AT33シリーズ共通の特徴は、見るからに強靭そうなアルミダイキャスト製のハウジングです。有害な振動を抑える効果が高く、見た目にも頼もしさに溢れています。
カンチレバーは軽くて強度の高いベリリウムの丸棒で、先端に行くほど細くなるテーパー形状をしています。表面はさび止めと鳴きを抑える効果を狙った金メッキが施されています。
ちなみにベリリウムは人体への毒性が問題視され、やがて使われてなくなります。代わってより硬度の高いボロンが採用されるようになりました。

本体下面のプラスチック製カバーやネジまでも金色に塗装されているため、かの長岡鉄男氏いわくまさに「黄金のカートリッジ」です。
針先チップはマイクロリニア形状
音質を大きく左右する針先チップには、ML(マイクロリニア)針を採用。針先と音溝が点ではなく線状に接するように加工されたいわゆるラインコンタクト針の一種です。特長としては、レコード内周でも歪みが少ないこと、高域がよく伸びること、摩耗しにくく音溝にも優しいことなどが挙げられます。

信号経路にはPCOCCを採用
カートリッジ内部の信号経路、すなわちコイルそのものと出力端子までの配線にはPCOCCと呼ばれる線材を採用しています。PCOCCは無酸素銅(OFC)の一種ですが、特殊な製法により信号伝送方向の結晶の隙間をゼロにしたもので、純度の高いスピード感あふれるサウンドが特徴。
CDのデジタルサウンドに慣れた耳にも、アナログレコードの魅力を再発見させる新世代カートリッジと言えましょう。
連綿と続くロングセラーに
初代モデルであるAT33Eの発売はCD登場前の1981年。MC型カートリッジの人気が高まりを見せた時代でした。その後もバージョンアップを繰り返し、2020年代になっても後継機が登場するという異例のロングセラーシリーズとなっています。オーディオテクニカのカートリッジ史に残る名シリーズといえましょう。
- 1981年 AT33E:初代モデル ベリリウムカンチレバー、だ円針
- 1985年 AT33ML:ML針、LC-OFC採用
- 1986年 AT33ML/OCC:PCOCC採用
- 1994年 AT33LTD:ML/OCCの限定生産モデル、ボロンカンチレバー、ダークブラウンボディ
- 1995年 AT33VTG:LTDの改良版、ブラックボディ
- 1997年 AT33PTG:創立35周年記念モデル
- 2002年 AT33R:創立40周年記念モデル
- 2006年 AT33ANV:創立45周年記念モデル、ジュラルミンカンチレバー、ワインレッドボディ
- 2008年 AT33EV:ANVの改良版
- 2010年 AT33PTG/Ⅱ:PTGの改良版、ボロンカンチレバー
- 2014年 AT33Sa:シバタ針
- 2025年 AT33xシリーズ:デザインを一新した新シリーズ
データ
- 発売:1986年(昭和61年)
- 定価:38,000円
- 発電方式:MC型
- 出力電圧:0.4mV
- セパレーション:30dB以上
- 周波数帯域:15~50,000Hz
- 針圧:1.5g
管理人のつぶやき
オーディオテクニカのカートリッジはVM型のAT160MLに、MC型ではAT33ML/OCCとAT-OC9の2機種を使っています。型式は違えど、共通するのはメリハリの効いた現代的なサウンドといったところでしょうか。
決して安っぽいドンシャリではなく、繊細さや艶も持ち合わせているところが素晴らしいと思います。反面、しっとりした女性ボーカルを聴きたい時などには別のカートリッジを選びたくなりますね。
電源ケーブルによる音の違いなどさっぱり分からない管理人の駄耳でも、カートリッジならば十分に聴き分けることができます。こんなところもアナログの醍醐味ですね。


