ハーブ・アルパートは1960年代より現在に至るまで活躍を続けるアーティストであるとともに、レコード会社の経営者としても成功を収めた、アメリカの音楽業界における巨星のひとりです。
目次
ハーブ・アルパート/Herb Alpertとは

ハーブ・アルパートという音楽家
ハーブ・アルパートは、1960年代のアメリカン・ポップスを代表する音楽家のひとりです。軽快なトランペット、ラテン風の明るいリズム、そして親しみやすいメロディで、多くのヒット曲を生み出しました。
名前を知らなくても、曲を聴けば「あ、この曲か」と思う人は多いかもしれません。特に日本では、テレビ番組やCMなどで長年使われてきたため、自然と耳にしてきた人も多いでしょう。
また、彼は演奏家としてだけでなく、レコード会社経営者としても成功しました。音楽業界に大きな影響を与えた人物でもあります。
ロサンゼルスで育った少年
ハーブ・アルパートは1935年、Los Angelesで生まれました。子どものころから音楽に親しみ、8歳でトランペットを始めています。
若いころは作曲やスタジオ仕事などをしながら経験を積みましたが、1962年に発表した The Lonely Bull が大きな話題になりました。
闘牛場の歓声を入れた演出や、メキシコ風の雰囲気を持つサウンドは当時かなり新鮮だったようです。ここから“ティファナ・ブラス”という名前が広く知られるようになっていきました。
60年代を代表するヒット曲
1960年代半ばになると、ハーブ・アルパートは次々にヒットを飛ばします。
なかでも有名なのが1965年の「A Taste of Honey」です。落ち着いたメロディと柔らかなトランペットが心地よく、今聴いても古さを感じません。
さらに「Spanish Flea」は、日本でも非常によく知られている曲です。軽快でコミカルな雰囲気があり、昔のテレビ番組などで耳にした記憶がある人も多いと思います。
また1968年には「This Guy’s in Love with You」が全米1位を記録しました。この曲では自らボーカルも担当しています。派手な歌い方ではありませんが、優しく語りかけるような雰囲気が魅力でした。
もう一曲忘れてならないのが「Bittersweet Samba」。ラジオの深夜放送「オールナイトニッポン」のテーマ曲ですね。
A&Mレコードをつくった男
ハーブ・アルパートは、自分でレコード会社まで立ち上げています。
1962年、Jerry MossとともにA&Mレコードを設立しました。この会社は後に大成功し、1970〜80年代を代表するレーベルのひとつになります。ちなみにA&Mの”A”はAlpert、”M”はMossの頭文字です。
所属していたアーティストも豪華で、Carpenters、The Police、Supertramp、Janet Jacksonなど、ジャンルもさまざまでした。
演奏家として成功しながら、裏方としても才能を発揮したところが、ハーブ・アルパートの面白いところです。
80年代は「Rise」で再び脚光を浴びる
ハーブ・アルパートのキャリアで特に興味深いのは、1980年代にもう一度大きな成功を収めたことです。
その代表曲が「Rise」でした。
この曲を初めて聴くと、「本当にあのティファナ・ブラスの人?」と思う人もいるかもしれません。60年代の明るいラテン風サウンドとはかなり違い、都会的でクールな雰囲気になっているからです。
エレクトリックピアノや滑らかなリズム、深夜の都会を思わせるような空気感。その中をハーブ・アルパートのトランペットが気持ちよく流れていきます。
派手に吹きまくるわけではなく、むしろ力を抜いた感じなのですが、それがとても格好いいのです。
「Rise」は全米1位を記録し、グラミー賞も受賞しました。60年代に成功した音楽家が、80年代にも再びヒットチャートの頂点に立つというのはかなり珍しいことでした。
80年代サウンドへの自然な変化
1980年代の音楽は、シンセサイザーや電子ドラムが一気に広がった時代でした。
そんな中、ハーブ・アルパートも時代の変化をうまく取り入れていきます。
1987年の「Keep Your Eye on Me」は、とても80年代らしいサウンドの曲です。打ち込みリズムやシンセサイザーを使いながらも、どこか大人っぽく上品な雰囲気があります。
このころの彼の音楽は、AORやスムースジャズが好きな人には特に好まれました。夜のFMラジオや、高級オーディオの試聴コーナーで流れていそうな音楽、と言うとイメージしやすいかもしれません。
面白いのは、無理に若者向けになろうとしている感じがないことです。年齢を重ねたミュージシャンらしい余裕があり、それが80年代の都会的なサウンドによく合っていました。
聴きやすさの中にある魅力
ハーブ・アルパートの音楽は、難しくありません。どちらかというと“気軽に楽しめる音楽”です。
しかし、ただ軽いだけではなく、どこか品があります。メロディの作り方や音のバランスがとても洗練されているのです。
60年代の陽気なティファナ・ブラス、80年代の都会的な「Rise」。時代によってサウンドは変わっても、「肩の力を抜いて楽しめる」という魅力は変わりませんでした。
管理人のつぶやき
本文にも書きましたけど、子どもの頃にテレビやラジオで何気なく耳にしていた曲が、大人になってから「あのミュージシャンの曲だったんだ~」と知ることになる経験はどなたもお持ちではないでしょうか。
管理人にとっては、ハーブ・アルパートはまさにこのパターン。ハーブ・アルパートとの出会いは高校時代のこと。79年にリリースされた「Rise」でした。「これがオトナの音楽ってものなのかぁ~」なんて、聴いているだけで少しだけ大人になった気分がしたものです。
ところが、のちに知って大いに驚きました。中学生の時にさんざん聴いたあのオールナイトニッポンのテーマ曲がまさか同じミュージシャンの作品だったとは!さらに「A Taste of Honey」や「Spanish Flea」なんかは小学生の頃にローカル番組のBGMによく流れていた記憶があります。「なぁんだ、昔からの知り合いなんじゃないの。すっかり格好よくなっちゃったけど、昔はけっこう田舎クサかったよね?」なんて。


