クリストファー・クロスは80年代のAORブームを代表するアーティストのひとり。親しみやすいメロディと唯一無二のハイトーンボイスが魅力。「南から来た男」とは彼のデビューアルバムに付けられた邦題タイトルです。
クリストファー・クロス/Christopher Crossとは
南とはどこか?
デビューアルバムにあしらわれたフラミンゴからの連想で、クリストファー・クロスはフロリダ出身では?と思った人もいるかもしれませんが、さにあらず。テキサス州はサンアントニオの出身です。
アメリカ南部のポピュラー音楽といえば、いわゆるサザンロックが有名ですね。骨太で土の匂いのするマッチョな漢のロックと言えましょうか。
クリストファー・クロスも地元をベースに活動していたロックバンド・フラッシュでボーカルとギターを担当しており、サザンロックの有名バンドZZトップのほかディープ・パープルやレッド・ツェッペリンなどの前座をつとめたりしていたそうです。
73年にフラッシュを脱退すると、キーボードのロブ・ミューラー、ベースのアンディ・サモンそしてドラムスのトミー・テイラーと活動をともにしつつ、ソロデビューを目指すことになりました。
西海岸のミュージシャンを魅了
テキサスのクラブでのライブが徐々に評判を呼び、ついにメジャーレーベルのワーナー・ブラザーズからアルバム・デビューが決まります。
デビューアルバムのレコーディングの最中、たまたま隣のスタジオでレコーディングしていた西海岸の女性人気シンガー、ニコレット・ラーソンが彼の声をいたく気に入り、バックボーカルをやることになりました。そこからは芋づる式に西海岸の著名ミュージシャンに伝染していきます。
ドン・ヘンリー、J.D.サウザー、マイケル・マクドナルド、ヴァレリー・カーター、ラリー・カールトン、ジェイ・グレイドン… 錚々たるメンバーがゲスト・ミュージシャンとしてアルバム制作に参加することになりました。
謎のアーティストとしてデビュー
いきさつは不明ですが、あえて素顔を公開せずコンサートも行わないという謎めいたデビューとなりました。ラジオから流れる透き通った歌声に美しいメロディ。いったい誰?どんな人?人びとの好奇心を大いに刺激したことでしょう。
デビューアルバム『Christopher Cross(邦題「南から来た男」)』は大ヒット。最初にシングルカットされた『Ride Like The Wind(風立ちぬ)』はいきなり全米2位を獲得。つづくシングル『Sailing(セイリング)』で早くも全米1位を射止めてしまいます。
アルバムは1981年のグラミー賞アルバム・オブ・ザ・イヤーをはじめ5部門を総なめ。
南から来た謎の男はいきなり時の人となったのでした。
映画の主題歌もヒット
1981年に公開されたスティーブ・ゴードン監督・脚本のコメディ映画『ミスター・アーサー』の主題歌『Arthur’s Theme -Best That You Can Do(ニューヨーク・シティ・セレナーデ)』も全米シングルチャート1位を獲得する大ヒットとなり、アカデミー歌曲賞を受賞することとなりました。
来日もさかんに
覆面デビューはすぐに解除となり、コンサートも精力的に行うようになりました。
早くも1980年には中野サンプラザを皮切りとした日本公演を行っており、1983年には日本武道館でのライブも実現。
しばらく間がありましたが、2000年代には毎年のように来日するようになります。ライブ会場はブルーノート東京や各地のビルボードライブで、以前のような大規模コンサートではなく、落ち着いた大人のエンターテインメントを提供してくれています。
管理人のつぶやき
サザンロックバンドの前座でボーカルをやっていた、という経歴がにわに信じられない天使のような歌声。実はダミ声を出すこともできたのでは、と疑いたくなります。
そんな冗談はさておき、本当にこの大柄な男のどこからこんな声がでるのか、というぐらい清涼感溢れるハイトーンはまさに爽やかな風に包まれたような感覚に捉われます。特にヘッドホンで聴くと最高ですね。
デビュー時に顔を公開しなかったワケもなんとなく想像がつきますが、ルックスなんてどうでもいいですよね。フラミンゴ、最高!