機動性に優れたラジカセは、屋内にととまらず屋外に持ち出す楽しみ方を生み出しました。そんな使い方の一つが生録。アクタス2800は生録ファンをターゲットにした尖った魅力のラジカセでした。
東芝 RT-2800(アクタス2800)とは
『アクタス・パラボラ』の愛称どおり、パラボラ集音器が装着可能で生録ファンのあいだで人気を呼んだ東芝のモノラルラジカセです。
生録とはラジカセを外に持ち出して、たとえばSLの走る音や野鳥の鳴き声、あるいは屋外コンサートなどを収録して楽しむこと。生な音を録音するから「生録」なのですね。ラジオやレコードの音楽を録音して聴くのとはまた違った、ラジカセならではのアクティブな楽しみ方でした。

巨大なパラボラが屹立
見た目のインパクトも大きい、立派なパラボラ集音器。いたってシンプルな構造ですが、「PARABOLA REFLECTOR」などと書かれていると何やら高度な技術が使われていそうに思われます。

パラボラ集音器を装着した状態です。パラボラがいかに大きいかがわかりますね。マイクをパラボラの後ろ側に取り付けて、パラボラの集音効果により効率的に音を拾うことができます。また、ラジカセの操作音などの周辺ノイズを拾いにくくなるというメリットもありました。

細部にこだわったデザイン
本体上面には、パラボラの指向性をあらわす図や英語でパラボラの効能が印刷されています。実用的な意味はほとんどないと思われますが、こうした小さな工夫が製品の魅力を高めるわけですね。

マイクは本体右側に収納。単に収納するホルダーではなく、前方向に倒すことができる仕組みになっています。マイクにはFMトランスミッター機能がついています。

ラジオのチューニングスケールとシグナルメーター、ダイヤル周辺をアルミのパーツで囲っています。ダイヤルに刻まれた溝は滑り止め効果を狙ったものですが、メカニカルな印象を与えることにも成功ししています。
その横には縦方向に三連のレバー式スイッチを配置。レバー式スイッチはどのポジションに設定されているのかが一目瞭然ですし、操作感が心地よく、プッシュ式やスライド式よりも好ましいです。
凝ったデザインのスピーカーグリル
スピーカーグリルは直径の異なる2種類の円と放射状のスリットを組み合わせた凝ったもの。右側には大きめのボリュームがタテに4連。
ラジオはFM、MW、SWの3バンド。海外短波放送を楽しむBCLにも使えるようになっています。
メカニカルでアクティブなイメージのデザインが生録少年のハートをガッチリ掴みました。

データ
- モデル名:RT-2800
- 発売:1976年(昭和51年)
- 定価:43,800円
- サイズ:W 418 x H 251 x D 112 (mm)
- 重量:5.1kg(電池含む)
管理人のつぶやき
自分は生録にはあまり関心がなかったので、本機がラジカセ購入の選択肢に入ることはありませんでした。
ただ、このデザインは一目置くところがあり、しっかりと記憶に残っています。メカっぽいところは、初めて購入したラジオのクーガ No.7に相通じるものを感じます。
今どきの少年たちはどうかわかりませんが、当時の少年はメカっぽさとかミリタリーなど、「男っぽい」イメージへの憧れがあったように思います。ある意味、昭和らしさを象徴しているラジカセとも言えるでしょうか。