ラジカセのステレオ化が一気に進んだ1970年代後半には、各社から力の入った製品が続々と登場。家電メーカー大手の東芝は『ボムビート』というシリーズ名でステレオラジカセを展開していました。
東芝 RT-8900S(ボムビート12)とは
数年前からラジカセ人気がジワジワと広がっているようです。ネットオークションでは程度の良い人気モデルになると、整備品が当時の定価ぐらいの高値で取引きされています。

昭和レトロ人気の一環ということもあるのでしょうし、レコードとともにアナログオーディオが見直されている流れにも乗っているのでしょう。
ラジカセは新機種まで登場しており、東芝からは古のAUREX(オーレックス)ブランドを冠したラジカセが発売されたのには驚きました。
ボンビートではなくボムビート
写真のラジカセは1970年代発売の『ボムビート12(RT-8900S)』というモデルです。
AUREXブランドではなく東芝。当時のAUREXはピュアオーディオ専門のブランドでしたから、ラジカセに使うなど考えられなかったですね。
ボムビートのアルファベット表記は『BomBeat』です。「ボン」ではなく「ボム」ですね。
つづく「Beat」とあわせてリズミカルな低音をイメージさせます。
そういえば各社のラジカセにはそれぞれオリジナルのシリーズ名がついていることが多かったです。
ソニー『ジルバップ』、日立『パディスコ』、パイオニア『ランナウェイ』、シャープ『ザ・サーチャー』、ナショナル『マック』などなど。
よくあるマーケティング手法なのでしょうが、製品に対する愛も感じますね。
70年代後期の正統派ラジカセ
このモデルは1978年に発売された『ボムビート11(RT-8800S)』の後継機種と思われます。
ボムビート11はブラックのプラスチック製スピーカーグリルが良く言えばクラシカル、悪く言えば古臭い印象を与えるデザインでしたが、本機はパンチングメタルのスピーカーグリルにグレー調の筐体に生まれ変わり、他社製品並み(?)のデザインに一新されました。

流行の頭出し機能を搭載
シャープが『APSS』という名称で先鞭をつけた、いわゆる「頭出し機能」が他社製品にもみられるようになりました。
東芝では『MQJS(Music Quick Jumping Selector)』なる名称を付けています。

カセットテープの弱点のひとつは楽曲の頭出しが難しいことですが、それを解決したのが頭出し機能。
当初は再生中の曲の頭、または次の曲の頭という前後1曲の頭だし限定でしたが、メモリー機能を付加することで数曲ジャンプさせての頭出しも可能と進化しました。
ただ、便利ではあるものの、頭出し機能を使うと早送り・巻き戻し動作中にヘッドをテープに接触させることになるため、ヘッドの摩耗が早まるというデメリットがありました。
なので自分は頭出し機能はほとんど使ったことがありませんでした。
オーソドックスな機能群
それ以外の機能はごくオーソドックスなもの。
再生モードは「モノラル」「ステレオ」に加えて「ステレオワイド」が選択可能。
スピーカーの間隔が狭く臨場感の得にくいラジカセにあっては、ワイドモードは有難い機能でした。

テープセレクターはノーマルとクロムの2ポジション。ソニーが『Duad』テープによって普及を目論んでいたフェリクロムポジションはありません。
レコードプレーヤーをダイレクトに接続することができます。フォノイコライザー回路が入っているということですね。
音質調整は高音と低音の独立式。2ウェイスピーカー方式なので当たり前といえば当たり前ですが。
録音レベル調整はオートとマニュアルの切り替えが可能でした。
オートモードはレベル調整が不要なので便利なのですが、音楽の強弱を勝手にいじってしまうので、不自然に感じることがありました。

なので自分は音楽を録音する時にはマニュアルでレベル設定していました。
マイクミキシング機能も付いていますね。
不人気なのがねらい目
このモデルはあまり人気がないのか、オークションではかなり安値で流通しています。
たしかに、先代モデルに比べるとデザイン含めて進化してはいるのですが、これといった特徴に欠ける印象がぬぐえません。
性能と機能は他社製品から見劣りしませんので、安くステレオラジカセを入手したいならねらい目のモデルと言えるのではないでしょうか。
管理人のつぶやき
ネットオークションでの中古ラジカセの値段がつり上がっているのは本当です。状態が良いものなら当時の定価以上の値が付いたりすることも。
ラジカセに限りませんが、海外輸出目的の業者が参戦するとつり上がりますね。買い手からすると大迷惑です。
ただ一方で売り手になってみると高値で落札してくれるのはありがたい。発言が矛盾してますな。
なかには落札しても支払しないとか受取り連絡がないなど、マナーの良くない業者もいるのでプラットフォーマーはしっかり監視してほしいと思います。
そんななかでも、上にも書いたように本機のような不人気製品は業者もほとんど参入しないのでねらい目なのです。