かつて日産の代表的小型車だったブルーバードの3代目にあたる510型は、単なるモデルチェンジの枠を超えた「転換点」として語られる存在です。1967年に登場したこのクルマは、国内市場での巻き返しと、海外市場でのブランド確立という二つの使命を背負い、「技術の日産」の名にふさわしい革新を体現した1台でした。
目次
日産 ブルーバード(3代目/510型)とは

失地回復をかけたフルモデルチェンジ
ブルーバードはもともと、1959年に誕生した初代から高い実用性と信頼性を武器に人気を集めてきましたが、2代目410型では「尻下がり」なデザインの評価が分かれ、販売面でトヨタ・コロナに後れを取ることになります。いわゆる「BC戦争」と呼ばれる熾烈な販売競争のなかで、日産は次期モデルに社運を賭ける決断を下しました。その結晶こそが、510型ブルーバードです。

発表は1967年8月9日。あえて仏滅の日を選んで行われたこの発表は、日産の強い自信の表れでもありました。「ビス1本まで新設計」と豪語されたその内容は、単なる改良ではなく、まさにゼロからの再構築でした。
シャープなスーパーソニックライン
まず目を引くのは、そのスタイリングです。「スーパーソニックライン」と名付けられた直線的でシャープなボディラインは、当時の超音速旅客機のイメージを重ねたもので、従来の丸みを帯びたデザインから大きく転換しました。フロントドアから三角窓を廃止するなど、細部に至るまでモダン化が図られ、時代の「スピード感」を体現するデザインとなっています。

OHC・L型エンジンがもたらした性能革新
この先鋭的な外観に加え、機構面でも大きな進化がありました。エンジンには新開発のOHC(オーバーヘッドカムシャフト)方式のL型エンジンを採用。
従来のOHVに比べて高回転域での伸びが格段に向上し、性能面でライバルを凌駕しました。ベーシックモデルの1.3リッターでも当時のコロナを上回る出力を発揮し、上級グレードの「SSS」では1.6リッターで100馬力という、当時としては非常に高い性能を誇りました。

四輪独立懸架が実現した走行性能
さらに特筆すべきは、足回りです。510型は国産車としては極めて先進的な四輪独立懸架サスペンションを採用しました。フロントはマクファーソンストラット、リアはセミトレーリングアーム式という構成で、操縦安定性と乗り心地を高いレベルで両立しています。この構造は後のFR車にも長く受け継がれることになり、510型の設計思想の完成度の高さを物語っています。
サファリラリー制覇と「ラリーの日産」
こうした性能の高さは、モータースポーツの舞台で証明されました。特に有名なのがサファリラリーでの活躍です。1969年にクラス優勝、1970年には総合優勝を達成し、その耐久性と走破性を世界に示しました。
この成功は「ラリーの日産」というブランドイメージを確立するとともに、ブルーバードの人気を一気に押し上げる要因となりました。当時はモータースポーツでの実績が販売に直結する時代であり、510型はまさにその象徴的な存在でした。

BC戦争の中での復権と世界進出
販売面でも、510型は見事に復活を遂げます。スポーティなイメージと高性能を前面に打ち出すことでコロナとの差別化に成功し、「BC戦争」は再び拮抗したものとなりました。加えて北米市場でも高い評価を受け、フェアレディZと並んでダットサンブランドの認知向上に大きく貢献しました。それまで「安価な実用車」というイメージが強かった日本車に対し、「高性能で信頼できるクルマ」という新たな評価をもたらした点は見逃せません。
商品力の強化とスポーツセダンの確立
その後、510型はマイナーチェンジを重ね、排気量の拡大やクーペモデルの追加など商品力を強化していきます。1.8リッターエンジンの導入により動力性能はさらに向上し、「スポーツセダン」としての地位を確固たるものとしました。軽量なボディと高性能エンジンの組み合わせは、運転の楽しさという価値をユーザーに強く印象付けたのです。
また、セダン、クーペ、ワゴン、バンといった多彩なボディバリエーションを揃え、用途に応じた選択肢を提供した点も、世界的なヒットの要因でした。


日本車の評価を変えた歴史的モデル
総じて510型ブルーバードは、技術・デザイン・マーケティングのすべてにおいて高い完成度を誇るモデルでした。その革新性は国内外で評価され、「プアマンズBMW」と称されるほど、欧州の高性能車に比肩する存在として認識されました。これは単なる模倣ではなく、当時の最先端を真摯に追求した結果であり、日本車が世界市場で本格的に競争力を持ち始めた象徴でもあります。
510型は、単なるヒット作にとどまらず、その後の日産車、さらには日本の自動車産業全体に大きな影響を与えました。今なお「ゴーイチマル」の愛称で親しまれ、多くのファンに支持され続けているのは、その普遍的な魅力の証といえるでしょう。技術への挑戦と市場への洞察が結実したこの一台は、まさに時代を切り拓いた名車です。

データ
- 販売期間:1967年(昭和42年)~1973年(昭和48年)
- エンジン:直4 1.3、1.4、1.6、1.8L
- ホイールベース:2,420mm
- 全長:4,095mm
- 全幅:1,560mm
- 全高:1,420mm
- 重量:945kg
管理人のつぶやき
510ブルは旧車イベントなどでも必ずといって良いほど見かける人気車種ですね。不評だった先代の「タレケツ」からデザイン一新、エンジンや足回りも一気に世界レベルを目指した意欲作。
アメリカで大ヒットした日産車といえばフェアレディZが思い出されますが、先駆けてヒットした510ブルの功績も大きかったのでしょう。どちらも「プアマンズなんとか」と揶揄されることもありますが、日本車が世界に認められるキッカケとなった歴史的名車だと思います。
管理人としては、長いブルーバードの歴史のなかでもこの510型と6代目にあたる910型を双璧としたいです。どちらも角ばっていてスポーティーところが共通してます。やっぱりブルにはスポーティーイメージが欠かせないのです。
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