東芝 RP-775F – いち早く周波数直読を実現したBCLラジオ

BCLファンの憧れだった周波数直読機能をソニーのスカイセンサー5900よりも先に実現していた先進的なラジオです。

東芝 RP-775F(サウンドナナハンGS)とは

東芝RP775F
東芝 RP-775F

東芝初のBCLラジオ

東芝のBCLラジオといえば「トライエックス」シリーズが有名ですが、実はトライエックスに先立って展開されていた若者向けラジオの「サウンドナナハン」シリーズにラインアップされた「サウンドナハナンGS」こそが東芝の初代BCLラジオでした。

ちなみに「ナナハン」とは排気量750ccの大型バイクに由来するもので、ナナハンに跨るような尖った若者に向けたラジオ、という意味が込められていたのでしょう。

いち早く周波数直読を実現

サウンドナナハンには本機の兄弟機として「サウンドナナハンGTV」というモデルが先行発売されていました。デザインはそっくりでほとんど見分けがつきません。最大の特徴であるチューニングスケールとダイヤルがメインとサブの2セット搭載されているところも一緒でした。

「GTV」ではサブスケールとダイヤルをテレビ音声の受信用に使っていましたが、「GS」ではこれを短波受信用に転用した形となっています。バンドスプレッドダイヤルのハシリといえましょう。

RP775Fダイヤル
サブダイヤルは短波に使用

面倒な受信手順

受信手順はかなり面倒です。もちろん面倒と感じるか、操作感に溢れていて好ましいと感じるかは人それぞれかと思いますが、のちに東芝が出してくるトライエックスシリーズではずっとシンプルな受信手順になっていますので、ユーザーウケしなかったのではないかと思われます。

では受信手順をみてみましょう。周波数 9,750KHzの放送局を受信するとします。

1.バンド切替スイッチで目指すバンドを選択

ふたつのバンド切替スイッチを操作

目指す周波数はSW4の範囲に含まれるので、右のスイッチでSW[CAL]を、左のスイッチでSW4・5を選択します。

2.サブダイヤルでSW4のCALポイントに合わせる

SW4のCALポイントに合わせる

のちの操作でマーカーを使ったキャリブレーションを行うため、まずサブダイヤルで目指すバンドのCALポイントに合わせておきます。例ではSW4のCALポイントに合わせました。

3.マーカーをオンにする

CALスイッチでマーカーをオンにします

マーカーを作動させるため、CALスイッチをオンにします。

4.メインダイヤルでゼロビートをとる

メインダイヤルでSW4のマーカーを受信します

メインダイヤルを回し、SW4の[CAL]付近をスイープします。「ピー」というマーカーの発振音が聞こえてきたら慎重に操作し、ビート音が聞こえなくなる(ゼロビートといいます)よう調整します。これでSW4のキャリブレーションが完了しました。

5.マーカーをオフにする

CALスイッチはオフに戻します

キャリブレーションが完了してマーカーは用済みになったため、CALスイッチをオフにします。

6.サブダイヤルで選局する

サブダイヤルで目指す周波数に合わせる

ようやく選局です。サブダイヤルで狙った周波数に合わせます。例では9,750KHzにピタリと合わせることができました。周波数直読の威力が発揮されています。

というわけで、なんと6ステップもかかりました。慣れてしまえば大したことないかもしれませんが、最初は取説を見ながらでないとまず無理ではないかと思います。

ブームに乗り損ねたか

BCLブームの火をつけたと言われるソニーのスカイセンサー5800は1973年4月発売。RP-775Fの発売は1974年11月と、1年半も後発でしたからスカイセンサー5800キラーを狙えるポジションだったはずですが、そうはなりませんでした。

周波数直読という画期的機能を搭載しながら、アピールに失敗したのは短波の受信周波数が3.9MHz~12MHzというきわめて凡庸なスペックが一因だったのではないでしょうか。

ややこしい受信手順も足を引っ張ったかもしれません。

取説ではかなり詳しく短波受信について説明されていますが、「BCL」という表記は出てきません。BCLブームに乗る、という意識が薄かったのでしょうか。

RP775F取説
RP-775F取説

機能は豊富

様々な外部端子も含め、ラジオとしての機能は充実しているといえましょう。

トーンコントロールは高音・低音それぞれ独立して調節できます。メーターはマルチファンクション。ラジオにしては珍しくVUメーターとしても機能します。もちろんダイヤルライトも装備(前面)。

トップ操作パネル

BCL用に外部アンテナ端子を装備。微弱な電波のキャッチには必須の装備です。

外部アンテナ端子

豊富な外部端子群。マイクミキシングや外部スピーカー接続、FMステレオ放送を楽しむためのアダプター用出力がついています。マイク以外の外部入力用にAUX端子までついています。

豊富な外部端子

さらに、オプション販売されているタイマーを繋ぐこともできます。ただし、タイマー内蔵型のラジオも一般的だったのでコストダウンの意味があったかもしれません。

オプションのタイマーも接続可能

データ

  • 発売:1974年(昭和49年)
  • 定価:21,900円
  • サイズ:W186 x H230 x D95(mm)
  • 重量:1.8kg(電池含む)

カタログより

トライエックス1700/2000を大々的にフィーチャーした総合カタログより。カタログ落ちして不思議ありませんが、まだ在庫があったんでしょうか。

1976年版のラジオ総合カタログより

管理人のつぶやき

BCLラジオに関しては、東芝は残念ながら第3勢力で終わってしまった感があります。

サウンドナナハンの失敗を取り戻すべく、翌1975年にはひとつのダイヤルで周波数直読を可能にした「トライエックス1600(RP-1600F)を発売しますが、これも受信周波数はただの3バンドラジオと同じだったのと、外部アンテナ端子を廃止してしまうという愚を犯していました。

ようやくソニーやナショナルと戦えるBCLラジオとしてトライエックス1700/2000を出したのが1976年のこと。すでにスカイセンサー5900とクーガ2200に市場は席捲されていたので、時すでに遅しでしたね。

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