ヴァン・ヘイレン – 天才ギタリストが拓いたハードロックの新境地

1970年代後半のロック界に、まるで彗星のように現れたバンドがヴァン・ヘイレンです。派手なギター、明るくノリの良い楽曲、そしてエンターテインメント性あふれるステージで人気を集め、1980年代を代表するロックバンドのひとつとなりました。

ヴァン・ヘイレン/Van Halenとは

6枚目のスタジオアルバム『1984』
6枚目のスタジオアルバム『1984』

ヴァン・ヘイレン兄弟のバンド

ヴァン・ヘイレンは、ギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレンとドラマーのアレックス・ヴァン・ヘイレンの兄弟を中心に結成されました。そこにボーカルのデイヴィッド・リー・ロス、ベーシストのマイケル・アンソニーが加わり、黄金メンバーが完成します。

当時のハードロックというと、どちらかといえば重厚でシリアスなイメージを持つバンドが多かったのですが、ヴァン・ヘイレンは違いました。もちろん演奏はハードですが、どこか陽気で開放的なのです。カリフォルニアの青空が似合うような明るさがあり、それが多くのファンを引きつけました。

衝撃のデビューアルバム

1978年に発表されたデビューアルバム『炎の導火線(Van Halen)』は、今でもロックの名盤として語り継がれています。

「Runnin’ with the Devil」や「Ain’t Talkin’ ‘Bout Love」など名曲ぞろいですが、特に話題になったのが「Eruption」という短いギターソロ曲でした。

初めて聴いた人の多くが、「いったい何をやっているんだ?」と思ったそうです。それまでのロックギターではあまり聴かれなかったような超絶技巧が次々と飛び出し、世界中のギタリストが衝撃を受けました。

当時はインターネットも動画サイトもありません。レコードを何度も聴き返しながら、「どうやって弾いているんだろう」と耳で研究した人も少なくなかったそうです。

このアルバム一枚で、エドワードは一躍ギターヒーローとなりました。

カヴァー曲にも光るセンス

ヴァン・ヘイレンはオリジナル曲の評価が高いバンドですが、実はカバー曲の選び方とアレンジのうまさでも知られています。

デビューアルバムには、1960年代のグループ、The Kinksの「You Really Got Me」が収録されていました。もともと荒々しいロックナンバーでしたが、ヴァン・ヘイレン版ではさらにエネルギッシュな演奏に生まれ変わり、大ヒットを記録します。

当時の若いファンの中には、この曲がカバーだと知らずに聴いていた人も少なくなかったそうです。それほどまでに彼らの個性が強く反映されていました。

1982年のアルバム『Diver Down』ではカバー曲がさらに目立つようになります。なかでも有名なのが「(Oh) Pretty Woman」です。原曲はRoy Orbisonによる1964年の大ヒット曲ですが、ヴァン・ヘイレンは豪快なギターサウンドとデイヴィッド・リー・ロスの奔放なボーカルによって、まったく違う魅力を持つロックナンバーへと変貌させました。ミュージックビデオも大きな話題となり、MTV時代の到来を象徴する作品のひとつとなっています。

さらに同じ『Diver Down』には、Martha and the Vandellasの「Dancing in the Street」や、ジャズクラリネット奏者 Jimmy Dorseyゆかりのスタンダード曲「Big Bad Bill (Is Sweet William Now)」なども収録されていました。

ロックだけでなくポップスやオールディーズまで取り込んでしまう懐の深さは、ヴァン・ヘイレンの大きな特徴だったと思います。

エドワードはなぜ特別だったのか

エドワード・ヴァン・ヘイレンは、よく「史上最高のギタリストのひとり」と紹介されます。

もちろん演奏技術は驚異的でした。しかし、それだけなら他にも上手いギタリストはいます。エドワードのすごさは、技術をひけらかすのではなく、楽しそうに弾くところにあったと思います。難しいフレーズを弾いているのに、聴いている側にはそれが自然に感じられるのです。さらに独特のサウンドも魅力でした。

