日立 TRK-5240 – 大口径のホワイトコーンを大出力で鳴らす愉悦

ラジオやラジカセといった、いわば若者向け家電の分野ではやや地味な存在だった印象のある日立ですが、パディスコシリーズで知られるラジカセには優秀で魅力的なモデルを揃えていました。本機は日立のモノラルラジカセの最高傑作といえましょう。

TRK-5240(パディスコ SRⅡ)とは

パディスコSRⅡ
日立パディスコSR2(TRK-5240)

アナログラジカセ完成期の逸品

1960年代後半に日本でラジカセが誕生して以来、世界に冠たる競争力を誇る日本の家電メーカー各社はラジカセの開発競争とシェア争いにしのぎを削ります。

その結果として進化のスピードは著しく、毎年のように様々な新機軸が打ち出されました。

モノラルからステレオへの流れは特に大きな潮流で、早くも1970年代前半にはステレオ機が登場しますが、本格的な普及は1970年代後半のこととなります。

その端境期にはモノラルラジカセの有終の美を飾るかのような完成度の高い製品が登場しましたが、1976年に発売された日立のパディスコ SRⅡもそのひとつに挙げられるでしょう。

白いコーンの18cmウーハー

パディスコSRⅡの最大の特長にして魅力は白いコーンを採用した18cm口径のウーハーです。

ラジカセの2ウェイスピーカーでは、ウーハーのサイズは16cmが一般的でしたが、それより少し大きくしたこともアピールポイントのひとつです。もっとも、ソニーのCF-1990やサンヨーのMR6200はさらに大口径の20cmウーハーを搭載していましたが。

音響的に白いコーンのメリットがあるのかは不明ですが、なんといっても見栄えが違います。パンチングメタルのスピーカーグリルから透けて見える白いコーン。ブラック基調のボディとのコントラストが美しいです。

パディスコSRⅡのスピーカー
2ウェイスピーカーとトーンコントロール

ペアを組むツィーターは5cm口径。こちらは一般的な黒いコーンです。

この2ウェイスピーカーを駆動するアンプはBTL構成による出力5.5Wとモノラル機としては最大級。パワフルなサウンドが期待できます。

ミキシング機能もさりげなく搭載

ソニーのスタジオ1980が先鞭をつけたミキシング機能。外部マイクとライン入力など複数ソースをミックスして録音できることから、自分ならではの音創りを楽しみたいミュージシャンの卵にとって必須の機能でした。

パディスコSRⅡにも当たり前のごとく、さりげなく搭載されています。

ミキシングボリューム
ミキシング用ボリューム

チューニングスケールもホワイト

ラジオはFM、AM、短波の3バンド構成なので、BCLを楽しむこともできます。

横長のチューニングスケールはホワイトになっています。白いコーンのウーハーとあわせているところにデザインの一貫性を感じます。

なお、FMは108MHzまで受信できるワイドバンド設計。現在ならAMの補完放送が受信できるため有用なフィーチャーです。

チューニングスケール
見やすくウーハーとの調和もとれたチューニングスケール

その他の機能

高性能なクロームテープが使用可能なテープセレクターを装備。小音量時に低音と高音を補って豊かな音質を提供するラウドネススイッチも付いています。

操作パネル
上部の操作パネル
パディスコSRⅡ

データ

  • モデル名:TRK-5240
  • 発売:1976年(昭和51年)
  • 定価:44,800円
  • サイズ:W392 x H256 x D123 (mm)
  • 重量:5.9kg(電池含む)

カタログより

日立ラジカセ総合カタログ
日立ラジカセ総合カタログ
カタログ中面
カタログ中面でSRⅡを大きくアピール

管理人のつぶやき

発売当時の人気のほどはわかりませんが、今日では「アナログラジカセの完成形」という呼び声の高いソニーのスタジオ1980Ⅱの対抗馬筆頭に挙げたいのがこのパディスコSRⅡです。

当時の日立の家電というと、技術面はさておき、デザイン面ではいまひとつ地味であか抜けないイメージがあったのですが、パディスコSRⅡはモノラルラジカセの白眉といえる出来栄えです。デザイナーさんが良いお仕事をされましたね。

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