モノラルラジカセ進化のひとつのパターンに、本体に格納されるマイクにさまざまな機能を持たせた「多機能マイク」というものがありました。6ウェイマイクを搭載したTRK-5260の愛称は「プレイ パディスコ」。プレイ派のヤングを狙った遊び心あふれるラジカセです。
日立 TRK-5260(プレイ パディスコ)とは

多機能マイク搭載機としては最後発
多機能マイク搭載をアピールしたラジカセの登場はけっこう古く、1973年(昭和48年)にはナショナルから「5ウェイワイヤレスマシン」と銘打つワイヤレスマイクを搭載した「RQ-448(Mac ff)」が発売されています。
その流れにシャープやサンヨーなどが追従しますが、日立がTRK-5260を発売したのは1977年(昭和52年)のこと。すでにモノラルラジカセは完成期を迎え、ステレオラジカセへのバトンタッチが本格化した時期にあたります。ちょっと遅かった感は否めません。
6ウェイマイクとは
6通りもの使い方ができる6ウェイマイクとはいったいどんなものだったのでしょうか。
通常は本体右側に格納された状態です。これが使い方①「内蔵マイク」。

本体から取り出すと、使い方②「ワイヤレスマイク」、そしてケーブルで本体とつなげば③「ラインマイク」というわけです。

④と⑤はFMトランスミッター機能で、「本体のラジオやテープの音を飛ばす」ことと「外部機器を繋いで音を飛ばす」ことが出来ます。

最後の機能⑥は本体のテープ走行をワイヤレスで操作できる「リモコン機能」。これで6ウェイマイクの完成です。正直なところちょっと肩透かし感もありますが、他社の多機能マイクも似たり寄ったりでした。
マイク以外はごくまっとうなラジカセ
凝ったマイク以外はまっとうなラジカセと言えます。スピーカーは16cmウーハーと5cmツィーターの2ウェイ。出力は3.3Wとソニーのスタジオ980MK2とほぼ同じ。トーンコントロールはバス・トレブル独立式です。

珍しいのはチューニングスケール照明用のライトボタンがロック可能になっていること。普通はボタンを押している間だけ点灯し、指を離すとバネでボタンが戻って消灯するのですが、本機ではボタンを回転させてロックすることで連続点灯が可能です。
BCLラジカセのスカイセンサー5950にも同様のロック可能なライトボタンが付いていますが、BCLユースとしてはライトの連続点灯は有難い一方で、ふつうのラジカセにこの機能を付けた意図はよくわかりません。
デザインはやや無骨
デザインはスマートさに欠け、やや無骨な印象です。特に気になるのはキャリングハンドル。取っ手の両側にカーキ色をしたパーツが付いていますが、何らかの機能を持たせてあったのか不明です。

日立の同時期のラジカセであるTRK-5240はソニーのスタジオ1980MK2に対抗できるスタイリッシュなデザインでしたので、日立はデザインが弱い、というわけでは決してありません。
プレイ派のヤングを狙ってデザインしたらこうなった、ということなんでしょうか。
データ
- モデル名:TRK-5260
- 発売:1977年(昭和52年)
- 定価:43,800円
- サイズ:W391 x H243 x D127 (mm)
- 重量:4.7kg(電池含む)
管理人のつぶやき
「6ウェイマイク」の実態は本文に書いた通り他愛ないものでした。アウトドアの必需品「五徳ナイフ」みたいだな、とふと思いました。あれも実際に使うのはナイフと缶切りぐらいだったと思うんですが、エスカレートして「10徳」とか「12徳」なんかも登場したようです。
現代では多機能の王様は何といってもスマホでしょう。アプリさえ入れればほぼ無限に機能を追加できるのはすごいことですね。それだけに壊れたり無くしたときのダメージは計り知れないものが。利便性向上とリスクヘッジ。うまいことバランスとっていきたいものです。
蛇足ですが、マイナカードに保険証やら免許証なんかを集約しようという方向ですよね。勤務先が変わったり引っ越しした時の変更手続きが減るというのは有難いですが、なくした時のダメージはスマホ同様に甚大です。さらに言えば、マイナカードの更新には役所に出向かないといけないというのは非常に残念ですね。なんとかオンライン化して欲しいものです。