蓄音機に耳を傾ける犬のロゴでおなじみだったビクターのステレオラジカセです。
個人的にはまだメーターがアナログ式でメタルテープに対応する前の70年代後半のラジカセがいちばん好きです。このモデルも自分の好みのど真ん中ストライク。当時のとあるオーディオ誌が組んだラジカセ特集では、音質面での評価においては本機が特に高かったです。
目次
ビクター RC-828とは

最大のウリはバイホニック
本機の最大のアピールポイントは、特殊な音場補正によって通常のステレオ以上の臨場感ある再生をスピーカーで実現したバイボニック回路を搭載していること。

そもそもバイホニックとはビクターの造語で、元は「バイノーラル」です。
バイノーラルとは、ハウジング部にマイクを組みこんだ特殊なヘッドホンを使って録音をしたソースをヘッドホンで再生することによって、録音時とまったく同じ臨場感を再現するというもの。つまり、バイノーラル仕様で収録されたソースをヘッドホンで聴くというごく限られたシーンでしか味わえないというわけです。
本機ではビクターが独自開発したバイホニック回路によって、スピーカーでもバイノーラル効果を再現しているところがミソです。

使い方は結構ややこしく、音源が通常ステレオなのかバイノーラルなのか、そして再生がスピーカーなのかヘッドホンなのか、によって2系統あるモードスイッチのポジションの組み合わせを選択する必要があります。直感的にはわかりづらく、慣れが必要です。

ビクターもそう思ったのでしょう。ボディサイドにモードスイッチの使い方を説明したパネルが張ってあります。これは親切ですね。
ちなみに、FM放送やミュージックテープなど普通のステレオ音源をバイホニックモードで再生すると、他社のラジカセで一般的にみられる「ステレオワイド」と同様の聴こえ方になります。
70年代ラジカセらしいデザインに素晴らしいサウンド
ツイーターは5cm口径。メタルメッシュのグリルにアルミフレーム風の飾りがついています。

ウーハーは16cm口径。ラジカセにしては伸びのある艶やかな高音を再生します。
グリルは手の込んだデザインのプラスチック製。ウーハーのグリルはフロントパネルで最大の面積を占めるので、デザインの良しあしが印象を大きく左右します。

ウーハーのグリルは立体的な幾何学模様と言ったら良いでしょうか。単なる丸穴やスリットの連続ではなく、ちょっと複雑な造形をしています。光の当たり具合によって表情を変えるところがなかなか良いです。
音ヌケの良いメタルメッシュのグリルも悪くありませんが、どのモデルも似た印象になってしまうところが少し残念です。もちろんメタルメッシュがよく似合うラジカセもあるにはあるのですが。
ガードがカッコいいカセット操作部
カセットホルダーは正立式です。カセットのラベルが読みやすく、ヘッドやピンチローラーのクリーニングもしやすいです。
モノラルラジカセや初期のステレオラジカセでは、テープデッキの操作ボタンがパネル上部についていたことからヘッドやピンチローラーなど操作に伴って動く部品を本体上側に持ってこざるを得ず、そのためテープを上下さかさまに入れる必要がありました。

操作レバーの下にはガードバーがついています。運搬時や転倒時に操作レバーを保護することを意図したのでしょうか。デザイン上のスパイスにもなっています。
統一感のあるトップパネルデザイン
スライド式ボリュームに合わせた統一感のあるデザインです。等間隔で同じ長さの溝が切ってあるところがデザイン上の特徴的です。



データ
- モデル名:RC-828
- 発売:1977年(昭和52年)
- 定価:66,800円
- サイズ:W 470mm x H 273mm x D 127mm
- 重量:6.4kg(電池含む)
カタログより


管理人のつぶやき
なぜかビクターの製品とは縁がなく、初めて手にしたのがこのラジカセです。オークションで入手した中古品です。入手したきっかけはこの雑誌の特集記事。

11機種ものステレオラジカセを集めてフィールドテストする、という企画で、なんとオーディオ評論家として現在でもご活躍中の福田雅光さんもテスターだったのです。
11機種のなかで音質についての評価が特に高かったのがビクターRC-828でした。

半世紀近く前の製品が現在でも性能を維持しているワケもありませんが、入手した個体から流れるサウンドには高評価を納得されるものがありました。
ラジカセにありがちな、プラスチック筐体による箱鳴りが少なく、ナチュラルでクリアーな音質。低音の迫力では同世代のラジカセで一頭地を抜くサンヨーのMR9600にはかないませんが、中高音とのバランスが良いため低音不足の感じがありません。
ビクター、良いですね!