東芝のBCLラジオ、トライXシリーズの入門機です。先代のRP-1600Fで初搭載したスプレッドダイヤルを踏襲しつつ、短波の受信帯域を拡張するなど改良が加えられています。
東芝 RP-1700F(トライX1700)とは

1976年に発売された東芝のBCLラジオ。上位機種にはRP-2000F(トライX2000)がありました。
東芝お得意のスプレッドダイヤル
BCLラジオでアナログ式の周波数直読モデルが主流だった時代、直読方式はメーカー各社によって特徴がありました。
BCLブームをけん引したソニーのスカイセンサー5900では、直読用のサブダイヤルを持った2ダイヤル方式を採用。迎え撃つナショナルはクーガ2200で「直ダイメカ」と命名された周波数直線バリコンを使った凝った仕組みを開発。ひとつのダイヤルながらどの周波数帯域でも等間隔の周波数目盛りによる直読を実現していました。
実は、業界に先駆けて周波数直読BCLラジオを開発したのは意外にも東芝で、RP-775F(サウンドナナハンGS)というモデルを1974年に発売していました。スカイセンサーと同様に専用のスプレッドダイヤルを持つ2ダイヤル方式でした。しかしながら、直読の手順が煩雑だったことが災いしてかヒットするには至りませんでした。
そこで捲土重来を期して登場した後継機がRP-1700Fの先代にあたるRP-1600F(トライX1600)。こちらはひとつのダイヤルで周波数直読を実現したものですが、メカニズム的にはなんら凝った仕掛けではなく、ダイヤルと同軸にスプレッド目盛りをセットしただけのものでした。

クーガ2200のような特殊なバリコンは使われていなかったため、高い周波数帯域にいくほどスプレッドダイヤルの目盛りの間隔が狭くなり、直読精度は悪化します。
また、ただでさえダイヤル目盛りが細かいうえにすべてのバンドを盛り込んだため、とても窮屈なダイヤルになってしまっています。お世辞にも使い勝手が良いとは言えません。
先代からの改良点
BCLのエントリーモデルとして手頃な価格が魅力だった先代のRP-1600Fですが、BCLラジオとしては物足りなさも否めませんでした。
そこでRP-1700Fでは以下の改良を加え、魅力度を大きくアップしました。
- 短波を2バンド構成とし、受信帯域を3.8MHz~28MHzへと拡大(RP-1600Fは3.8MHz~12MHz)
- 外部アンテナ端子を装備(RP-1600Fでは装備なし)
- マーカー校正用の穴をフロントパネルに配置(RP-1600Fでは裏蓋の内部)

謎のモールス符号練習機能
おそらくこの機能を搭載しているラジオは世界で本機だけではないかと思われる珍機能があります。それが「モールス符号練習スイッチ」。
「MORSE」スイッチをオンにすると、ダイヤルライトボタンがモールス練習ボタンとして機能します。「ツー・ト・ツーツー」などとモールス符号を打つ練習ができるというわけです。アマチュア無線ファンにアピールしようとしたのでしょうか。

しかし、この機能を搭載した意図はよくわかりません。あくまでBCL初心者向け製品なのですから、アマチュア無線用の機能を付加したとて、魅力度向上に役立ったとはとても思えないのです。
せっかくスイッチをひと割り当てるなら、ラウドネスだったり選択度切り替えなんかにしたらよかったのにと思います。
データ
- 発売:1976年(昭和51年)
- 定価:18,500円
- サイズ:W214 x H160 x D90(mm)
- 重量:1.4kg(電池含む)
カタログより


管理人のつぶやき
だいぶ辛口のコメントをしてしまって申し訳なかったです。ただ、スカイセンサーやクーガと比べてしまうと、どうしても「やっつけ製品」的な匂いが感じられてしまうんですよね。
BCLブームに乗らない手はない、ということで家電メーカー各社はこぞって参入したわけですが、開発予算が十分に割り当てられなかったメーカーもあったことでしょう。恐らく東芝もそうだったかと想像します。
そんななかで、安いコストでなんとか周波数直読を実現しようと工夫した結果があのスプレッドダイヤルなのかな、と思うとむしろ愛おしくすら感じられます。なんて、まったく勝手な想像で言ってますので、事実とは違っていたらゴメンなさい。