ソニーの代表的なモノラルラジカセであるスタジオシリーズの最上位モデルです。直径20センチの大口径ウーハーを採用した2ウェイスピーカーによる迫力あるサウンド。スタジオシリーズ伝統のミキシング機能も充実。メカニカル制御によるオートリワインドやオートリピートがユニークです。
目次
CF-1990(スタジオ1990)とは
ソニーのスタジオシリーズ
ソニーのモノラルラジカセにはいくつかのシリーズ展開がありました。最も有名で人気があったと思われるシリーズが「スタジオシリーズ」のほか、語学学習に便利な後追い録音機能を持った「LLシリーズ」やソニーのお家芸である小型高性能を追求した「Proシリーズ」などがありました。
スタジオシリーズの特徴は、その名の通り「録音スタジオ」をイメージさせるミキシング機能を搭載していることでした。ミキシング機能とは外部マイクやラジオ、ライン入力など複数の音源をミックスしてテープに録音したり再生できるようにしたもので、オリジナルの音創りを楽しむミュージシャンの卵にはうってつけの機能でした。
スタジオシリーズのフラッグシップ
スタジオシリーズの人気を確立したのが初代スタジオ1980であるCF-1980です。ミキシング機能もさることながら、端正なデザインや2ウェイスピーカーによる高音質化など、モノラルラジカセのあり方にひとつのスタンダードを提供した名機でした。2代目のスタジオ1980マークⅡ(CF-1980Ⅱ)はデザインのリファインと大出力化などにより完成度を極め、「モノラルラジカセの完成形」とも称される大ヒットモデルとなりました。
スタジオ1990(CF-1990)はスタジオ1980マークⅡと同年の1976年に発売された上位機種で、1980マークⅡに比べて以下のように差別化が図られていました。
20cmウーハーと5.5Wの大出力
スタジオ1980およびマークⅡのスピーカー構成は16cmウーハーと5cmツイーターの2ウェイ。
この16cmウーハーによる2ウェイというのは音質を重視したモノラルラジカセのスタンダードとなっていましたが、スタジオ1990では20cmというさらなる大口径化が図られ、1980マークⅡの3.2Wから5.5Wにパワーアップされたことと相まって、フラッグシップにふさわしい迫力のあるサウンドを誇りました。
スピーカー前面だけでなく、ダイヤルスケールより下のフロントパネル全体をメタルメッシュで覆った大胆なデザインも、1980マークⅡの端正な印象とは違ったパワフルさを表現できていると感じます。
強化されたミキシング機能と高性能テープ対応
ミキシングソースは1980マークⅡでは2系統でしたが、3系統に強化されています。より多彩な音創りを可能にしました。
高性能テープへの対応も見直されています。1980マークⅡではノーマル/クロームの2ポジションだったテープセレクターは、フェリクロームも加えた3ポジションに進化。ソニーが打ち出した新しい高性能テープである「Duad(デュアド)」にしっかり対応しています。
楽しいギミック
再生中のテープが末端まで到達すると自動的に巻き戻しが始まる「オート・リワインド」、巻き戻しが完了すると自動的に再生が始まる「オート・リピート」を搭載していました。
のちにカセット走行の操作が電子式のロジックコントロールになると珍しくもなんでもない機能になりますが、この時代はまだ純粋にメカニカルな仕組みで実現していました。ユニークなのは、これらの動作の際に「巻き戻しボタン」や「再生ボタン」が自動的に押された状態に遷移すること。
ボタンがひとりでに上下するさまは、まるで透明人間が操作をしているかのようで見ていて面白いです。
データ
- モデル名:CF-1990
- 発売:1977年(昭和52年)
- 定価:49,800円
- サイズ:W438 x H295 x D136 (mm)
- 重量:6.2Kg(電池含む)
カタログより
管理人のつぶやき
このラジカセは持っていたことがあります。同じソニーのステレオXYZ(CFS-686)と比べると、やはりモノラルとステレオの違いから情報量はステレオXYZに軍配が上がりました。しかし、音域の広さではCF-1990が明らかに勝っていました。ステレオXYZのウーハーは16cmなのでプラス4cmの差が出ました。ラジカセといえどハッキリわかるものだな、と感心しました。
デザイン的にはスタジオ1980マークⅡのほうが完成度が高いと思いますが、個人的には1990のワイルドな感じも捨てがたいですね。特にウーハーの大きなセンターキャップが透けて見えるところがなんともカッコ良いです。こちらも昭和のラジカセ名機だと思います。