いすゞ 117クーペ – ジウジアーロがデザインしたエレガントなクーペ

117クーペは1968年にデビューし1981年にピアッツアに道を譲るまで13年の長きにわたっていすゞのトップモデルでした。イタリアのカロッツエリア・ギア社に在籍していたジウジアーロによるエレガントなデザインはいつまでも色褪せません。

いすゞ 117クーペとは

117クーペは俗にいうハンドメイドの初期型(1968年 – 1972年)、丸目をキープしながらマイナーチェンジした中期型(1973年 – 1976年)、角目になった最終期型(1977年 – 1981年)と3世代の変遷がありました。

117クーペの誕生まで

いすゞ自動車は第二次世界大戦前までトラックやバスの専業メーカーでした。そのいすゞが、戦後になると大きな成長が期待される乗用車市場への参入を決断します。

1953年(昭和28年)、まず英国の大衆車だったヒルマンのノックダウン生産を開始、ヒルマンミンクスとして発売。そこで得た乗用車製造技術とノウハウを活かし、1961年(昭和36年)に初の自社設計乗用車「ベレル」を発表します。さらに2年後の1963年、ヒルマンの後継車として完全オリジナル設計の意欲作である新型「ベレット」をデビューさせました。

ノックダウン生産されたヒルマンミンクス

ところが、革新的なスタイリングと高度なメカニズムを併せ持った新型ベレットの登場で、それまでの上級車種であるベレルが一気に陳腐化してしまいます。

その結果、いすゞは新しい上級車種の開発に迫られることになります。開発がスタートしたのは1964年、東京オリンピックが開催され、首都高速の開通や新幹線の開業、名神高速道路の開通など、まさに高度成長期に突入した時代でした。

上級セダン「フローリアン」から派生したスポーツクーペ

こうして登場したのがイタリア・カロッテェリア「ギア」のフィリッポ・ザビーネがデザインした新型「フローリアン」。1966年の東京モーターショーで「117セダン」として参考出品・初公開されました。

その一方で、いすゞはフローリアンの開発と同時進行で高級スポーツクーペの開発も進めていました。1965年にクーペのデザインも「ギア」に依頼することになりますが、そのデザインを担当したのがベルトーネからギアに移籍したばかりのジョルジェット・ジウジアーロだったのです。

1966年のジュネーブショーに出展された「ギア・いすゞ117スポーツ」プロトタイプは、イタリア・アラシアーノ・コンクール・ド・エレガンスで名誉大賞を受賞。デザインの優秀さを証明してみせました。

その後、1967年の東京モーターショーでのプロトタイプ発表を経て量産化に向けた詰めが行なわれ、1年後の1968年10月にようやく市販車を発表、12月から正式に発売となったのがPA90型「いすゞ117クーペ」なのです。

ほぼハンドメイドだった初期型

ジウジアーロ・デザインによる芸術的とさえいえる繊細なラインと綺麗な面構成による造形は、当時のプレス技術で再現することは困難だったため、板金職人の叩き出しによるハンドメイドとなっていました。

インテリアも同様に手作りで、欧州製グランツーリスモ並みの綺麗なコクピットのインパネには本物の楠が貼られ、スイッチのノブは真鍮の削り出しを用いていました。丸形7連メーターがドライバーに向き合い、ステアリングホイールのリムとシフトノブは、ウォールナット製となるなど贅を尽くした内装となっていました。

DOHCエンジンを搭載

搭載したパワーユニットは、ベレットGTなどに使われたボア×ストローク82.0×75.0mmのショートストロークのOHVエンジンにアルミ合金製ツインカムヘッドが載せられた、1.6リッター直列4気筒DOHCエンジン。

最高出力120ps/6400rpm、最大トルク14.5kg.m/5000rpmを発揮。4速フロアシフトのマニュアルトランスミッションと組み合わせ、最高時速200km/hを記録したとされます。

エンジン開発には、エンジニアだけではなくデザイナーが加わったとされ、見た目の外観も非常に美しいエンジンに仕上がっていました。

高級路線ゆえの高価格

まだ、スペシャリティカーというカテゴリーの確固たる概念が無かった当時、高級路線で突き進んだ117クーペはデビュー時の価格は172.0万円と、同社ベレットGTの倍となってしまいます。

翌年日産からデビューするスカイラインGT-Rの160.0万円をすら上回り、月間生産台数は30台から50台が限界だったと伝えられます。

量産効果の出た中期型

1971年、いすゞはアメリカのゼネラルモータースと資本提携します。その結果、それまで困難だったプレス機によるボディ生産が可能となり、量産効果による合理化が図られました。

エンジンには新たに無鉛ガソリン対応の1.8L DOHC/SOHCが採用され、細部のデザインにも多くの変更が加えられました。

大型になったリアのコンビランプ

角目の後期型

1977年のマイナーチェンジではヘッドランプが角型4灯に変更され、精悍な顔つきになりました。また、バンパーにはラバークッションが加えられるなど大きく印象が変わりました。この辺りは好みが分かれるところです。

角目になった後期型

データ

  • 販売期間:1968年~1981年(昭和43年〜56年)
  • エンジン:1.6L, 1.8L, 2.0L 直列4気筒SOHC/DOHC
  • ホイールベース:2,500mm
  • 全長:4,310mm
  • 全幅:1,600mm
  • 全高:1,310mm
  • 車重:1,075kg

管理人のつぶやき

旧車のカッコ良さにも色々ありまして、「スポーティー」「ワイルド」「重厚」などなど、それぞれの傾向ごとにこれは!というクルマがあるわけですが、117クーペの場合はまさに「エレガンス」がぴったりでしょうね。実際に「コンクール・ド・エレガンス」で賞を貰ったということですから間違いないところでしょう。

旧車イベントではコンディションのよい個体を観ることができます。オリジナルを忠実にキープしている個体もある一方でカスタムされているものもあるのですが、エレガンスさを崩さないレベルで留まっていて、オーナーさんはやっぱり117クーペの良さがわかっているんだな、流石だな、と思いますね。

フォトギャラリー

117クーペ初期型
初期型
117クーペ初期型
シンプルなリア
117クーペ初期型
初期型
117クーペ初期型
117クーペ初期型
初期型
117クーペ初期型
117クーペ中期型XC
中期型XC
117クーペ中期型XC
中期型XC
117クーペ中期型XE
中期型XE
117クーペ中期型
中期型XE
117クーペ中期型XC
中期型XC
117クーペ中期型
中期型XC
117クーペ後期型XG
後期型XG
117クーペ後期型
後期型XG
117クーペ後期型XC
後期型XC
117クーペ後期型XC
後期型XC
117クーペ後期型XE
後期型XE
117クーペ後期型XE
後期型XE
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