愛称『ジャッカル(Jackal)』で知られるソニーのテレビ一体型ラジカセです。他社製とは明らかに異なるフォルムのみならず宣伝イメージもユニーク。オブジェとしても魅力溢れる一台です。
FX-300(ジャッカル300)とは
ソニーのテレビ内蔵ラジカセ1号機
お茶の間の主役として「一家に一台」だった高額商品のテレビは、低価格化と小型化が進んだことでパーソナルな用途にも市場拡大しました。その流れの行きついた先がラジカセとの一体化。ラジオ、カセットに加えてテレビまで楽しめる万能マシンとして感度の高い若者の人気を集めました。
メーカー各社から続々と製品が登場しましたが、デザイン的にはどれも見慣れたラジカセのスタイルを踏襲したなかで、異彩を放っていたのが直方体フォルムのソニー・ジャッカル300でした。
主役はテレビ、という主張
当時のテレビ受像機はまだ液晶が実用化する前なのでブラウン管を使っていました。ブラウン管は奥行きがあるため、ラジカセに内蔵するにはビクター・M-77のように本体上部に画面がくるレイアウトにするのが無難でした。
ただ、このレイアウトだとテレビを見る時には本体を横置きする必要があります。ラジオやカセットを楽しむときには縦置きで、テレビを見るには横置きに置き換えなければならない。これはちょっと不便です。
ジャッカル300ではラジカセのデザイン文法を無視した、大胆にもテレビを主役としたレイアウトを選択したのです。いかにもソニーらしいですね。
ブロックごとに機能を分けたレイアウト
機能的によく考えられたデザインです。上から順番に見てみましょう。
まず一番上がカセット。テープ再生が終わると自動的にボタンが戻るオートシャットオフ機能付きです。転倒時に操作レバーを保護するアーム付き。
中央部には主役であるテレビの画面を真ん中に、左右にコントラストボリューム、バンド切替スイッチとチューニングスケールを配置しています。テレビ関連の機能を集約しています。テレビ画面の上部には光の差し込みにより画面が視づらくなることを防ぐためのフードが付いています。
下部にはラジオに加えてボリューム、トーンコントロールとイヤホンジャックなどの共通機能を配置。
このように、使い方を考え抜いた合理的なデザインであることがわかります。工業デザインのお手本と言えるこのようなデザインがオブジェとしての魅力の一端でもあるのでしょう。
データ
- モデル名:FX-300
- 発売:1976年(昭和51年)
- 定価:61,800円
- サイズ:W175 x H270 x D225 (mm)
- 重量:4.5kg(電池含む)
カタログより
管理人のつぶやき
テレビ一体型ラジカセのことを「ラテカセ」とも呼びますが、これは日本ビクターが命名したもの。そもそも「ラジカセ」もパイオニアが最初に使った造語なのですが、いずれも一般化しましたね。
もちろん新し物好きだった管理人もラテカセには一目置いたのですが、同じ時期にブームになっていたBCLからステレオラジカセへと興味が移るなかで、購入検討対象となるには至りませんでした。
今ならオブジェとして部屋に飾っておきたいところですね。もちろんテレビにはもはや砂の嵐しか映らないわけですが。