シュア V-15タイプⅣ – MM型の代表的カートリッジ

アナログレコードを再生するのに欠かせないのがレコードプレーヤーとカートリッジ。特にカートリッジは機種ごとの音の違いを楽しむというオーディオ趣味の側面もあり、多種多様なカートリッジが存在していました。

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カートリッジの発電方式

カートリッジがレコードから音を取り出す仕組みを簡単に言うと、レコード盤面に刻まれた音溝をカートリッジに取り付けられたレコード針がトレースすることによって発生する機械振動を電気信号に変換する、というものです。

レコード針を使わずにレーザー光線によって振動を介さずに直接信号を読み取る方式もありますが、ごく例外的な方式と言って良いでしょう。

主流はMM型とMC型

音溝から発生する振動を電気信号に変換する方法によって、圧電式と電磁式、さらに変調式に大別されます。もっとも一般的なのが電磁式で、発電原理はフレミングの法則によります。なんのこっちゃ、と思われるかもしれませんが、要するに磁界のなかでコイルを動かせば発電する、という現象を応用したものです。

磁石を動かすのがMM(ムービング・マグネット)方式で、コイルを動かすのがMC(ムービング・コイル)方式。MM方式の派生として、磁石の磁界のなかで鉄片を動かすMI(ムービング・アイアン)方式というものもあります。

カートリッジの趣味性

メーカー各社は「我が方式こそが一番!」と優位性を謳うわけですが、方式だけで音の良し悪しが決まるわけではなく、針先の形状やカンチレバーの素材、ボディの構造など様々なファクターが影響します。

親指の先ほどの小さな塊のなかに、各社の技術と創意工夫が凝縮しているのです。さらに個性溢れるデザインの数々。ついつい集めたくなるカートリッジの魅力と言えましょう。

シュアはMM型カートリッジの代表的メーカー

シュアは1925年に創業したアメリカのオーディオメーカーです。今日では民生用のヘッドホンやイヤホンが有名ですが、元は業務用マイクロホンで会社の土台を築きました。

シュアがレコード再生用カートリッジに本格参入したのは1958年のこと。コロムビアレコード社との提携により、ステレオLP再生に対応した世界初となる磁気フォノカートリッジ、M3D型を開発しました。

バーチカルアングルに着目

シュア V15タイプ4
shure V-15 type Ⅳ カートリッジ

カートリッジメーカーとしてのシュアの名声を確立したのは1964年発売のV15です。画像のモデルの初代にあたります。V15というモデル名は、垂直トラッキングアングルが15度であることにちなんでいます。

この15度という角度はレコードのカッティング時の角度と同じもので、垂直方向のトラッキングエラー(トラッキング角度のズレ)をゼロにすることが歪みの低減につながるとのシュアの気付きを具現化したものでした。

シュアの目論見はズバリ当たり、V15は大評判を獲得します。豊かな中音~低音に華麗な高音、聴いていて楽しくなる音、という評判で、当時すでに高い評価を得ていたオルトフォンのカートリッジとは対照的な音色と評されました。ちなみにオルトフォンはMC型の代表的メーカーです。

熟成の第4世代

時は流れて1978年。レコードの録音やカッティングの技術は大きく進化し、ダイナミックレンジや周波数レンジが拡大したことに伴い、カートリッジにもより高いトラッキング性能が求められるようになっていました。

V15タイプⅣはその要求に対するシュアからの回答でした。

ダイナミックスタビライザー
針の右側に見えるのがダイナミックスタビライザー

タイプⅣではカンチレバーにジュラルミンのパイプを二重にした二段テーパーを採用。望遠鏡のような形ですね。

またダンパー後方にゴムを配置することにより、共振を抑えるとともに低域を伸ばす効果を狙ったダイナミックダンパーを装備していました。

さらに針先にはハイパー・エリプチカルと呼ばれる超だ円針を用い、音溝への追従を有利にしていました。

ダイナミックスタビライザー

もうひとつの特徴は「ダイナミックスタビライザー」と呼ばれるブラシです。このブラシは導電性のある繊維からできており、ホコリを弾き飛ばすだけでなく、レコード盤面の静電気を逃がす効果も持っていました。

ダイナミックスタビライザーは跳ね上げた状態にしておくことも可能なので、針先以外のものがレコードに接触していることが気になるユーザーには、ブラシを使わないという選択肢もありました。

ダイナミックスタビライザー 下から
ダイナミックスタビライザーは導電性ブラシでできています

今でも交換針が入手可能

カートリッジ本体はネットオークションなどで入手可能ですが、問題は針。中古のカートリッジについている針は当然ながら摩滅しているはずですので、あまり期待できません。精神衛生的にも新しい針に交換したくなりますね。

Shureの交換針は、純正ではありませんが互換品が入手できます。新品が手に入るのは有難いですね。

日本精機宝石工業(JICO)のオンラインショップ

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データ

  • 発売:1978年(昭和53年)
  • 定価:39,800円
  • 発電方式:MM型
  • 出力電圧:4mV
  • 周波数帯域:10~25,000Hz
  • セパレーション:25dB(1KHz)
  • 針圧:0.75~1.25g(ダイナミックスタビライザー使用時は+0.5g)

管理人のつぶやき

管理人がレコードを楽しみ始めた中学~高校時代、手の届くカートリッジの相場は1万円から2万円といったところでした。なかには数千円のものもあり、それでも十分に音楽を楽しむことができていました。

徐々に音楽というより音への興味、つまりオーディオ沼に足を突っ込むようになると『FM fan』や『週間FM』といったオーディオ雑誌を読むようになります。すると、高級カートリッジには10万円を超えるものがあることを知り、「いつかはクラウン」ではないけれど、いつかそんなカートリッジでレコードをならしてみたいと憧れたものでした。もっとも、10万円のカートリッジにふさわしいオーディオセットを組んだら総額数百万円になるでしょうし、そもそもそんなセットを置く部屋など望むべくもなかったのですが。

時が流れて還暦を迎えた今日、手にしたオーディオ誌に載っているカートリッジの高級品は驚くべきことに100万円を超える値がついています。レコード針の寿命は長いもので500時間程度と言われていますから、LP1枚1時間としたら1枚あたり2,000円かかる計算です。

いくらなんでもレコード1枚聴くのに2,000円とは…さすがに熱が醒めました。現代のオーディオはどこか遠い世界へ行ってしまったようです。

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