「あれは誰だ、誰だ、誰だ、あれはデビル、デビルマーン」「裏切り者の名を受けて、すべてを捨てて戦う男」「デビルウィングは空を飛び、デビルビームは熱光線」…。テレビアニメの『デビルマン』の主題歌の一節が次々に思い浮かぶご同輩は多いことと思います。テレビアニメのデビルマンは子供も楽しめる明快なヒーローものでした。しかし原作は…
永井豪の名作ヒーローもの
永井豪原作のヒーローものといえば『マジンガーZ』とならんで『デビルマン』をあげないわけにはいかないでしょう。ごくふつうの高校生、不動明(ふどう・あきら)に悪魔が乗り移ったという設定こそコミック版とテレビアニメで一緒ですが、中味はまったくの別物です。テレビアニメは子供向け、コミック版は大人向けと言って良いでしょう。
テレビ版とコミック版はもはや別作品
テレビ版は、正義のヒーロー・デビルマンが人類を滅ぼそうとする悪魔軍団と戦う、というシンプルな勧善懲悪ストーリーから外れません。永井豪作品らしい刺激的なシーンも含まれてはいたものの、子供向け番組としてはなんとかセーフでした。
いっぽう、コミック版はそのスケールの大きさとテーマ性の深さから、後世のSFにも大きな影響を与えたと言われる歴史的作品。
ストーリー展開とラストシーンは、とてもテレビ版としてはつくり得ない衝撃的なものでした。その内容をここでネタバレするのは本意ではありませんので詳細は書けませんが、ごく乱暴にまとめてしまうなら、テレビ版は「正義は勝つ」。対して原作は「正義は存在しない」とでもなりましょうか。
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技のいろいろ
テレビ版ではヒーローものにお約束といえるさまざまな技が登場します。
技にはすべて「デビル」が冠せられていました。基本技である「デビルチョップ」に「デビルキック」。攻撃技ではなく探索技としてはサーチライトのような「デビルアイ」、それからいわゆる地獄耳の「デビルイヤー」。
空飛ぶ翼の「デビルウイング」は鋭いカッターとしても機能します。ベルトからは岩をもくだく三日月型の「デビルカッター」が飛び出します。
さらに全身に蓄えたエネルギーを一気に敵に浴びせる「デビルビーム」や超音波の「デビルアロー」なんていう必殺ハイポテンシャル系ワザも持っていました。
この赤マントが「デビルウイング」。ちなみに真ん中の四角い物体はこの玩具特有のもの。なぜか「笛」になっていて吹けるのです。
キャラ変してしまったアキラくん
はい、これは悪魔にとりつかれてしまった不幸な「不動明」青年です。善良で気弱な性格だったのに悪魔にとりつかれてからワイルドになってしまいます。
正確に言えば、アキラ君はヒマラヤ山中で殺害されてしまっており、その身体をデビルマンが乗っ取ったというものです。人間・不動明はすでに存在せず、悪魔・不動明として生まれ変わってしまったのですね。
テレビ版では、悪魔界を裏切って人間側についたデビルマンを抹殺し、人間界征服を企む悪魔界から次々に送り込まれる「妖獣」を迎え撃ち、恋人の「牧村美樹」ちゃんを守るために戦います(もちろん人類のためもあるんですけど)。
ちなみに牧村美樹の両親は不動明の両親と親交があり、不動夫妻が海外出張のあいだ、明を自宅に住まわせ実の息子のように世話してくれる素晴らしい人たちなのです。
美樹は牧村家の長女で、気弱だった明に対して見下すような態度をとっていました。しかし、デビルマンに乗っ取られてワイルド化した明に心惹かれるようになっていったのです。
管理人のつぶやき
テレビで『デビルマン』が放映されていたのは1972年7月から翌年の3月まで。
永井豪のもう一つの有名なヒーローものテレビアニメ『マジンガーZ』の放映は1972年12月から1974年9月でした。つまりふたつの番組は放映期間が被っていたわけですね。
さらにもうひとつ時期が被っていた永井豪原作のアニメがありました。そう、『キューティーハニー』です。こちらは1973年10月から1974年3月まで。出世作となった漫画『ハレンチ学園』のお色気路線を踏襲した、テレビアニメとしてはそうとうに「攻めた」内容で、自分はずかしくてとても見れませんでしたね。この路線をさらに過激化したのが『けっこう仮面』ですね。
しかし3作品が同時にテレビ放映されていたとは。永井豪の人気たるや恐るべしです。