語学学習のLL用をうたったラジカセですが、その実は後追い録音機能を活かして多彩なミキシングが楽しめるプレイ派向けラジカセでした。英語の勉強のため、という口実で親の財布を緩めるソニーの作戦だったのでしょうか。
目次
ソニー CF-1775(Studio1775)とは

LLとは
モデル名の上部に輝く「LL」のバッジ。これがCF-1775の表向きの(親向けの)顔です。

LLとはLanguage Laboratoryの略で、昭和50年代に全国の中学~高校を中心に普及した語学(おもに英語)学習のために一人ひとりの机にカセットテープレコーダーがセットされた教室で、別名「視聴覚教室」のこと。語学の学習と言っても文法ではなく、リスニングとスピーキングを磨くのが主な目的でした。そのためにテープレコーダーを活用しよう、というアイデアです。
CF-1775は家にいながらにしてLL教室のように英語が勉強できることをアピールしたラジカセですが、これは子どもが親に買ってもらうための口実であったことはカタログを見ると明らかです。
後追い録音機能がカギ
CF-1775の最大のウリは後追い録音機能を搭載していること。アフターなレコーディングなので、アフレコとも言いますね。
後追い録音とは何かというと、録音済みのテープに後から別の音を追加録音できる機能です。上書きではなく追加、というところがミソです。
語学学習の場合、先生のスピーチをまず録音しておき、次に先生をまねた自分の声で後追い録音。こうすることで、先生と自分のスピーチが同時に比較でき、どこがズレているのか確認できる、といったものが使い方のイメージです。
後追い録音機能を実現するには、テープのトラックを分割して録音再生できることが必要。通常のモノラルラジカセの録再ヘッドでは片面1トラックなのですが、CF-1775では片面2トラックに対応したヘッドを採用しています。つまりステレオ用の2トラック4チャンネル録再ヘッドと構造は同じなのです。ステレオ用では2トラックを左右それぞれのチャンネルに割り当てますが、CF-1775では元の音源を2トラック両方に記録し、後追い録音の際にはそのうちの片方のトラックに上書き録音することで、ふたつの音源が同時に録音できるようになっています。
プレイラジカセとしてアピール
後追い録音機能は語学学習だけではもったいない。ソニーもそんなことは百も承知で、実際には多重録音とミキシング機能を組合わせたさまざまな使い方を提案していました。カタログを見ると、語学学習はほんのわき役で、完全にプレイラジカセとしてアピールしています。

このカタログ、英語勉強のためと言って買ってもらったなら親にはちょっと見せられませんよね(笑)。
再生スピードコントロールとバランスボリューム
語学学習にもプレイにも役立つ機能として、再生スピードコントロールとバランスボリュームが付いています。

再生スピードコントロールは、再生時のテープの走行スピードを最大60%アップ~30%ダウンと広範囲で調整できるもの。語学学習では、先生や教材のスピーキングが早すぎて聞き取れないという時にスローダウンさせることができますし、カラオケでは自分にあったピッチで伴奏させたり歌手とデュエットできたりという使い方ができます。
通常ステレオラジカセでしか見られないバランスボリュームがついているのは後追い録音ができるCF-1775ならでは。元の音源とアフター録音の再生ボリュームを調整することができます。TEACHERとSTUDENTという表記がいかにもLL向けです。
スタジオシリーズの一員
ソニーのスタジオシリーズラジカセと言えば、有名なのがスタジオ1980ですね。音創りの楽しみを提案し、スタイリッシュなデザインや高音質とあいまって大ヒットした名機です。
CF-1775はLLバッジが示すごとく、いかにも教材といった雰囲気漂う無骨なデザイン。しかし、その中身はスタジオ1980にも負けないぐらい音を操る機能を満載したプレイラジカセ。立派にスタジオシリーズの一員なのです。

データ
- モデル名:CF-1775(Studio1775)
- 発売:1975年(昭和50年)
- 定価:43,800円
- サイズ:W359 x H231 x D118mm
- 重量:4.0kg(電池含む)
カタログより



管理人のつぶやき
カタログの訴求が効いたのか、それとも感度の高い若者が見抜いたのか定かではありませんが、このラジカセはやっぱり多重録音とミキシングで遊ぶために使われていたと思われます。まじめに英語を勉強したユーザーは少数派ではなかったかと推察します。
それにしても、LLを打ち出したところはいかにもマーケティングに長けたソニーらしいと感じます。ターゲットユーザーの中高生にとっては高額な商品ですから、当然ながら親の財布をあてにすることはソニーもわかっていたでしょう。ならば、親におねだりする口実を与えてあげれば売れるんじゃないか、そんなふうにマーケティング担当者が考えたとしても不思議ではありません。
ただ、一方でソニーはファウンダーの井深大さんが教育に高い関心を持っていたことや、LLシステムの販売にも力を入れていたことを考えると、商品企画者としては本気でLL用ラジカセを狙った可能性もあり得ます。LL訴求だけでは台数が稼げないので、マーケティング担当者がプレイ機能アピール作戦を主張して商品企画を説き伏せたのか。真相やいかに。機会があれば商品企画担当者に話を聞いてみたいものです。


