ソニー Duad – 磁性体を二層塗りした高音質カセット

特性が異なる磁性体を二層塗することで、低音から高音までダイナミックレンジの広い録音を可能にした高音質カセットテープです。ソニーが開発しました。メタルテープが登場するまでは最高級テープとして君臨していました。

ソニー Duad(デュアド)とは

世界初のフェリクロムテープ

1973年にソニーが発売した高級カセットテープです。「デュアド」と読みます。一般的にはフェリクロムテープと呼びます。

「フェリクロム」とはテープに塗布されている磁性体のことを指しており、酸化鉄による第1層の上に二酸化クロムによる第2層を重ね塗りしていることを表しています。

世界初が得意なソニーらしい製品ですね。

ソニーデュアドカセットテープ
憧れの最高級テープ デュアド

始めは音声メモ用だった

カセットテープ(正式には「コンパクトカセット」)は、1962年にオランダのフィリップス社が開発した規格です。普及させることを目的に規格は無償公開されたため、世界中のメーカーが参入。

日本からもソニーのほかTDKやマクセルなどが製品を開発。その後世界の市場を席捲することになる優秀なテープを送り出しました。

規格開発時に想定していた用途は会議などの音声を記録することがメインで、音楽を良い音で、という後に主流となる使い方は考えられていませんでした。

音楽の録音にはオープンテープが使われていた時代でした。オープンテープと比べたら、テープ幅がせまく走行スピードも遅いカセットテープは像とアリぐらいの差があったと言えるでしょう。

音楽用テープの誕生

カセットテープ(コンパクトカセット)はその名のとおりコンパクトで、かつテープがケース内に収まっているという取り回しの楽さがウケ、またハードウェアの開発も日本メーカーを中心に急速に進んだことから一気に普及。すると音楽を良い音で録音したいというニーズにも対応せざるを得なくなりました。

そこで酸化鉄ベースの磁性体に改良を加え、「音楽用」をうたうテープが登場します。TDKが早くも1968年に『SD』を投入。高音質化への開発競争がスタートしたのです。

クロムテープの登場

カセットテープの高性能化は磁性体の開発にかかっています。記録できる情報量をいかに増やすかがカギになるのですが、磁性体においては「保磁力」という特性をいかに高められるかが開発の方向性でした。

いち早く新磁性体の開発に漕ぎつけたのはアメリカのデュポン社。酸化鉄磁性体をはるかにしのぐ保磁力を持つ二酸化クロムを使った磁性体を発表、各社からは二酸化クロムを使ったテープが発売されました。

ただ、クロムテープは摩擦係数が高く磁気ヘッドの摩耗が早いことや、当時公害問題で悪玉とされた六価クロムによる悪者イメージもあってクロムに変わる磁性体が求められ、酸化鉄にコバルトを被着したものに置き換わっていきました。TDKの「アヴィリン」やマクセルの「エピタキシャル」などがそうした新しい磁性体でした。

こうした経緯で、当初はクロムテープと呼ばれたテープは「ハイポジション(もしくはタイプⅡ)」と呼ばれるようになりました。

第3の選択肢

ハイポジションテープは高域がよく伸びる反面、低域がノーマルテープにくらべると物足りない、という評価が一般的でした。そこで、両者の特長を良いとこどりしようという意図で開発されたのが、酸化鉄と二酸化クロムの2層塗りという技術だったのです。

ソニーを追いかけ、日本コロムビアやBASFなどからもフェリクロムテープが発売されましたが、実はフェリクロムに参入したメーカーは少数派で、TDKや日立マクセル、富士写真フィルムなどは動きませんでした。

ちなみにフェリクロムテープの性能をフルに発揮させるには、デッキ側に専用ポジション(タイプⅢ)が必要でした。

メタルテープ登場によりフェードアウト

高性能カセットの開発はフェリクロムで打ち止めにはなりませんでした。

1979年、磁性体に酸化しない鉄を使った「メタルテープ」がすい星のごとく登場。従来の高性能テープとはけた違いの性能を発揮し、オープンテープにも迫ろうかという高音質を実現しました。

カセットデッキも「メタル対応」をうたう新機種が続々と登場すると、フェリクロムの立ち位置は失われ、最高級テープの地位をメタルテープに明け渡すことになったのです。

管理人のつぶやき

中学生となり、BCLブームから足抜けしてから興味の対象になったのがラジカセでした。

ラジカセを初めて買う時、まずステレオかモノラルかで迷いました。モノラル機ではソニーのスタジオシリーズが一番人気。当時は3世代目の1980Mark5が発売中でした。

いっぽうステレオラジカセでは同じくソニーのジルバップ。ただ、スタジオ1980Mark5が4万円台なのに対してジルバップは5万円台後半と敷居が高く、ちょっと手が出ませんでした。

そこに現れたのが愛称『ゴング』のCF-6300というステレオラジカセ。ソニー製ですから、憧れのDuadが使えるフェリクロムポジション付き。これに決めました。しかし、録音レベル調整がソニオマチックという自動調整のみで、マニュアル録音ができませんでした。それが後悔の素になるとは…

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