フェアレディZは1969年に誕生した日産の看板スポーツカー。ロングノーズショートデッキの美しいスタイルにスポーティーかつ快適な乗り心地、そしてリーズナブルな価格設定がはまり北米で大ヒットしました。
日産 フェアレディZ(初代/S30型)とは
源流はじゃじゃ馬オープンカー
フェアレディZの源流である「ダットサン・フェアレディ」はもともと北米への輸出専用車として登場しました。英国のスポーツカーを彷彿とさせる2シーターのオープンカーで、最終モデルのフェアレディ2000(SR311型)は国産車として初めて200km/hを越える性能を誇りましたが、じゃじゃ馬と称されるほどのスパルタンなスポーツカーでした。
しかし、広大な北米市場を攻略するにはニッチなオープンスポーツではなく、スポーティでありながらも安全で快適な居住空間を持ったクローズドボディのスポーツカーが欠かせないとして、当時の米国日産の社長であった片山豊が本社を説き伏せて開発に漕ぎつけたのがフェアレディZでした。
ジャガー・Eタイプを目指せ
片山が開発陣にリクエストしたのはジャガー・Eタイプに匹敵するスタイリッシュなスポーツカー。
当時の国産車メーカーにおいては海外のデザインスタジオに依頼する流れもあるなかで、日産のデザインチームは独力で片山の期待に応えてみせます。
ロングノーズ・ショートデッキの流麗なプロポーション。リアにかけてグラマラスに盛り上がったラインはファストバックのリアエンドで見事に収束しています。そしてロングノーズを引き立てる彫刻的なフロントマスクがとても印象的。ここにZのイメージが完成しました。
リーズナブルな価格を実現
まだまだ評価の低かった日本車には価格面でのアドバンテージが必要です。そこでフェアレディZの設計では主要コンポーネントの共有化を図りました。
エンジンはセドリック/グロリアに搭載されたSOHC 2.0LのL20型をベースに、北米向けにはボアを拡大して2.4Lとしました。北米市場にあわせて高回転よりは低速トルクを重視。堅牢な実用型エンジンならではの耐久性と保守性も市場ニーズにマッチしていました。
サスペンションは四輪独立のストラット式としましたが、これも他の日産車のフロントサスから流用できるものでした。
ボディこそZ専用でしたが、フレーム構造だったSR311フェアレディと比べ圧倒的に生産性の高いモノコックとしていました。
このように量産ノウハウを活かして低価格を実現したフェアレディZは、北米においてスポーツカーとしては空前といえるヒット作となったのです。
国内専用の最強バージョンZ423
北米での大成功の一方で、国内では一部のフェアレディ・ファンから不満の声が漏れていました。国内仕様のZのスペックは「130ps、195km/h」。これはダットサン・フェアレディSR311のカタログスペック「145ps、最高時速200km/h」からダウンしたことになります。
SR311搭載のU20型直列4気筒OHCエンジンの豪快なフィーリングに対して、新型ZのL20型直列6気筒OHCエンジンは、あくまでもスムーズ。これが一部の硬派なファンにとっては不満でした。しかし、そうなることは日産の技術陣も見越しており、そのための回答も用意されていたのです。
その回答が「フェアレディZ432」です。先にスカイラインGT-Rに搭載され、スポーツカーファンを驚愕させたレーシングカー「プリンスR380」搭載のレーシングユニットの直系、S20型エンジンを搭載していました。
1989cc・直列6気筒DOHC24バルブ、最高出力160ps/7000rpm、最大トルク18.0kg.m/5600rpmとされたパワーユニットから、最高速度210km/h、0-400m加速15.8秒を叩き出しました。組み合わせるトランスミッションはポルシェシンクロの5速マニュアルフロアシフト。しかも、Z432は北米には輸出されず、日本のユーザーだけが受け取れる、特別なスポーツカーだったのです。
データ
- 販売期間:1969年(昭和44年)~1978年(昭和53年)
- エンジン:2.0, 2.4, 2.6, 2.8L 直列6気筒
- ホイールベース:2,305mm(2シーター)、2,605mm(2by2)
- 全長:4,115mm(2シーター)、4,425mm(2by2)
- 全幅:1,630mm(2シーター)、1,695mm(2by2)
- 全高:1,280mm(2シーター)、1,290mm(2by2)
- 重量:975kg(2シーター)、1,145kg(2by2)
管理人のつぶやき
ニッポンのクラシックなスポーツカーでカッコ良さベスト3をあげるなら、トヨタ 2000GTにマツダ コスモスポーツ、そしてフェアレディZですかね。いずれも日本人デザイナーの作品というのがなんか誇らしいです。やれジウジアーロだピニンファリーナだ、ももちろん良いのですが、純国産にも素晴らしいデザインのクルマがあったんだぞ、と。
この3車種の中で一番身近に感じたのがフェアレディZ。もちろんいちばん安くてよく売れたからですね。今でも旧車イベントでコンディションの良い個体を拝むことができるのは有難いことです。オーナーさんに感謝です。