日立 KH-2200 – 不人気だったのが幸いして今では稀少価値高し

家電メーカー各社がごぞって参入した1970年代後半のBCLブーム。内実はメーカーによって力の入れ具合はまちまちで、日立のサージラムはその平凡なスペックから人気を獲得するに至りませんでした。

KH-2200(サージラム2200)とは

KH2200
日立 KH-2200

特徴に乏しいBCLラジオ

サージラム KH-2200が発売されたのは1977年。すでにBCLラジオはアナログ方式としては熟成期にあり、周波数直読機能が当たり前になっていた年代です。

BCLブームの2強であったソニーはスカイセンサー5900を1975年に投入済み、対するナショナルは1976年発売のクーガ2200で巻き返しを図っていました。

そんな時に、周波数直読機能もなく回路もシングルスーパー方式と、まったく見どころのないBCLラジオを投入した日立の意図は何だったのか?おそらく販売サイドからの突き上げにやむなく対応した、というのが実情ではないでしょうか。開発予算や期間はきっと限られていたことでしょう。

当時の家電業界はまだ量販に席捲されておらず、町のパパママショップが健在でした。メーカー各社はそれぞれ系列店を抱えており、白物からテレビやステレオまで家庭の電化を同一メーカー製品でまるまる商売にできたのです。日立も「日立チェーンストール」というネットワークを持っていましたので、「うちにもBCLラジオを扱わせろ!」という強いプレッシャーがメーカーに寄せられたものと推察します。

敢えて言うならダイヤルまわりのデザイン

そんな背景で(想像ですが)、正直言って日立の技術力が投入されたラジオにはなっていません。繰り返しますが、常識になっていた周波数直読機能がないこと、そして受信回路がダブルではなくシングルスーパーヘテロダイン方式だったことに表れています。

あえて特徴をあげるなら横長のスタイルとダイヤルまわりのデザインでしょう。

横長スタイルについては良かったらナショナルのクーガ113の記事もご覧ください。

ダイヤルまわりはこんな感じです。

KH2200のダイヤル
一番の見せ所

ダイヤルとチューニングスケールが同心円状に配置されています。ちょっと新鮮なデザインです。

ダイヤル外周の目盛りもなんとなく周波数直読を意識した感じもありますが実用性は乏しいです。

このレイアウトを「バーニアダイヤル」と紹介している記事を目にしますが、正確には「バーニアダイヤルふう」とでも言うべきかと思います。

本物のバーニアダイヤルはこちらです。本来なら「副尺」があるべきですが、これは小型なので副尺はついていません。

バーニアダイヤル
小型のバーニアダイヤル

ダイヤルとスケールが同心円状に配置されていて、減速機構によってダイヤルの回転よりもスケールがゆっくり回るようになっています。この点はKH-2200も同じです。

違うのは減速機構の仕組みです。

プラネタリーギア
バーニアダイヤルの中身

ご覧のように、ダイヤル軸の周囲にある3組のプラネタリーギアの摺動(まさつのこと)によって減速させています。この方式の優れているのは、通常のギア(ダブルギアも含め)方式や糸掛け方式と比べてスムーズかつち密な操作感が味わえることです。もちろん糸掛け式のようなバックラッシュ(遊び)もありません。

対して、KH-2200の減速機構は糸掛け式なのです。本来のバーニアダイヤルであれば、バリコンはダイヤルの軸上に配置されるはずですが、KH-2200ではダイヤルとは離れた位置にバリコンが配置されており、それを糸とプーリーの組み合わせ機構で駆動するようになっています。

なので、「バーニアダイヤルふう糸掛け式ダイヤル」なのです。

平凡さがかえって愛おしい

のっけからずっとクサしてしまって申し訳ございません。ここからは良いところを挙げましょう。

まずは横長の安定感あるスタイル。ベッドに横になってラジオを聴くにはラジオも横長のほうがなんかしっくりきます。

サージラム2200
クーガ113と横長チャンピオンを競う

一昔前の機能になってしまいましたが、周波数を微調整するためのファインチューニングダイヤルがアナログ心を捉えます。手探りで目指す放送局を探し当てる醍醐味。これは直読機よりこっちです。

タイマー付きなのも見逃せません。スカイセンサーなら5800クーガなら115にはタイマーが付いていましたが、スカイセンサー5900とクーガ2200ではコスト削減のためか廃止されてしまいました。

各種ツマミ
ダイヤル周辺はシンメトリーなレイアウト

高音と低音が独立して調節できるトーンコントロールと開口率の高いスピーカーグリルによってクリアな音質です。

12cmフルレンジスピーカーに出力は2.3W

オークションでは高値安定

不人気モデルということは流通量も少ないわけですので、希少価値が出てきます。動作品で外観が良ければ2万円を下ることはありません。当時の実勢価格と同じぐらいします。

持っている人は大切にしましょう!

データ

  • 発売:1977年(昭和52年)
  • 定価:24,800円
  • サイズ:W369 x H157 x D92(mm)
  • 重量:2.4kg

カタログより

日立ラジオ総合カタログ
ラジオ総合カタログ
カタログ中面
このぐらいのスペースですべて語れてしまうスペック

管理人のつぶやき

中学時代の仲良しに、お父さんが日立の家電販売店と親しい子がいました。そのおかげで家には冷蔵庫やら洗濯機やら掃除機などみんな日立製。

ステレオセットも当時流行していたシステムコンポをいち早く導入していて、30cmウーハーとセパレートアンプを搭載したLo-Dブランドのセットから迫力ある音が聴けるので、その友人の家に仲間と集まるのがとても楽しみでした。

で、BCLラジオもやっぱりまさにこのサージラム2200。その子はあまりBCLに興味があったわけではないので特に不満もなかったようですが、欲しいラジオを自分で選べないなんてちょっと可哀想だな、と管理人は思ったのでした。

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