マツダ コスモAP – コスモスポーツから大きく路線変更したスペシャルティカー

世界初の量産型ロータリーエンジンを搭載したマツダ・コスモスポーツ。2代目にあたるコスモAPはロータリーエンジンを踏襲しながらも大きく路線変更し、アメリカ市場向けに振ったラグジュアリーなスペシャルティーカーとして生まれ変わりました。

マツダ コスモAPとは

マツダ コスモAP後期型
マツダ コスモAP 後期型

排ガス対策をネーミングでアピール

コスモシリーズの2代目となるコスモAPが誕生したのは1975年。1960年代後半あたりから深刻化した大気汚染への対策として世界的に排ガス規制が厳しくなったことに加え、1973年に勃発した第四次中東戦争が引き起こしたオイルショックも重なり、燃費のよくないロータリーエンジンへの風当たりは強まります。ロータリーエンジンに社運を賭けていたマツダ(当時の東洋工業)にとっては、大変厳しい時代を迎えていました。

しかし、レシプロエンジンより原理的に優れるとの信念を持つマツダのエンジニアは、決して諦めることなくロータリーエンジンの改良に邁進。燃費改善のため薄い混合気でも完全燃焼させることができる希薄燃焼技術を確立します。また、低公害化のためサーマルリアクター(排ガス再燃焼装置)の改良も成し遂げました。

こうして誕生した新・ロータリーエンジンを搭載した2代目コスモには、「AP(アンチ・ポリューション)」のサブネームが付加されたのでした。

マツダ コスモAP
流麗なファストバックスタイル

レシプロエンジン搭載車もあった

パワートレーンは自動車排出ガス規制をクリアしつつもパワフルな13B/12Aロータリーエンジンに加えて、2,000/1,800ccのレシプロエンジンも用意。

ミッションは3速オートマのほか、4速MT、5速MTで、全車にフロントベンチレーテッドディスクブレーキ、リアディスクブレーキを採用したこともトピックでした。

内装は高級感とスポーティーさの両立を意識。上級グレードにはステアリングやシフトノブ、メーターパネルにウッドを採用していました。

派生車種のコスモL

コスモAPの発売から2年後にコスモLが加わります。

Lはランドウトップの頭文字をとったもので、古いアメ車によくみられる、後席のルーフをハーフレザーにしたものです。後席はヘッドクリアランスに余裕があり、またオペラウィンドウのおかげで、プライバシーが確保されていました。

AP・Lともに、北米市場からの要求によるもので、2代目コスモは和製アメ車のようなデザインになり、個性的な高級車ルックになったのです。

マイナーチェンジで個性が薄まる

1979年のマイナーチェンジで「プログレスコスモ」に進化。

特徴的な丸目4灯が異形横長の2灯に変化したほか、独特なグリルの形状が比較的一般的な格子状になりました。前期型のグリルは「電気ひげそり」などと陰口を叩かれて賛否両論だった一方で、プログレスコスモのグリルには「ところてん突き」という口さがない声も。

コスモAP グリル
「ところてん突き」のあだ名もあるグリル

テールランプの形状も、独特なL字型(右は」型)からこちらも一般的な形状になりました。いずれも個性が過ぎたのか、プログレスコスモではやや控えめになりました。

コスモAP
窓のある特徴的なセンターピラー

データ

  • 販売期間:1975年(昭和50年)~1981年(昭和56年)
  • エンジン:1,308/1,146cc 2ローター、1,800/2,000cc 直列4気筒
  • ホイールベース:2,510mm
  • 全長:4,545mm
  • 全幅:1,685mm
  • 全高:1,325mm
  • 重量:1,220Kg

管理人のつぶやき

初代コスモたるコスモスポーツとは似ても似つかないクルマになった2代目。どうもマツダでもふたつは別系統のクルマとされていたようで、コスモスポーツは一代限り。コスモAP以降がコスモシリーズ、という整理になっているようです。とはいえ、ロータリーエンジンというDNAはしっかり受け継いでいます。

トヨタや日産、ホンダと比べると規模の小さいマツダですが、個性という点では水平対向エンジンを擁するスバルと並んで「らしさ」のあるメーカーといえましょう。令和の新車を見ても、どのメーカーのクルマもデザインが画一化してしまったなかで、マツダの「魂動デザイン」は一目でそれとわかります。好き嫌いはあるかもしれませんが、私はとても優れたデザインだと思います。

アイボリーとマルーンのコスモAP
どちらも魅力的なアイボリーとマルーン
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