コアラを思い起こさせる顔つきからしてユニークです。ユニークなコンセプトが長続きしないところにもホンダらしさが現れたクルマです。
二通りのホンダらしさ
いかにもホンダらしいユニークな軽自動車です。
ホンダらしさには「技術的にユニーク」だけでなく「見せ方がユニーク」という二面性があると思っています。
前者の例としては、世界で一番厳しい排ガス規制と言われたアメリカのマスキー法を初めてクリアしたCVCCエンジンや、自然吸気エンジンでリッターあたり100馬力を叩き出したVTECなどが挙げられるでしょう。
プレリュードに搭載された4輪操舵の4WSも面白かったです。F1への挑戦も技術の限界を高めるため、ですね。
後者の例では、トールボーイスタイルという新しい提案を行った「シティ(初代)」。
ルーミーな室内を実現した突出した車高ながら決して不自然な姿ではなく、安定した台形のフォルムが斬新でカッコよかったです。
マッドネスというイギリスのアーティストをフィーチャーしたTVCFも印象的でした。隊列を組んで「ホンダ、ホンダ、ホンダ、ホンダ」と連呼する自身の替え歌が耳に残った方も多いのではないでしょうか。
軽のオープンカー、ビートも「見せ方ユニーク」路線の一台でしょう。技術的にどうこう、というクルマではありませんでしたね。
このバモスは明らかに後者の系列です。一見オフロードカーのように見えますが、実はお手軽なレジャーカー。フルオープンなところがゴルフカートのようにも見えます。
ベースとなったのは軽トラックのTN360。なのでタイヤサイズは軽で一般的な10インチに過ぎず、また悪路を走破するオフロード車には欠かせない四輪駆動もありませんでした。
フロントに積んだ予備タイヤやジープを彷彿とさせるカラーリングなど、オフローダーに見せたかったんだろうな、と想像します。
長続きしないところもホンダらしい
そんなユニークでありながらも悪く言えば中途半端なコンセプトが災いしたか、残念なことに販売面では完敗というしかない状況で、目標だった月販2,000台には遠く及ばなかったようです。
1996年にワンボックスの軽自動車としてバモスの名を冠したクルマが登場しましたが、初代とはコンセプトも外観も全くの別物。たんに名前が使いたかっただけのように思えます。
この面白ユニーク路線には継続性がないことも特徴で、前述のシティは2代目からは打って変わってワイド&ローなスタイルに豹変しました。長続きしないところもホンダらしさと言えるのではないかと思います。
そういえば「昔の名前で出ています」は他にもありましたね。やはり軽の名車であった『ステップバン』。正式名称は『ライフ ステップバン』といって『ライフ』の派生車種でした。昨今人気のミニバン『ステップワゴン』で「ステップ」の部分が再登板しました。
あと蛇足ですが、テレビ番組の『ウルトラマンタロウ』に登場した『ラビットパンダ』はこのバモスがベース車両でした。しかし「ラビット」+「パンダ」とは。どうみてもコアラ顔だと思いませんか?
データ
- 販売期間:1970年~1973年(昭和45年〜48年)
- 駆動方式:ミッドシップ
- エンジン:空冷直列2気筒 360cc
- ホイールベース:1,780mm
- 全長:2,995mm
- 全幅:1,295mm
- 全高:1,655mm
- 重量:520kg
管理人のつぶやき
「バモス」はスペイン語の”vamos”からとっていますね。英語なら”let’s go”。
みんなで楽しく「さぁ、行こうぜ!」というこのクルマのコンセプトが現れた良いネーミングだと思います。
でも「行こうぜ!」と飛び出したはいいものの、いきなり沼地でスタックしてしまっては困りますね。
走る場所にはよ~く注意して、さぁバモス!