先進のフェザータッチコントロールやデジタル表示式チューナーを装備したステレオラジカセ。英語で「閣下」を意味する「Sir(サー)」を名乗るところがただモノではありません。
ソニー CFS-D7(SirⅢ)とは

ラジカセから針が消えた
ラジカセにはふたつの「針」がついているのがそれまでの常識でした。
ひとつはラジオのチューニング用の指針。これにはスケール(周波数の表示板)が固定されていてダイヤルを回して針を動かすタイプと、針は固定されていて円盤状やフィルム状のスケールを動かすタイプがありました。
もうひとつはレベルメーター。録音・再生レベルやラジオの信号強度、さらに内蔵電池の残り容量などをスイッチで切り替えて表示させることができました。
CFS-D7には一切の針がありません。LEDのレベルメーターと液晶デジタル表示に置き換えられています。

液晶デジタル表示されるのは、クォーツ式クロック&タイマーと、ラジオの受信周波数です。
ラジオのチューニングダイヤルも独特のデザイン。ツマミを「回す」というより「送る」という感覚です。ラジオの回路はのちに主流となるPLLシンセサイザー方式ではありません。

フェザータッチ式コントロール
単品コンポのカセットデッキではすでに常識になりつつありましたが、テープの操作系にフェザータッチ式のロジカルコントロールが、ラジカセとして(恐らく)世界で初めて採用されました。

メカニカルなボタンやレバーとは全く異なる、軽くボタンに触れるだけの快適な操作感がついにラジカセでも実現したことは本当に画期的でした。
ロジック・コントロールにより、操作の切り替え時にテープへのダメージを気にする必要がなくなりました。メカ式の操作系では、例えば「再生」から「巻き戻し」に切り替えたい時には、テープに負荷がかからないようにするため「再生」⇒「停止」⇒「巻き戻し」という順番で操作する必要がありました。ロジック・コントロールのおかげで「再生」⇒「巻き戻し」とボタンを操作しても、動作としては「停止」を経由させてテープへのダメージを防いでいます。
レコードプレーヤーとのシンクロも可能
CDが登場するまでは、カセットに録音する音源としてはラジオ放送と並んでアナログ・レコードがメインでした。

レコードを録音する際には、盤面に針を降ろすタイミングとカセットの録音開始(ボーズの解除)をうまくあわせる必要があるため少々面倒でした。
これを解決したのがカセットメカとレコードプレーヤーのシンクロ機能です。シンクロとは動作を同期させることで、CFS-D7では、専用のプレーヤーと組み合わせることによって、デッキ側、あるいはプレーヤー側の操作だけでカセットの録音とレコードの再生を同時にスタート・ストップできるのです。
ドルビーNRも抜かりなく
テープに特有の「サー」というヒスノイズを低減させるドルビーNR(ノイズ・リダクション)システムを搭載。ソニーではCFS-686という高級ステレオラジカセに初搭載した機能を本機でも踏襲。

フェリクロームにも対応したテープセレクターを装備しています。ラジカセには珍しくバイアスとイコライザーがそれぞれ独立したスイッチになっています。
マイクミキシング用のフェーダーも搭載。ラジカセらしく遊び心も忘れていません。

データ
- 発売:1979年(昭和54年)
- 定価:79,800円
- サイズ:W498 x H274 x D146(mm)
- 重量:8.0kg(電池含む)
カタログより



管理人のつぶやき
フェザータッチ式コントロールにドルビー搭載の高性能デッキ。さらにデジタル表示のチューナー付きとあって魅力満点のラジカセでした。デザインも凝縮感のあるボディーにシャープなラインが未来を感じさせるもの。
当時持っていたラジカセ(ソニーのゴング55)に飽き足らなくなってきたため、ラジカセを卒業してコンポデッキに移行しようと思っていた矢先に登場したSirⅢ(サー・スリー)には参りました。デッキに求めていたフェザータッチやLEDレベルメーター、もちろんドルビーにテープセレクターも付いてる。もうデッキいらないんじゃない?とさえ思ったのですが、いかんせん価格が高い。
定価の79,800円なら中級クラスのデッキが余裕で買えるし、スペックなら当然コンポデッキの敵ではありません。というわけで、SirⅢオーナーになることはなかったです。
1980年代になると高級ラジカセにはフェザータッチ採用が常識になっていきますが、ひとあし先にやってきた未来のラジカセ、果たしてどれくらい売れたのか気になります。


