テクニクス EPC-205CmkⅡ – カンチレバーにチタンを採用したMM型カートリッジ

国産初のMM型カートリッジを生んだテクニクス(当時はナショナルブランド)の主力モデル、205シリーズの二代目モデル。カンチレバーには軽量化を狙いチタンパイプを採用しました。

テクニクス EPC-205CmkⅡとは

テクニクス205Cmk2
テクニクス EPC-205CmkⅡ

チタンパイプで振動系の軽量化を狙う

アナログレコードに刻まれた複雑な音溝をいかに正確にトレースできるか。これがカートリッジに求められる最重要ポイントなわけですが、実現には様々なアプローチがあります。そのひとつが「針先実効質量の軽量化」、いわゆる「ローマス化」です。

テクニクスは1971年、世界で初めてカンチレバーにチタンパイプを採用した205Cを世に送り出しました。チタンは比重こそカンチレバーの素材として一般的なアルミ合金より高い(つまり重い)のですが、強度が高いため極めて薄い板厚のパイプ形状とすることでアルミ合金製カンチレバーより軽くすることができるのです。205CmkⅡでもチタンパイプ製カンチレバーを踏襲しました。

テクニクス205Cmk2
チタンパイプ製のカンチレバーに楕円スタイラス

世界初のサマリウムコバルトマグネット

MM型カートリッジでは、針先で拾った音溝の振動がカンチレバーの根元にあるマグネットに伝わり、本体側のコイルとの磁気作用によって電気信号が発生する仕組みになっています。マグネットの磁力が強いほど効率的に発電できますので、音質的には有利になります。

205CmkⅡでは世界に先駆けてマグネットの素材にサマリウムコバルトを採用。一般的なフェライトマグネットを大幅に凌ぐ磁力によって、高い出力電圧を実現しました。

テクニクス205Cmk2
サマリウムコバルトマグネットを採用

3タイプに分岐

205CmkⅡは1975年にモデルチェンジされ、H、L、Sという3タイプに分かれました。Sはオリジナルと同じスペックですが、HとLはコイルとコアの仕様を変えることでHを高出力型、Lをローインピーダンス型とし、音質的に異なった性格のバリエーションを提供しました。

個性的なデザイン

ブランドロゴとモデル名が浮き彫りになったプレートが、まるで四角いお面のように前面につくという、ひと目でテクニクスとわかる個性的なデザイン。クセが強いので好みが分かれそうです。

205CmkⅡのスタイラスアセンブリー
お面をつけたようなスタイラスアセンブリー

付属のヘッドシェルは丸い穴のあいた軽量タイプ。こちらもテクニクスらしいデザインです。

205cヘッドシェル
テクニクスらしいデザインのヘッドシェル

データ

  • 発売:1973年(昭和48年)
  • 定価:19,500円
  • 周波数特性:10Hz~40kHz
  • 出力電圧:3.5mV/ch(50mm/s、水平1kHz)
  • 針圧:1.0g~1.5g
  • 針先:0.2×0.7mil 楕円ブロックダイヤ
  • カンチレバー:チタンパイプ

管理人のつぶやき

写真の個体はネットオークションで入手したもので、未使用品ということでした。半世紀も前のものですから、未使用品とはいえ保管状態次第では劣化している可能性も十分にあります。具体的にはダンパーの硬化ですね。そんなリスクも承知のうえで落札しました。

幸いにして、管理人の駄耳ではダンパー硬化の影響は感じられませんでした。どっしりした低音をベースにした骨太さと繊細な中高音を兼ね備えた音と言いましょうか。半世紀を経て70年代のテクニクスサウンドが蘇ったようです。

入手後に気付いたのですが、205CmkⅡはかの長岡鉄男氏がリファレンスに使っていたことがあるのだとか。氏の著書(『長岡鉄男の日本オーディオ史②』)に書いてあるのを発見してなんだか嬉しくなりました。

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