BCLブームの絶頂期に、ソニーのスカイセンサー5900と人気を二分した高性能BCLラジオ。アナログタイプのBCLラジオはここに至って完成度が極まりました。
RF-2200(クーガ2200)とは
アナログBCLラジオの完成形
ナショナル(現パナソニック)が1976年に発売したBCLラジオ。当時の定価は34,800円でした。
BCLとはBroadcast Listeningのことで、おもに海外の短波放送を聴取して楽しむ趣味を指しました。インターネットが普及した今日では想像もつきませんが、当時は海外からの情報を入手するには短波放送が重要な役割を果たしていました。
新聞やテレビのニュースソースとしても利用されており、短波による情報収集に特化した「ラジオ・プレス」という通信社もあったぐらいです。
もっともBCLブーム自体はもっとライトなもので、海外で流行している音楽を聴きたいとか、受信報告書を放送局に郵送してお礼のベリカードを収集するとか。さらに言えば、単に「受信する」こと自体に喜びを感じるユーザーも多かったと思います。
遥か数千~数万キロの彼方から届く電波は微弱で、キャッチすることが難しいのです。そのため高性能な受信機や大掛かりなアンテナが必要でした。なので、滅多に受信することができない放送局の信号がキャッチすることそのものが大きな喜びだったのです。
前置きが長くなりましたが、このクーガ2200はBCL向けラジオの完成形とも言える名機でした。最大の特徴は周波数直読ができる「直ダイメカ」。特殊なバリコンを使うことにより、スプレッドダイヤルをもたずにひとつのダイヤルだけで周波数直読を可能にした画期的なメカでした。
それまでのラジオでは、周波数の表示はせいぜい数百キロヘルツ単位の目安が示されているだけで、「だいたいこの辺り」と目星をつけたらあとは「髪の毛一本分動かす」というほどの慎重さでチューニングダイアルを操作し、耳でお目当ての放送局が受信できたかを確認するという手探り方式だったのです。
周波数がキロヘルツ単位で読み取れるのは数十万円もする通信機型受信機の特権でした。それを手が届く価格帯のラジオで実現したのは画期的でした。
もっともラジオに周波数直読機能を導入したのはソニーのスカイセンサー5900のほうが先でした。こちらもベストセラーになり、クーガ2200と人気を二分していました。
精密な操作感のダイヤル
BCLファンにとってうれしい機能は他にもありました。
まずはダイヤルスピードが低速・高速に切り替えられること。すばやく周波数を移動したいときにはFast、慎重にチューニングするときにはSlowを選びます。
ダイヤル機構はダブルギアを採用してバックラッシュの発生を抑えています。
また、ダイヤルつまみの外周には滑り止めのゴムを貼るなど、きめ細かい配慮がされていました。
混信に強い高選択度
次に、選択度切り替えスイッチがあったこと。Band Widthというスイッチがそれで、WideとNarroに切り替えることができました。
通常はWideで使い、混信するときにはNarrowにします。Narrwでは選択度が向上して混信を避けることができますが、信号帯域が狭くなるため音質が低下します。
このあたりも通信機型受信機にあこがれたBCL少年の心をガッチリつかんだ要素でしょう。また、ライバルのスカイセンサー5900との差別化、という意図もあったのではないでしょうか。
伝統のジャイロアンテナ
クーガーシリーズ伝統のジャイロアンテナももちろん装備しています。これは通常はラジオ本体に内蔵されているフェライトバーアンテナを本体外部に切り出すことにより、ラジオ本体はそのままでアンテナのみを回転させて一番感度のよいポジションにすることができるというものです。AM放送や短波の低い周波数帯で威力を発揮します。
時代はデジタルへ
この後に、周波数をデジタル表示するラジオが登場することになります。ナショナルからはプロシードシリーズですね。
より正確なチューニングが可能になりましたが、アナログ的な味わいは失われました。この辺り、CDとアナログレコードの関係に似ているかもしれませんね。
データ
- モデル名:RF-2200
- 発売:1976年(昭和51年)
- 定価:34,800円
- サイズ:W318 x H188 x D100(mm)
- 重量:3.5kg(電池含む)
カタログより
管理人のつぶやき
このラジオには実はトラウマがあります。
初めて手に入れたラジオの『クーガNo.7』がBCLラジオとしては物足りなかったため、いつかは『スカイセンサー5900』と心に秘めつつコツコツと貯金していたところに華々しく登場したのがクーガ2200でした。「直ダイメカ」「選択度切り替えスイッチ」「RFゲインコントロール」「BFO」「ジャイロアンテナ」。もうメロメロで、雪の降るある日、今は亡き「第一家電」という量販店で購入したのでした。
直ダイメカ搭載のダイヤルは精密な操作感。選択度切り替えも有効で、イザという時には「Narrow」発動により混信を抑制することができました。うたい文句通り!最高!と思って使っていたある日、ふと気づいたのです。「バンドの端っこに行くと直読の精度が悪くなる」。
直ダイの目盛りは10KHz単位で刻まれているため、その半分の5KHzまで正確に読み取れるはずでした。なのに、バンドの端っこ、例えばバンド「SW2」を選択し、11.810KHzの放送局を受信しようとダイヤルを合わせても受信できない!微妙にずれて、ダイヤルでは11.805(もしくは11.815)KHzあたりで同調するのです。
不良品だ!と思い込み、ナショナルのサービスセンターに持ち込んで交換してもらうこと2回。いずれも同じ現象が発生しました。
今にして思えばバリコンの精度の限界だったのでしょうが、宣伝文句をまともに信じていた初心な中学生にとっては裏切られたも同然。ナショナルというブランドへの信頼感は失われ、BCL熱も醒めていったのでした…