シーナ・イーストンは1959年生まれ、英国・スコットランド出身の女性シンガー。テレビ番組への出演がきっかけとなり歌手デビューすると、ヒット曲にも恵まれ一気にスターダムに。日本でも人気を博し、化粧品などのテレビCMで楽曲がフィーチャーされました。
シーナ・イーストン/Sheena Eastonとは

ドキュメンタリーが現実に
シーナ・イーストンがプロの歌手としてデビューするきっかけとなったのは、BBC制作のテレビ番組『The Big Time』への出演です。
この番組はドキュメンタリー。見どころのあるアマチュアに光を当て、専門家のアドバイスを受けながら幾多の試練を乗り越えて成長する過程を追う、というもの。今ふうにいうならリアリティー番組ですね。
1976年から80年にかけて15エピソードが放映されました。主婦がテレビ司会者になったり、料理コンテストの優勝者が一流ホテルのシェフとして元首相の晩餐会の料理を用意したり、アマチュアサッカー選手がビッグクラブの大物選手の引退試合に出場を目指したりといったエピソードに交ざって、プロを目指す歌の好きな女の子として登場したがシーナ・イーストンだったのです。
シーナ・イーストンがデビューシングル「Modern Girl」をリリースしたのは1980年。番組出演の翌年のことでした。
そんな出自もあってか、シーナ・イーストンにはスター然とした雰囲気よりも、「こんな歌のうまい人がいたんだ」と感じさせる自然な存在感がありました。
親しみやすいポップスター
デビューアルバム『Take My Time(邦題「モダン・ガール」)』はタイトル曲を筆頭にまさに粒ぞろいの名盤。「Modern Girl」に続く第2弾シングル「Morning Train」も大ヒットします。
もともと英国では「9 to 5」というタイトルで発表された曲でした。しかし、アメリカ進出にあたっては、「カントリーミュージック界の女王」ドリー・パートンの有名な「9 to 5」と混同される可能性があったため、「Morning Train (Nine to Five)」というタイトルで発売されました。この曲はアメリカでも大ヒットし、全米チャート1位を獲得しました。
明るく軽快なメロディー、覚えやすいサビ、そしてシーナの伸びやかな歌声。80年代初頭のポップスらしい魅力がぎっしり詰まっています。シーナ・イーストンの初期を代表する一曲と言えるでしょう。
映画の世界に広がった歌声
そして、シーナ・イーストンを語るうえで外せないのが「For Your Eyes Only」です。
1981年公開の映画『007/ユア・アイズ・オンリー』の主題歌として知られるこの曲は、彼女のキャリアを一段上へ押し上げました。
ジェームズ・ボンド映画の主題歌といえば、歌手にとって特別な仕事です。映画の世界観を表現しながら、一曲のポップソングとしても成立させなければなりません。
「For Your Eyes Only」は、派手に盛り上がる曲ではありません。むしろ、しっとりとしたメロディーと、次第に高まっていくドラマチックな雰囲気が印象的です。若いポップ歌手だったシーナ・イーストンが、この曲によって大人っぽい表現力を見せたことも大きかったのでしょう。
彼女自身の代表曲としてだけでなく、数多くの007主題歌のなかでも印象に残る作品です。映画を知らなくても、この曲の美しいメロディーには聞き覚えがあるという人も多いかもしれません。
イメージを変えながら成長
80年代半ばになると、シーナ・イーストンのイメージは大きく変わっていきます。その変化を象徴するのが1984年の「Strut」です。
初期の「Morning Train」を歌っていた頃のシーナを知っていると、この曲には少し驚かされます。サウンドはより力強く、歌い方も大胆です。そして何より、女性として自分の意思をはっきり示す姿勢が感じられます。
「かわいらしいポップ歌手」というイメージから抜け出し、より自立した大人の女性へ。そんな転換を感じさせる曲でした。
80年代の音楽界では、アーティストがデビュー時のイメージに縛られず、新しい自分を見せていくことが珍しくありませんでした。シーナ・イーストンもその一人だったのでしょう。
「Strut」は、彼女が単なるアイドル的な歌手ではなく、時代に合わせて自分を変化させていくポップスターだったことを示す重要な一曲です。
プリンスとの刺激的な共演
シーナ・イーストンのキャリアでもう一つ興味深いのが、プリンスとの関係です。
彼女は「Sugar Walls」などでもプリンスと関わっていますが、特に有名なのが1987年の「U Got the Look」です。
プリンスといえば、80年代を代表する天才的なミュージシャンです。その独特の世界にシーナ・イーストンが加わった「U Got the Look」は、彼女のキャリアの幅広さをよく表しています。
「Morning Train」のような明るいポップスを歌っていた歌手が、数年後にはプリンスと刺激的なダンス・ナンバーを歌っている。この変化こそ、シーナ・イーストンの面白さでしょう。
彼女は一つのスタイルだけにこだわりませんでした。ポップスの歌手でありながら、R&Bにも近づき、カントリー歌手のケニー・ロジャースともデュエットし、プリンスとも共演する。その柔軟さが、彼女を80年代の音楽シーンで長く活躍させた理由の一つだったのではないでしょうか。
管理人のつぶやき
1980年というとまだアナログレコード全盛期で、CDの登場前夜です。
シーナ・イーストンのデビューアルバム『Take My Time』もそうですが、80年代に入るとレコードの音質が妙にクリアーになっていったように感じます。
もしかしたらデジタルマスタリングのおかげかな、と思ったのですが、調べてみるとPCMによるデジタルマスタリングは1970年代に導入が始まってたので、必ずしもそれだけが理由ではなさそうです。実際には70年代のレコードにも妙にクリアーな音がするものもありますしね。特にフュージョンなんかは。
それに比べて、今どきのレコードは盤質の酷いものがあるのは残念です。最近Amazonで買ったビル・ウィザースのベスト盤はアメリカ製の新品なのにザーザーとサーフェスノイズが酷かったです。アナログ全盛期のような品質管理はもう期待できないのかな。


