スーパースコープ CRS-5000 – なんちゃって3ヘッドが惜しい高級ラジカセ

日本マランツがスーパースコープブランドで展開していたステレオラジカセシリーズの最上位モデル。ラジカセとしては画期的なドルビーNRと3ヘッド搭載をうたった高級ラジカセです。

スーパースコープ CRS-5000とは

スーパースコープ CRS-5000
スーパースコープ CRS-5000

マランツとスーパースコープ

1970年代、ラジカセは若者向け家電の花形ともいえるほど流行したヒット商品であり、高機能化・高音質化を図りながら70年代後半にはステレオタイプが主流となっていきました。

ソニーや松下、東芝など大手家電メーカーに加えてパイオニアのようなオーディオ専業メーカーまでもが参戦し、家電販売店の一等地を大いに賑わせていました。

スーパースコープは名門オーディオブランドであるマランツを傘下におくアメリカの会社でしたが、紆余曲折を経て日本マランツ社(旧スタンダード工業)がラジカセやミニコンポなどのゼネラルオーディオ向けブランドとして展開するようになりました。

そうした背景から、スーパースコープのラジカセを「マランツのラジカセ」と捉える向きもあります。間違いとは言えないものの、メーカーの意図としては、高級コンポのマランツ製品とラジカセには一線を画しておきたかったはず。なので、製品には「marantz」の表記は一切ありません。

ステレオラジカセを積極展開

1979年(昭和54年)発行のカタログには、6機種ものステレオラジカセが掲載されています。

それらのうち最も高価なのはCRS-7000というモデルですが、これは左右のスピーカー分離できるスリーピース型。ラジカセというよりは、ポータブルコンポと呼ぶほうがしっくりきます。

一体型ラジカセとしては、最上位機種がCRS-5000。以下、ダブルカセットの先駆けとなったCRS-4800CRS-4000の改良型である4000Ⅱ、ベーシックな3800そして旧世代モデルらしい2025と続きます。大手メーカーと比べればさほど規模の大きくなかった日本マランツが6機種ものラインアップを揃えていたことは驚きですが、それほど大きなマーケットだったということでしょう。

1979年のラインアップ
1979年のラインアップ

ラインアップ唯一の3ヘッド搭載

CRS-5000は高級機としてふたつの特長があります。ひとつはドルビーNR(ノイズ・リダクション)の搭載。テープ特有のヒスノイズを抑えるための機能で、コンポデッキではすでに必須の機能でしたが、ラジカセへの搭載はまだ珍しい時代でした。もうひとつはさらに画期的な(と思わせた)3ヘッドです。CRS-5000よりも高価なCRS-7000ですら2ヘッドなのに、それを凌ぐハイスペック。

コンポデッキにするかラジカセにするか迷ったオーディオ好きヤングの歓心を買うに十分なアピールポイントです。

3ヘッドとドルビーが自慢
3ヘッドとドルビーが自慢

実はなんちゃって3ヘッド

ラジカセやベーシックなコンポデッキでは、録音・再生兼用ヘッドに消去ヘッドという2ヘッド構成が一般的です。それに対して、録音ヘッドと再生ヘッドを独立させ、それぞれの機能に最適化された構造を持つのが3ヘッド。

ヘッドがテープに接触する部分(ギャップ)の最適値が録音と再生では全く異なるため、録再兼用ヘッドでは音質面で妥協せざるを得ませんが、3ヘッドではその制約がありません。その効果は特に高音域の伸びに顕著ですので、音質重視の高級コンポデッキでは3ヘッドが常識になっていました。

ところが、CRS-5000のヘッドは録再兼用ヘッド+モニターヘッド+消去ヘッドという構成。モニターヘッドは、録音しながらテープの記録状態をモニターするためのもので、肝心の録再ヘッドは2ヘッドのものと同じなのです。なので3ヘッドとはいえ、音質的なメリットのない「なんちゃって3ヘッド」だったのです。

ラジカセなので大目に見ましょう

というわけで、このカラクリに気付いたオーディオ好きヤングはやはりコンポデッキを選んだでしょうね。

とはいえ、ドルビーNRにマニュアル録音機能付き、テープセレクターもフェリクロームテープが使える3ポジションなど、ラジカセのデッキとしては十分に高性能です。

フォノイコライザー内蔵でレコードプレーヤーが接続できたり、ライン入力端子も備えているなど発展性があるところも良いですね。

ラウドネスは常時オン
フォノとライン入力付き
フォノとライン入力付き

本来の3ヘッドにしようとしたら、ヘッド以外にも回路や走行系にも手を入れる必要があり、コスト的に難しかったことでしょう。ボリューム感のあるデザインはシリーズ共通ながら、細部の仕上げの違いのせいか、本機はどことなく風格を感じさせます。

出力も下位モデルが3.6W+3.6Wなのに対して5W+5Wとハイパワー化。上位機種の貫禄を見せつけます。

ボリューム感のあるデザイン
ボリューム感のあるデザイン

データ

  • モデル名:CRS-5000
  • 発売:1978年(昭和53年)
  • 定価:89,800円
  • サイズ:W481 x H248 x D150(mm)
  • 重量:8.5kg(電池含む)

カタログより

3ヘッドにドルビー搭載のCRS-5000
3ヘッドにドルビー搭載のCRS-5000

管理人のつぶやき

ラジカセで3ヘッド搭載を謳ったモデルは、このCRS-5000以外には寡聞にして知りません。競争の激しいラジカセではやはりコストが見合わなかったのか、あるいはラジカセにはオーバースペックとして企画が却下されたのか。

一度でも3ヘッド機の音質を聴いてしまうともう2ヘッドには戻れなくなります。高音の伸びが全然違います。もっとも、2ヘッドでも並みの3ヘッド機を凌駕すると称賛されたデッキもありましたね。トリオ/ケンウッドの880シリーズとかナカミチの2ヘッド機などはそう評価されていました。

ただ、2ヘッドだとアフターモニターができないため、バイアスなどのキャリブレーションができないか、できてもすごく面倒、という難はありました。2ヘッド機なら、フラットな周波数特性など狙わずに、むしろテープごとの個性を愉しむぐらいの割り切りがよいのでしょうね。

昭和の家電
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