ブロンディ – ポップとパンクの狭間に輝いた金髪のアイコン

1976年にデビューしたアメリカのロックバンド。デボラ・ハリーの美貌に注目が集まる一方で、音楽性においてはパンクからニューウェイブ、オルタナティブロックなど変化と進化にチャレンジし続けた、ロックの歴史に残るバンドのひとつです。

ブロンディ/Blondieとは

4枚目のスタジオアルバム『Eat to the Beat』
4枚目のスタジオアルバム『Eat to the Beat』

パンクとポップの交差点に現れた存在

1970年代半ばのニューヨークといえば、パンクの胎動期。CBGBを中心に、ラモーンズやパティ・スミス、テレビジョンといった個性派たちが火花を散らしていた時代です。そんな中で、少し異なる輝きを放っていたバンドがブロンディでした。

バンドの中心となるのは、元プレイボーイ・バニーという異色の経歴を持つヴォーカル、デボラ・ハリーと、ギタリストのクリス・スタインです。彼らはもともとThe Stilettosというグループで活動していましたが、1974年に独立してBlondieを結成。その名は、デボラが街を歩くたびに「Hey, Blondie!」と声をかけられていたことに由来しています。

『Parallel Lines』で世界が振り向いた

ブロンディは1976年にセルフタイトルのデビュー・アルバム『Blondie』をリリースし、まずは地元NYのシーンで注目され始めます。しかし真のブレイクは1978年、サード・アルバム『Parallel Lines』の成功によって訪れました。

このアルバムからは、『Heart of Glass(ハート・オブ・グラス)』が世界的な大ヒットとなりました。もともとロック寄りだったバンドが、ディスコのリズムを大胆に取り入れたことで、当時のパンク・ファンからは「商業路線に走った」と揶揄されることもありました。しかし、実際にはこのクロスオーバー感こそがブロンディの本質であり、逆にその柔軟さが大衆と時代をつかんだのです。

Heart of Glass

同作には他にも『One Way or Another(ワン・ウェイ・オア・アナザー)』や『Picture This』といったエネルギッシュなナンバーが収録されており、バンドの持つ鋭さとポップ性の絶妙なバランスが感じられます。

映画と結びついた名曲“Call Me”

1980年、ブロンディはまた一つの頂点を迎えます。映画『アメリカン・ジゴロ』の主題歌『Call Me(コール・ミー)』が、全米チャートで6週連続1位を記録したのです。この曲は、イタロ・ディスコの巨匠ジョルジオ・モロダーとのコラボレーションによって生まれました。

Call Me

デボラのヴォーカルは、パンクの攻撃性とディーヴァの艶やかさを同時に持ち合わせており、この曲でもその魅力が存分に発揮されています。『Call Me』はディスコでもロックでもラジオでも流れ、あらゆるリスナーを巻き込む万能型ヒットとなりました。

世界初の“ラップ・チャート1位”曲も

1981年には『Rapture(ラプチャー)』をリリース。この曲はラップを取り入れた初の全米No.1ソングとなりました。デボラが白人女性として初めて本格的なラップを披露したこの楽曲では、ヒップホップ黎明期のアーティストであるグランドマスター・フラッシュやファブ・ファイヴ・フレディの名前も登場します。

当時、ヒップホップはまだアンダーグラウンドの文化でしたが、ブロンディはその新しい波を取り込み、大衆の耳に届けました。この先見性と柔軟性もまた、彼らの大きな魅力の一つです。

別れ、そして鮮やかな復活

1982年、クリス・スタインの病気やバンド内の疲労が重なり、ブロンディは一度解散します。しかし、彼らの物語はそれでは終わりません。1997年に再結成し、1999年には『Maria(マリア)』が全英チャートで1位を獲得しました。これはブロンディにとって約20年ぶりの快挙です。

Maria

 

『Maria』は往年のファンにとっては懐かしさを、若い世代にとっては新鮮さを感じさせる楽曲であり、年齢や時代を超えた普遍性を持っていました。ここでもまた、デボラ・ハリーの存在感が際立っていました。

現在も続く“変わらない進化”

ブロンディは現在も現役のバンドとして、ツアーやアルバム制作を続けています。2020年代に入ってからも『Pollinator』や『Against the Odds』といった作品をリリースし、音楽的にもヴィジュアル的にも衰えを見せていません。

デボラ・ハリーは70歳を超えた今もステージでそのカリスマ性を発揮しており、若手アーティストからのリスペクトも絶えません。ブロンディは、ただの「懐かしのバンド」ではなく、常に時代と対話し続けるアクティブな存在なのです。

ポップでありながらパンク、洗練されていながら野生的。そんな相反する魅力を同居させたブロンディは、これからもロックの歴史において、特別な位置を占め続けていくでしょう。

管理人のつぶやき

本文にもあるように、デボラと公私にわたるパートナーだったバンドメンバーのクリスが「尋常性天疱瘡」という難病を罹患したため、彼の看病を優先するためバンドを解散した、というエピソード。これにはグッと来てしまいますね。外見からはクールで生活感のかけらも感じられないでデボラですが、実は人間味あふれるハートの持ち主。さらに、15年を経てバンドを再結成、みごとメインストリームにカムバックしたというのも芯の強さを感じさせるもの。

大ヒット曲『Heart of Glass』とは裏腹に、実は『Heart of Stone』の持ち主なのかもしれません。

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