1970年代のソニーのラジカセ名機といえば、モノラル機ではスタジオ1980/1980MKⅡが挙げられますが、ミキシング機能にこだわらなければむしろ隠れた名機と呼びたいのがこのサウンド1790です。
目次
CF-1790/B(サウンド1790)とは
リスニングに特化
スタジオシリーズがミキシング機能を搭載することで音創りの楽しさを訴求し、ミュージシャン志向のヤングから熱い支持を受けたいっぽう、音楽はあくまで聴いて楽しみたいという層もいたはず。
そこにターゲットを絞ったと思われるのがサウンド1790です。
ミキシング機能は潔く切り捨てながら、スピーカーはスタジオ1980と同様に16cmウーハーと5cmツイーターの2ウェイ。スピーカーはシャーシに直接取り付け、キャビネットが音響ボックスとして働くように設計されています。アンプの出力はスタジオ1980初代と同じ3W。
トーンコントロールは高音・低音それぞれで好みのレベルを設定することができる独立式。
ボーカルを際立たせるボーカル・アップ・スイッチ
サウンド1790にユニークな機能として、人間の音声帯域である中域のレベルを持ち上げる「ボーカル・アップ・スイッチ」が付いていました。スイッチオンによってボーカルが際立ち、歌手が目の前に迫ってくるような迫力を感じることができます。
低音と高音を強調するラウドネス・スイッチを採用したラジカセは多いのですが、いわばその逆を突いたアイデア。いかにもソニーらしい発想ではないでしょうか。
快適な操作フィーリングが味わえるフライホイール
ラジオのチューニングダイヤルには、フライホイールを使った駆動メカを採用しています。フライホイールとは重量のある金属製の円盤で、慣性の働きによってダイヤルの回転がとてもスムーズ。オーディオコンポのチューナーのような高級感ある操作が楽しめます。
贅沢なツイン・メーター
これもサウンド1790のユニークなところですが、レベルメーターとチューニングメーターが独立しています。スタジオ1980をはじめ、モノラルラジカセではレベルメーターとチューニングメーターは兼用になっているのが一般的。「だからどうした?」という機能ではありますが、ちょっとした贅沢が嬉しいのです。
もうひとつ、電源オンの時に点灯するオペレーションインジケーターも電源の切り忘れを防いでくれる細かい気配りです。
こんなディティールに拘ったところも本機を隠れた名機と呼びたい特徴です。
データ
- モデル名:CF-1790/1790B ※Bは外装がブラック
- 発売:1976年(昭和51年)
- 定価:37,800円(1790Bは38,800円)
- サイズ:W412 x H265 x D110(mm)
- 重量:4.5kg(電池含む)
カタログより
管理人のつぶやき
サウンド1790の発売はスタジオ1980MKⅡと同じ1976年です。
初代1980からデザイン面で著しい成長を遂げて「美人」になった1980MKⅡは今日の目から見てもビューティフルなラジカセ。ミキシング機能に興味のない人でもつい惹かれる魅力満点の出来栄えでした。
いっぽうで、サウンド1790は「音楽を聴く」ことでは劣らないうえに、スタジオ1980MKⅡにはない特徴(ボーカル・アップ・スイッチ、フライホイール、オペレーションインジケーター)まで備えたうえで価格も6千円も安いわけですから、冷静に考えればスタジオ1980MKⅡに負けない人気があっても不思議ではありません。おそらくソニーの商品企画担当者はそう目論んだと想像します。
ところがスタジオ1980MKⅡのあまりの人気ゆえ、影に隠れた存在になってしまった印象です。実際の販売成績はどうだったのでしょうね?気になるところです。
まぁこんなことはスポーツや芸能など人間の世界にもよくあることですがね。蛇足なから。