アクション俳優の千葉真一に「足のいいやつ」と言わせたCMが記憶に残る昭和世代も多いはず。スポーツ感覚あふれる足回りとエンジンで、大人しいファミリーカーに飽き足らないクルマ好きから隠れた人気を博しました。
カリーナ(初代)とは
セリカとシャシーを共有
カローラとクラウンの間を埋める中間車種としてスタートしたコロナとほぼ同じサイズで、2ドアと4ドアのセダンでデビューした初代カリーナ。シャシーはセリカと共用しており、セリカがモデルチェンジするのとほぼ同時にカリーナも進化していきました。
初代セリカが「ダルマセリカ」と称されるようにやや丸みを帯びたボディラインなのに対し、カリーナは直線基調のシャープなラインが美しいセミファストバックボディで、2ドア/4ドアセダンからデビュー。のちに2ドアハードトップと5ドアバンが加わります。
ホットバージョンのGT
ホットバージョンである1600GTはセリカ1600GTと同じ2T-G型1600DOHCエンジンを搭載。最高出力は115馬力を誇りました。三国製の2連ソレックスキャブレターによる迫力ある吸気音と相まって熱い走りへと誘うエンジンでした。
足回りにはマクファーソンストラットとラテラルロッド付きの4リンク・コイルのサスペンションを採用。キャッチコピーの「足のいい奴」に恥じない運動性能を誇りました。
このエンジンと足回りの組み合わせは実に快活かつ豪快な走りを見せ、当時1.6リットル級ではトップクラスの高性能車として注目を集めました。
長いモデルライフ
日本車のモデルサイクルは2年目にマイナーチェンジしてトータル4年というところが多いのですが、初代カリーナは7年という異例に長いモデルライフをまっとう。これは兄弟車のセリカも一緒です。
ただし、初代カリーナのマイナーチェンジはなんと3回も記録されています。1回目はデビュー2年後の1972年。内外装の意匠変更にとどまる文字通りのマイナーチェンジですが、2ドアハードトップが追加されました。
2回目のマイナーチェンジは1974年。この時にはフロントグリルのデザイン変更にとどまらず、エンジンラインアップに1.4Lと2.0Lが加わります。2.0L DOHCエンジンを搭載した2000GTのマニュアルトランスミッションには「ポルシェシンクロ」が奢られました。
ちなみに「ポルシェシンクロ」とはポルシェが開発したトランスミッションのシンクロ方式で、サーボ(倍力装置)によってシフトチェンジ時に軽い操作力でギアの同期動作が行われる機構で、その操作感覚は「蜂蜜をスプーンで掻きまわす」「バターを熱いナイフで切る」などと表現される優れたものでした。
そして3回目のマイナーチェンジは1975年ですが、これは昭和50年排出ガス規制に適合させるためのもので、この時にはエンジンラインアップの見直しに加えてボディサイズを拡大するといういわば「ビッグマイナーチェンジ」が実施されています。
データ
- 販売期間:1970年(昭和45年)~1977年(昭和52年)
- エンジン:1.4, 1.6, 1.8, 2.0L 直列4気筒
- ホイールベース:2,425mm(BM前)、2,495mm(BM後)
- 全長:4,135mm(BM前)、4,270mm(BM後)
- 全幅:1,570mm(BM前)、1,630mm(BM後)
- 全高:1,385mm
- 重量:930Kg
管理人のつぶやき
家族持ちのクルマ好きにとって、スポーティーなセダンというのは恰好の選択肢でしょう。
やはりドアが4枚というのはファミリーカーにとっては必要条件。エンジンにはパワーやスポーティーな回転フィールを求めたいし、足回りもフカフカでは物足りません。今さらセリカは買えないけど、かといってコロナじゃなぁ、というわけです。
あの千葉ちゃんが推す初代カリーナはそんな悩みに一発回答。同じコンポーネントを使ったセリカより割安だったことも隠れた人気を呼んだ一因でありましょう。さすが商売上手のトヨタですね。