70年代後半から80年代前半にかけて世界的に大流行したAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)。バーティ・ヒギンズもその時代を代表するアーティストのひとりですが、日本の歌謡曲とも相性バツグン。郷ひろみによるカバー曲が大ヒットしました。
バーティ・ヒギンズ/Bertie Higginsとは
歴史的大作家の血を引くアーティスト
バーティ・ヒギンズは1944年アメリカのフロリダ生まれですが、なんとドイツが生んだ歴史的作家・ゲーテを祖先に持つというから驚きです。
それもあってかあらぬか、AORらしい甘いメロディに加えて詩的情緒たっぷりの歌詞も特徴で、一説によるとバーティと別れた恋人が自分のことを歌った『キー・ラーゴ』に心を打たれ、バーティのもとに戻ってついに結婚することになったのだとか。なんともロマンチックなエピソードです。
ラジオから生まれた郷ひろみのカバー
日本では郷ひろみがカバーした『Casablanca(哀愁のカサブランカ)』が大ヒットしたおかげで、バーティ・ヒギンズの代表曲もカサブランカだと思われているようです。
郷ひろみによるカバーが誕生したのは、ラジオの電リク番組が背景にありました。
ニッポン放送のパーソナリティをしていたはた金次郎は、バーティ・ヒギンズの『Casablanca』を耳にするや日本でも大ヒット間違いなしと確信。自身が担当する電リク番組で日本語の歌詞と歌って欲しい歌手を募集したところ応募が殺到。スタッフの協議によって歌手には郷ひろみが選ばれ、CBSソニーからレコードがリリースされることとなりました。
もっともバーティのデビューはCBS傘下のKat Family Recordsでしたし、郷ひろみもCSBソニーのイチオシアイドル歌手でしたから、大人の事情が働いた可能性もありますね。
歌謡曲との親和性
郷ひろみによる『哀愁のカサブランカ』が大ヒットしたのは、郷の人気ももちろんありますが、メロディと歌詞が典型的なニッポンの歌謡曲そのものだったからだと思われます。
はた金次郎が原曲を聴いて「これは日本でも売れる違いない」と思ったのはそんなところを見抜いたからかもしれません。実はデビューアルバムの『Just Another Day In Paradise』に収められた曲は、『Casablanca』だけにとどまらず、どの曲も日本語化に馴染むように聴こえます。
アルバムのタイトル曲でもある『Just Another Day In Paradise』は布施明に歌ってもらうのにピッタリだと思うんですが、いかがでしょうか?
AORと一口にいってもカントリー風のものからジャズやブルースの香りがするものまで様々。日本語との相性もかなり濃淡あると思います。例えばスティーリー・ダンやボズ・スキャッグスの歌はちょっと日本語には馴染まないでしょうね。
そういう意味から、バーティ・ヒギンズと歌謡曲との親和性はかなり特異なものと言えるのではないでしょうか。
管理人のつぶやき
バーティ・ヒギンズのアルバムは3枚持っているですが、実はうち2枚は同じものだと気づきました。
なんとデビューアルバム『Just Another Day In Paradise』は2種類のジャケットがあったんですね。
バーティの顔をフィーチャーしたほうが恐らく本国でのオリジナルデザインで、上のいかにもAORって感じのデザインは日本版なんじゃないでしょうか?
ちょっとわたせせいぞうのイラストみたいです。
果たしてどちらのデザインが売れたのか。うーん。