ラジカセを選ぶポイントは機能や性能もさることながら、デザインが自分好みかどうかも重要です。個性的であればあるほど好き嫌いは別れますが、ズバリはまれば愛着もひとしお。MAC ST-5はそんな個性派ラジカセのひとつといえましょう。
目次
ナショナル RS-4250(STEREO MAC ST-5)とは

ひと目でわかる個性的なデザイン
ラジカセのステレオ化がどんどん進んでいった1970年代後半、メーカー各社からさまざまな特徴をもった力作が送り出されていました。
機能や性能で差別化を図る方向性があったいっぽうで、デザインで勝負をかけた筆頭格がST-5であったと思います。
他社はおろか自社のどのラジカセとも違う、ひと目みてソレとわかるデザインです。では、デザインの特長をつぶさに見てみましょう。
ブラック一色のボディ
どのメーカーでもラジカセのボディーはブラックかグレーが主流でしたが、上部の操作パネルやカセットホルダー、あるいはスピーカーグリルなどにシルバーを使うパターンがほとんどでした。
ST-5はほとんどシルバーや差し色を使わない、全身これブラックな硬派さ。オトコ臭い配色です。

プロテクションバー
左右に装備されたプロテクションバー。ハンドルと呼ばれることもあるようですが、ボディとの隙間が狭いので持ち運び用のハンドルとしては使いにくいです。
転倒してもフロント部がダメージを受けないように保護するための装備だと思われますが、実際には保護すべきボタンやツマミなどが前面にあるわけではないので、デザイン目的でしょう。これがあるとないとでは印象は大違い。素晴らしいアイデアです。
BCLラジオの東芝トライX2000ではこのようなバーがアクセントとして効いていましたが、ラジカセで御目にかかることは滅多にありません。本機以外ではソニーのスカイセンサー5950ぐらいでしょう。

スラントした操作パネル
スラントさせることで前面からでも上からでも見やすく操作しやすい操作パネル。
スラントパネル自体はソニーのステレオXYZにも見られるのですが、ST-5ではパネルの両サイドに角度を立てたツィーターを持ってきています。ここが秀逸なところ。立体的な造形になっており、本機の個性を際立たせています。
なお、ツィーターは3cm口径という小型なもの。ラジカセのツィーターは5cm口径が多いのですが、このデザインを実現するためあえて小型のツィーターを選択したのでしょう。

キャリングハンドルではなくベルト
どのラジカセにもついている、持ち運ぶためのキャリングハンドルがありません。本機ではキャリングベルトを採用していますが、これもユニーク。ハンドルよりもアクティブなイメージを与えます。

フィルム式チューニングスケール
ラジオのチューニング用スケールに、BCLラジオなどでよくみられるフィルム式を採用しています。ラジカセでは横長式のスケールが多いのですが、フィルム式によってスペースを節約。これもやはりデザインのためのフィーチャーといえましょう。

14cm口径のウーハー
2ウェイスピーカー搭載のラジカセでは、ウーハーの口径は16cmが主流でした。本機では14cmという他ではあまり見かけないサイズのものを採用しています。もし16cmであったら全体のバランスが崩れてしまったことでしょう。ここにもデザインコンシャスなところが伺えます。

惜しい日本語表記
デザインコンシャスを押し通すなら、操作パネルの表記は英語にして欲しかったですね。
日本語だと「お子さまからお年寄りまで、誰でも使えますよ」のイメージになってしまいます。メインターゲットは若者(しかも男子)だったのでしょうから、割り切って英語で良かったと思います。

データ
- モデル名:RS-4250
- 発売:1977年(昭和52年)
- 定価:64,800円
- サイズ:W520 x H272 x D145 (mm)
- 重量:6.7kg(電池含む)
カタログより




管理人のつぶやき
本文にも書きましたが、レタリングが日本語表記なのがなんとも惜しいです。
ラジカセ初心者はいざ知らず、電器店の店頭に並べてあるラジカセを時間を忘れて眺めたり、カタログを穴の開くまで読んだり、オーディオ誌なんかの製品紹介を読み漁っていたラジカセファンの若者にとっては、いちいち日本語にしなくても操作に迷うなんていうことはありませんでした。
万一迷ったら取説を読めばよいわけで。
それこそお子さまやお年寄り、あるいはラジカセ初心者をターゲットにした製品なら日本語表記は親切でしょうが、こんなマニアックな製品にも適用する必要はなかったと思います。
まぁそんな減点要素はあるにせよ、十分に魅力的なラジカセなのであります。