ラジカセがステレオ機に移行しつつあった70年代後半、モノラルタイプの最終形ともいえる尖ったラジカセが出現しました。ナショナルからは高音質化を極めるべくスピーカーを3ウェイ化したその名もHiFi MACが登場しました。
目次
ナショナル RQ-568(HiFi MAC)とは
モノラルラジカセの多様化
70年代後半には各メーカーのラジカセの主力はステレオタイプへと移行しつつあり、モノラルラジカセは存在価値を求めて多様化していきました。
BCLファンを狙って短波放送受信のための機能と性能を磨いたもの、語学学習用に特化したもの、ワイヤレスリモコンを搭載してプレイ要素をアピールするもの、ミュージシャンの卵向けにリズムボックスを内蔵したもの、テレビを取り込んだいわゆる「ラテカセ」など多くのユニークなラジカセが輩出した、ある意味ラジカセの黄金時代ともいえる様相でした。
大口径化よりマルチウェイ化を選択
ステレオ機にそのポジションを明け渡すことになった音質重視のモノラルラジカセ。各メーカーは高音質化の仕上げとばかりにスピーカーの大口径化とアンプの大出力化を推し進めますが、ナショナルからの回答は3ウェイスピーカーによるラジカセ究極のマルチウェイ化。
実はモノラルラジカセのスピーカー大口径化はナショナルが先行しており、それまで主流だった16cmの上を行く18cmスピーカー搭載モデル(RQ-548/RQ-558)を発売済み。ライバル他社も同様に18cmウーハー(日立 TRK-5240)やさらなる大口径の20cmウーハーで対抗(ソニー CF-1990、サンヨー MR6200)。しかし、大口径化はラジカセ本体の大型化が避けられないため、ラジカセ本来のポータブル性を殺すことになります。
そこでナショナルはさらなる大口径化ではなく、マルチウェイ化をモノラルラジカセ総決算の戦略として選択したのだと推察されます。
要は6.5cmスコーカー
3ウェイ化の要となるのは中域を担うスコーカーです。RQ-568ではここに6.5cm口径スピーカーを採用。中域専用スピーカーのおかげで、クリアーで質感の高いボーカルが楽しめます。
レイアウトはカセットホルダー下部としたため、開口部は横長の長方形になりました。スコーカーが楕円形であるかのような印象を与えますが、一般的な丸形です。
ウーハーはナショナルお得意の18cm口径。ツィーターは3cmです。ウーハー右側の4連の穴は内蔵マイク用の集音孔です。デザインに凝った感じですね。
洗練されたデザイン
ナショナルのラジカセデザインはどこか今一つあか抜けない印象でしたが、RQ-568ではスピーカーまわりの統一感あるデザインが奏功して洗練したデザインとなりました。
シルバーのチューニングスケールが高級感の演出に一役買っています。ブームのBCLにのって短波対応にしなかったのもオーディオ指向のラジカセとして理解できます。
レタリングは英語表記
この時代のナショナルのラジカセには、本体のレタリングが日本語のものがありました。
初心者やお年寄りには日本語のほうが使いやすいと思いますが、趣味の道具に日本語は興ざめします。RQ-568は幸いなことに英語表記です。
機能的には特に目新しさはありません。あくまで音に徹したラジカセです。
データ
- モデル名:RQ-568
- 発売:1977年(昭和52年)
- 定価:45,800円
- サイズ:W427 x H280 x D145 (mm)
- 重量:6.3kg(電池含む)
カタログより
管理人のつぶやき
これは程度のよい中古があったらぜひ欲しい一台です。3ウェイスピーカーとはなんとも贅沢。
そもそもラジカセに果たして3ウェイスピーカーまで必要なのか?2ウェイで十分ではないか?というのは野暮な問いでしょう。そんなことはメーカーも自覚のうえであえてやったに違いないです。モノラルラジカセの最終形としての記念碑的作品ですね。持っている方はぜひ大切になさってください。