彼は市販のギターやアンプをそのまま使うのではなく、自分で改造を重ねて理想の音を追求しました。その結果生まれたのが、赤・白・黒のストライプ模様で有名な「フランケンシュタイン」というギターです。今ではロック史に残る名器として知られています。

デイヴィッド・リー・ロスという名フロントマン

初期のヴァン・ヘイレンを語るうえで忘れてはいけないのが、ボーカルのデイヴィッド・リー・ロスです。

歌唱力だけでいえば、後任のサミー・ヘイガーの方が上だという意見もあります。しかし、ステージ上での存在感は圧倒的でした。飛んだり跳ねたり、客席をあおったり、とにかく見ていて楽しいのです。少しお調子者のような雰囲気もありましたが、それがバンドの魅力につながっていました。

エドワードが超人的なギタリストなら、ロスはショーマンでした。この組み合わせが絶妙だったのです。

『1984』と「Jump」の大ヒット

ヴァン・ヘイレンの代表作として真っ先に名前が挙がるのが、1984年発売のアルバム『1984』でしょう。このアルバムには、彼ら最大のヒット曲「Jump」が収録されています。

特徴的なのは、ギターではなくシンセサイザーが前面に出ていることです。当時は「ヴァン・ヘイレンなのにキーボード中心なの?」と驚いたファンもいたそうですが、結果的には大成功でした。

「Jump」は世界中で大ヒットし、今でもスポーツイベントやテレビ番組などで耳にする機会があります。

また、「Panama」や「Hot for Teacher」なども収録されており、まさに全盛期を象徴する一枚となりました。

ところが、その翌年にデイヴィッド・リー・ロスが脱退してしまいます。人気絶頂での脱退だったため、多くのファンが驚きました。

サミー・ヘイガー時代も人気は続く

後任として加入したのがサミー・ヘイガーです。

当時すでに実力派シンガーとして知られており、「後任としては申し分ない」という声もありましたが、やはりロスの個性が強烈だっただけに不安視するファンもいました。

ところが1986年のアルバム『5150』は大ヒットを記録します。「Dreams」や「Why Can’t This Be Love」などの名曲が生まれ、バンドは見事に新しい時代へ進みました。

ロス時代が豪快でパーティー感覚のロックなら、ヘイガー時代は少し大人びたメロディアスなロックという印象です。

どちらにも魅力があり、ファンの間では「ロス派」と「ヘイガー派」が拮抗しているようです。

色褪せない魅力

ヴァン・ヘイレンの音楽を久しぶりに聴くと、まず感じるのは楽しさです。もちろん演奏は超一流ですが、どこか肩の力が抜けています。難しいことをやっているのに、それを感じさせません。

実際、1980年代のハードロックやヘヴィメタルで活躍した多くのギタリストがエドワードの影響を受けています。しかし、真似はできても、あの独特の楽しそうな雰囲気までは再現できなかったと言われます。

2020年、エドワード・ヴァン・ヘイレンが亡くなったとき、世界中のミュージシャンが追悼のメッセージを発表しました。それだけ彼の存在は大きかったのです。

ロックの歴史には数多くの名バンドがありますが、「ロックってこんなに楽しいんだ」と改めて感じさせてくれるバンドは意外と多くありません。その意味で、ヴァン・ヘイレンはとても特別な存在だったのではないでしょうか。

初めて聴くなら、「Jump」や「Panama」、そして衝撃のギターソロ「Eruption」がおすすめです。きっと今聴いても、「これはすごいな」と思わず唸ってしまうはずです。

管理人のつぶやき

サミー・ヘイガーによる熱い正統派ロックな楽曲も大好きなんですが、個人的にはどちらかと言えば「ロス派」です。あのワルっぽさとコミカルさはバンドのキャラづくりに欠かせなかったように思います。

MVでエディがニコニコしながら超絶技巧で弾きまくる姿は、はっちゃけたロスの存在があってこそ引き立ったんじゃないかと。ロス時代のMVはどれも最高のエンタメだと思います。

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