ラジカセのデザイン面での印象を大きく左右するスピーカーグリル。プラスチック製グリルに焦点を合わせた前編に続き、後編ではメタル製とクロス製のグリルを見ていきましょう。

メタル製グリル
メタル製のグリルはラジカセ黎明期に一部みられたものの、70年代半ばまではプラスチック製でほぼ占められていました。ところが、70年代後半になるとメタル製が徐々に増えていきます。
プラスチック製グリルと比べ、シャープで現代的なイメージが造りやすいいっぽう、メタルの加工法によってほぼ見た目が決まるため、グリルそのもののデザインは画一的になりがち。そこで、グリルの周囲部に加飾を施したり、内部のスピーカーを積極的に見せるようなデザインが流行します。
メッシュ
メタルのワイヤーをタテヨコに編み上げてメッシュにしたものです。メッシュの密度によって開口率に違いが出ます。メッシュだけでは強度が不足するため、裏側に補強用のフレームが入っています。
ソニー CF-1980Ⅱ
モノラルラジカセのデザインとしては最高傑作といえる名機。初代スタジオ1980の素晴らしいデザインをさらに昇華させたのは、アルミ製の加飾とメタルメッシュのスピーカーグリルによるところが大きいです。メタル製グリルの流行はここから始まったといえるかもしれません。メッシュの目はかなり密なため、ウーハー本体はほとんど見えません。

ソニー CF-1990
スタジオ1980の兄貴分にあたる大型ラジカセです。最大の特徴である20センチウーハーを強調するため、粗目のメッシュで透過性を高めています。アルミ製の巨大なセンターキャップがアクセントとして効いています。このメッシュはスピーカーの前面だけでなく、チューニングメーター下の全エリアを覆う形になっているところがユニークです。上品なCF-1980Ⅱに対して、パワフルな印象です。

スーパースコープ CRS-4800
日本マランツのゼネラルオーディオ製品に付けられたブランドネームがスーパースコープ。アメリカンなデザインテイストは純国産メーカー製とはひと味違った魅力を持っています。本機では同軸スピーカーをそれぞれ独立したメッシュでカバー。音抜けの良いサウンドを期待させるデザインです。

ナショナル RX-5700
『DISCO M』の愛称を与えられたメタルテープ対応の高級ラジカセ。ウッド調サイドパネルが付いて重厚なイメージです。高級感の演出には後述するジルバップのようにクロスを使う手もあったと思いますが、メッシュでもなかなかの質感を出しています。

パンチング
薄いメタルの板を打ち抜いて多数の小穴を開けたもの。開口率が高く強度も大きいため、グリルに使いやすい素材です。高い透過性を活かして内部のスピーカーを見せるようなデザインに適しています。グリルの周囲にスピーカーフレームを模した加飾を施すことで、デザインの独自性を出そうとする製品が多いようです。
日立 TRK-8080MKⅡ
透過率が非常に高いグリル。内部のスピーカーもデザイン要素となっています。グリルまわりの加飾が控えめなところが落ち着いた印象を与える大人向きの優れたデザインです。

シャープ GF-305
シャープらしい若々しいデザインです。分厚いメタル風の加飾が目立つスピーカーまわり。APSSのインジケーターや大きなツマミのついたカセットホルダーなど、あらゆるパーツが自己主張をしているかのような賑やかさです。ツィーター用グリルはパンチングではなくメッシュになっています。

ナショナル RS-4300
四角いグリルが大変ユニークです。ツィーター用グリルも凝ったデザイン。グリルの透過性はあまり高くなく、スピーカー本体を見せるような演出にはなっていません。個性が光るデザインです。

ビクター RC-515
BCLブームのさ中にビクターが発売したラジカセです。短波3バンドにファインチューニング機構付きなどBCL向けに機能を強化。パンチングの穴はかなり小径で透過性は高くありません。グリルは角をまるめた長方形で、センター部の加飾がアクセントになっています。

エキスパンド
切れ込みを入れたメタル板を引き伸ばすことで開口部を形成したものです。開口部はひし形になることが多いようです。パンチングとメッシュの中間のような外観をしています。強度はパンチングに準じます。
ナショナル RS-4250
SFメカのような精悍なルックスが魅力のラジカセ。エキスパンド式グリルが醸し出すメカニカルな雰囲気が絶妙にマッチしています。

パイオニア SK-7
パイオニアのラジカセで有名なのはランナウェイシリーズですが、こちらはその前身であるマルチボーイシリーズの一台。名前のとおり多彩なプレイ機能が自慢でした。グリルはウーハーとツィーターをまとめてカバーするタイプ。クリアーなサウンドをイメージさせるデザインです。

パイオニア SK-900
パッシブラジエーターを搭載し独立したスピーカーボックスを持つパイオニアの最高級ラジカセです。ホワイトコーンのスピーカーを引き立てるため、透過性に優れるエキスパンド式グリルを採用。塗装も本体カラーにあわせたグレーシルバーとして、統一感のあるデザインに仕上がっています。

ソニー CFM-11
ソニーの変わり種ラジカセ「MUSICAN」シリーズのモノラル機です。姉妹機にステレオタイプのCFS-10Pがありました。これでもしスピーカーのセンターキャップが見えなかったら、墓石のような地味な印象になっていたでしょう。

クロス製グリル
少数派ながらクロス製グリルを採用したラジカセもありました。クロス製グリルは衝撃に弱いため、本来ならばアクティブに持ち運べるラジカセには不向きなのですが、据え置きを前提にした重量級・高音質ラジカセならば高級感の演出に一役買うことができます。
パイオニア SK-95
メタルテープ対応でドルビーも搭載した高級ラジカセです。クロス製グリルはブラックですが、シルバーの化粧桟が効果的なアクセントになっています。このグリルは外すことが可能なので、万一クロスが痛んでしまったら張り替えることができます。

ソニー CF-6600
大ヒットしたジルバップ CF-6500の上位機種です。厚手のウッド調サイドパネルによってキャビネットの音響効果を高めるとともに高級感を付与しています。モダンな印象のオリジナル機とは全く異なる、クラシカルなイメージになりました。

ソニー CFS-V8
ゴージャスな3ウェイスピーカーを採用した高級ラジカセ。明らかにグリルを外した状態で鳴らすことを想定しています。グリルは使わない時のホコリ除けですね。

管理人のつぶやき
80年代以降のラジカセではメタル製グリルが圧倒的主流派となり、プラスチック製グリルは数えるほどになってしまいました。見た目のシャープさや音ヌケの良さの他に、コストのかかる金型が不要なことも理由のひとつだったかもしれません。
だからでしょうか、独特の造形をもつプラスチック製グリルにはむしろヴィンテージな味わいを感じますね。70年代の音楽を鳴らすなら、そんなラジカセ(しかもモノラル)のほうが時代の空気も含めてうまく再生してくれるような気がします。

