ホンダは早くも1964年にF1に参戦していることからもわかるように、モータースポーツを通した技術開発やブランドイメージ造りに積極的に取り組んできたメーカーです。乗用車でもS500に始まるシリーズによってスポーツイメージを育ててきました。
ホンダのスポーツイメージを決定的にした
ホンダ初の乗用車として投入されたのが1963年に登場したS500。アルミ製エンジンブロックに針状コロを使ったニードルローラーベアリングを採用するなどレーシングのノウハウをつぎ込んだ高出力型エンジンを搭載、リッター83psという高出力を発揮したまさにミニチュア・レーシングカーというべきスポーツカーの誕生でした。
S800はSシリーズの第3作目として1966年に発売されたモデルです。S800は1970年まで生産され、そこでSシリーズの流れは途絶えます。のちにホンダの創立50周年を記念して企画されたS2000まで28年間の空白がありました。
S500からの伝統として、後輪の駆動はバイクのようなチェーン式でした。
チェーンケースがトレーリング・アームを兼ねるという巧みな設計になっていたおかげで、普通なら後輪の中心にあるデフや車軸のスペースにガソリンタンクを移動させることで広いトランクスペース確保することができました。
ただこの方式はS800の途中までで、その後はコンベンショナルな駆動方式に改変されています。
100マイルカーの誕生
S500の後、低速トルクをアップして運転しやすさを増したS600、さらなる進化系のS800へと発展します。S800は最高速度160km/hを達成、いわゆる100マイルカーとしてホンダの技術の高さを知らしめることになりました。
車重は720kgと軽自動車並みの軽さを実現。エンジンは排気量800ccで水冷直列4気筒DOHC(最高出力70ps)、しかも等長エキマニを採用するなど、マニア心をくすぐる仕様になっています。
第1級のスポーツカー
さらにボディサイズは全長3,335mm×全幅1,400 mm×全高1,200 mmとコンパクトで、現在の軽自動車の車格よりも小さい。パワフルなエンジンに軽量小型のボディで、キビキビと走るハンドリング特性によって、世界的にみてもトップクラスのスポーツカーと言える1台でした。
S800の見分け方
ちなみにS800のボンネットにみられる膨らみ(パワーバルジ)は新型の燃料噴射装置(インジェクション)を装着するスペースとして設けられましたが、最終的にはキャブレターを搭載することになったので形だけ残ることになったといういわくつきです。
S500/S600と外観的にはそっくりながら、パワーバルジがあるのはS800だけですので区別のポイントになりますね。
データ
- 販売期間:1966年~1970年(昭和41〜45年)
- 駆動方式:FR
- エンジン:直列4気筒 DOHC 791cc
- ホイールベース:2,000mm
- 全長:3,335mm
- 全幅:1,400mm
- 重量:755kg
- 全高:1,215mm
管理人のつぶやき
長いこと誤解、というか間違って記憶していたのですが、テレビアニメにもなった『タイガーマスク』の主人公、伊達直人が幼少を過ごした孤児院「ちびっこハウス」を、のちにタイガーマスクとして活躍するようになってから訪れるシーンで乗っていたクルマがこんなオープンスポーツカーだと思い込んでいました。
実際には直人の愛車は「ジャガー・ピラーナ」もしくは「ベルトーネ・ピラーナ」という2シーター・スポーツという設定だったようです。ただし、このピラーナはコンセプトカーなので市販されてはいなかったはずです。
ハウスを訪れる直人のことを、ハウスのちびっこたちは「キザ兄ちゃん」と呼んで慕っていました。過酷なレスリングの試合シーンから一転、ハウスでの子供たちとの触れ合いシーンにあたたかいものを感じたものです。
もしかしたら「キザ=オープンカー」みたいな思い込みから間違った記憶がつくられたのかもしれません。