ナショナル RF-1150 – デザインが光るBCLラジオ

ソニーのベストセラー、スカイセンサー5800の対抗馬として登場したナショナルのBCLラジオ。大口径スピーカーを全面的に押し出したデザインが素晴らしい製品です。

RF-1150(クーガ115)とは

ナショナル(現パナソニック)が1975年に発売したBCLラジオです。

BCLとはBroadcast Listeningの略称で、「海外短波放送を受信・聴取する」趣味のこと。BCL向けの機能を盛り込み、性能を磨いたラジオをBCLラジオと呼んでいました。

ナショナル クーガ115
シルバーパネルが映えるナショナル クーガ115

家電メーカー各社から続々とBCLラジオが登場しましたが、特に人気があったのはナショナルのクーガシリーズ、そしてソニーのスカイセンサーシリーズでした。

スカイセンサー5800と同時期に販売されていたのは『クーガNo.7(RF-877)』というモデルで、クーガシリーズの特徴である「ジャイロアンテナ」を初めて搭載し、ミリタリー調のデザインで人気を博しました。

ナショナル クーガNo.7
ミリタリールックのクーガNo.7 115の優雅さとは対照的

しかし、いかんせん短波の受信帯域が3.9Mhz~12MHzに限られているところがBCLラジオとしては致命的で、スカイセンサー5800から大きく見劣りしていました。

そこにナショナルがスカイセンサー5800の対抗馬としてぶつけてきたのが『クーガ115』なのです。

音質とデザインで差別化

BCLラジオはどのメーカーのものでもほとんどがグレーかブラックの筐体でした。その中にあって、シルバーのアルミパネルを起用し、しかも中央に16cm口径というラジオとしては大口径のスピーカーを配置したデザインは、その美しさで突出していました。

クーガ115 スピーカーグリル
いかにも良い音がしそうな大口径スピーカーグリル

BCLラジオは、海外からの微弱な電波をキャッチすることが求められるという性質上、感度や選択度などの受信性能や同調のしやすさをアピールするのが正攻法。そこに「音」と「デザイン」を打ち出したのはマーケティング上手なナショナルらしさと言えましょう。

もっとも、「音」を打ち出したラジオはクーガ115よりも前に販売されていたRF-888が嚆矢で、ニックネームは「吠えろクーガ」でした。やはり16cmスピーカーを全面的に押し出した迫力あるデザインが売りでした。短波放送も受信できましたが、周波数帯が3.9MHz~12MHzに限られていたためBCLには物足りなさがありました。

吠えろクーガ
クーガ115のベースになったと推測されるRF-888「吠えろ!クーガ」

つまり、クーガ115はRF-888をベースにBCL向けに機能を拡張したモデルと言って良いでしょう。

特徴的なジャイロアンテナ

クーガシリーズの代名詞ともいえるのがジャイロアンテナ。一般的なラジオでは本体内部に格納されているフェライトバー・アンテナを外部に切り出し、回転できるようにしたものです。

クーガ115 ジャイロアンテナ
ジャイロアンテナを回して最適な受信を

ただし、ジャイロアンテナが受ける電波は中波と短波のうち低い周波数帯に限られましたので、BCL的な意味はそれほど大きくありません。

同調を助けるファインチューニング機構

本体右側に「FINE TUNING」ツマミがあります。これは、短波放送の同調をアシストしてくれる微調整ダイヤルのことです。使い方は、メインダイヤルでお目当ての放送局を探し当てたら、感度が最大になるようファインチューニングをまわして微調整する、というものでした。

ナショナルクーガ115
右側にファインチューニングダイヤルを装備 その下にはタイマー

次世代のクーガ2200やスカイセンサー5900などで周波数を読み取ることができる「直読」機構が登場する前のBCLラジオでは、ファインチューニングはあると便利な機能でした。

ちなみにライバル機のスカイセンサー5800ではダイヤルの減速比を切り替えるメカニカルファインチューニングが搭載されていました。

アマチュア無線が傍受できるBFO

そもそもアマチュア無線て何?という話から入ると長くなってしまうのでごく簡単言いますが、今ふうに言えば電波を使ったチャットです。見知らぬ相手と電波を使って交信するわけですね。暗号化されていない電波を使いますので、第三者が傍受することが可能です。なんとものんびりした趣味というか。

ナショナルクーガ115
ほかのどのラジオにも似ていないユニークさ

で、アマチュア無線の電波の使い方は通常のラジオ放送とは違っているため、特別な復調回路が必要になります。それがBFO。BFOのないラジオでアマチュア無線を受信しても「モゴモゴ、モガモガ」としか聞こえません。

前置きが長くなりましたが、クーガ115にはBFOがついていました。BCLファンがアマチュア無線の傍受にも興味があったのかは微妙な気もしますが、競合比較で負けるわけにはいかない事情もあったのでしょう。

データ

  • モデル名:RF-1150
  • 発売:1975年(昭和50年)
  • 定価:26,900円
  • サイズ:W246 x H237 x D100 (mm)
  • 重量:2.5kg(電池含む)

カタログより

クーガ115機能説明
BCLラジオ総合カタログ(1976年5月版)より

管理人のつぶやき

ひところBCLラジオが猛烈に欲しくなってオークションで落札しまくりました。

いまや海外短波放送を聴く、などということはなく、もっぱらモノとしての存在感に惹かれるわけです。

そうなるとBCL用の機能や性能というよりは、デザインや音質の方が重要。となるとクーガ115は最右翼ですね。こんなふうにテラスに持ち出してFM放送を聴きながらお茶したりしていました。

悲しいことにある日突然ウンともスンとも言わなくなったので手放してしまいましたが。また入手しようかな…

ナショナルクーガ115とマグカップ
戸外でラジオをならす、の図
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