パイオニア RK-888 – ウルフマン・ジャックがオススメしたモノラルラジカセの名機

1970年代に家電メーカーがこぞって参入したラジカセ市場に、オーディオ専業のパイオニアが満を持して参戦したのが1976年のこと。オーディオメーカーらしさ溢れるひと味違うラジカセは、ユニークなプロモーションとも相まってモノラルラジカセ時代を代表する名機として記憶に残ります。

パイオニア RK-888とは

パイオニアRK888
パイオニア RK-888

後発だったパイオニア

ラジオとカセットテープレコーダーを組合わせた複合家電、いわゆるラジカセが登場したのは1960年代後半のこと。その利便性から瞬く間に認知度が拡大し、家電メーカー各社が参入することによって家電業界における一大成長市場となりました。

メーカー各社は製品開発と改良にしのぎを削り、当初は簡単な音のメモに限られていた用途が拡大。良い音で音楽を楽しむ、という機能・性能の追求がラジカセ進化の方向性のひとつとなりました。

こうなるとオーディオ専業メーカーもラジカセに関心を寄せることになります。それまで単品コンポのカセットデッキでオーディオマニア層に限られていたビジネスを一気に拡大するチャンスと捉えるメーカーが現れても不思議ではありません。

こうした背景から1970年代後半、パイオニアは満を持してラジカセ市場に参入することになりました。

オーディオテイスト溢れるデザイン

フラッグシップモデルRK-888の最大のライバルはソニーのスタジオ1980MK2であったと思われます。スタジオ1980シリーズはスタイリッシュなデザインと音の良さ、ミキシング機能によって音創りを楽しむことができるとあって音楽好きの若者から大きな支持を集めていました。

対するパイオニアはオーディオコンポのテイストを徹底強調する戦略をとります。象徴的なのがトップパネルのデザインです。アルミパネルとシルバーのボタンやレバーで統一され、コンポふうのデザインは高級感に溢れるものでした。

RK888トップパネル
ブラックボディとシルバーのトップパネル

レバー式のカセット操作部

特に印象的なのがカセットの操作レバーです。スタジオ1980MK2は黒いプラスチック製のプッシュボタンでしたが、RK-888ではコンポのカセットデッキを彷彿とさせる金属製のレバーを採用。

RK888カセット操作部
レバー式スイッチが特徴的

しかし、操作性を考えるとこのレイアウトにレバー式スイッチは疑問が残ります。似たデザインのラジカセにソニーのCF-2700がありましたが、こちらは横置きで使うのが前提です。

ソニー CF-2700D

縦置きで使うラジカセで上部にカセット操作部を配置する場合には、操作性の観点からはプッシュ式ボタンが正解ではないかと思います。デザインを優先したレイアウトではなかったかと想像します。

チューナー部のこだわり

ラジオのチューニングスケールもコンポのチューナーを思わせるワイドな仕様。フロントパネル側ではなく、トップパネルに配置したところもコンポらしいデザインイメージに貢献していると思われます。もちろん見た目だけではなく性能も重視。FMには3連バリコンに高周波増幅回路とセラミックフィルターを採用しています。

いっぽうで、当時流行していたBCLに必要な短波(SW)には対応していません。機能競争ではマイナスになりますが、オーディオライクなこだわりからあえて採用しなかったと考えることが出来ます。

ただ、実用性を考えると疑問の残るレイアウトです。カセット操作部と同様、チューニングスケールは上部ではなく前面に配置したほうが使い易かったのではないでしょうか。このあたりもデザイン優先の割り切りなのかもしれません。

トップパネル
左右いっぱいに広がるチューニングスケール

四角と丸を組合わせたスピーカーグリル

スピーカーグリルのデザインは、その面積の大きさからしてラジカセのイメージを左右する最重要の要素と言えます。

RK-888ではウーハー部には開口部を大きくとった角型のグリルを、ツイーター部には丸形のグリルを採用し、両者が重なるようにレイアウトしたユニークなデザインとしています。

特にウーハー部のグリルは立体的に盛り上げた形状としており、これがデザインのキモとなっています。この立体処理がなければ、平面的でインパクトの薄いデザインになっていたでしょう。

スピーカーグリル
印象的なデザインのスピーカーグリル

ウルフマン・ジャックをフィーチャー

ウルフマン・ジャックとは、狼の遠吠えの鳴きまねで有名になったアメリカ人のディスクジョッキーです。当時FENと呼ばれた、在日米軍人向けのラジオ放送(現AFN)の人気番組「ウルフマン・ジャック・ショー」に出演していました。

カタログ表紙のウルフマンジャック
ウルフマンジャックをフィーチャーしたカタログ

FENではアメリカの最新ヒット曲やジャズなど、ふんだんに音楽が流れていましたので、洋楽やジャズ好きにとっては大変親しみのある放送局でしたし、FENを通じてウルフマン・ジャックを知っている流行に敏感な若者が結構いたわけです。

あえて感度の高い若者に焦点をあてたプロモーション。これもパイオニアのラジカセに独自のイメージを与える素晴らしいマーケティングだったと言えましょう。

データ

  • モデル名:RK-888
  • 発売:1976年(昭和51年)
  • 定価:44,800円
  • サイズ:W366 x H240 x D110(mm)
  • 重量:4.6kg(電池含まず)

カタログより

RKシリーズカタログより
RKシリーズカタログより

管理人のつぶやき

このラジカセは憧れの一台でした。やはり何といってもパイオニア製というところが「音が良いに違いない」と思わせるアドバンテージになっていたと思います。

デザインもひと味違う高級感があったのは本文に書いたとおりなのですが、実はモノラルラジカセには珍しく標準サイズのヘッドホンジャックが付いていました。これもオーディオコンポっぽさの演出に効いていたんじゃないかと思っています。なかなかニクイ演出ですね。

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