70年代から80年代にかけて若者の必需品として売れまくったラジカセ。70年代後半からステレオタイプが主流になっていきますが、モノラルラジカセならではの味わいにも捨てがたいものがあります。
ソニー CF-1980(スタジオ1980)とは
名機スタジオ1980の初代モデル
ラジカセの使い方といったら、当然のことながらラジオやテレビなどの音源からテープに録音し、繰り返し再生して楽しむことが基本でした。
そこに、複数の音源をミックスして「自分で音楽をつくる」楽しみ方を提案したのがソニーのスタジオ・シリーズです。
「スタジオ」の由来はまさに「レコーディングスタジオ」。レコードの制作現場をイメージさせるネーミングは新しい楽しみ方を印象付けるにはうってつけ。素晴らしいアイデアでした。
このCF-1980はスタジオ・シリーズの初代モデルです。
音楽づくりに関心のある若者の支持を獲得すると、特にミキシングに興味のない層にまで人気が波及。モノラル・ラジカセ市場で確固たるポジションを築きました。
後継機としてマークⅡとマーク5が誕生しました。
マークⅡのあとⅢとⅣは存在せず、いきなり5に飛ぶのですが、マーク5は出力が5Wだったから、という説が有力です。ちなみにマークVではなくマーク5と表記します。
音創りの機能を装備
本機最大の特徴となるのがミキシング機能です。
ミキシングとは複数の音源の音をミックスして再生や録音をすること。
使える音源はラジオ、カセットテープ、ライン入力。そして外部マイク用の専用ジャックと入力ボリュームを備えていました。
ミキシング機能は「音を創る」という楽しみ方を新たにラジカセに加えたもので、本機からミュージシャンの卵が産まれたこともあったのでしょう。
音質へのこだわり
ミキシング以外の機能としては、テープセレクター。
普段使い用のノーマルテープとここぞの高音質録音用にクロームテープポジションが選べました。
小音量再生時に低音と高音を増強して音に厚みを加えるラウドネススイッチもついていました。
トーンコントロールは高音と低音が独立しているタイプで、好みにあわせて音質を調整できました。
スピーカーは16cmウーハーに5cmツイーターの2ウェイ。高音質を意識したラジカセでは16cmウーハーとツイーターの組み合わせが定番のようになりますが、それも間もなく他社を出し抜こうとウーハーの大口径化が進み、18cmから20cmを経て最大25cmのものまで登場しました。
しかし、サイズや全体のデザインバランスからは16cmウーハーが最適解だったように思います。
ラジオはFMとAMの2バンド。後継機のマークⅡでは短波も加わって3バンドになりました。折からのBCLブームを意識したのでしょう。
ラジカセの黄金比
落ち着いた黒とグレーのツートーン。より完成度を高めたマークⅡがモノラルラジカセの最高傑作との呼び声高いですが、初代のシックなデザインもなかなかのものです。
あらゆる角度から眺めてもスキのないデザイン。SONYロゴの位置もここしかない、といった決まり方をしています。まさにラジカセの黄金比と言えましょう。
ダイヤルスケールの左にある黄色いボタンはライトスイッチです。これがさし色となってアクセントを加えています。細部にも気配りしたデザインセンスを感じますね。
データ
- モデル名:CF-1980
- 発売:1974年(昭和49年)
- 定価:42,800円
- サイズ:W 376mm x H 245.5mm x 106mm
- 重量:5.0kg(電池含む)
カタログより
管理人のつぶやき
このラジカセ、中学校の音楽教室に置いてありました。合唱を録音したりしてましたね。学校の備品だったわけです。
中学校といわず、学校というところにはオーディオ・ビジュアル製品は必需品でした。授業や校内放送で使うからですね。英語の授業では、LLシステムなんていう大がかりなものもありました。今ではどうなんでしょうか?
そんなわけで、AV製品のメーカーは教育機関向けの営業部隊を持っていたはずです。スタジオ1980もおそらくソニーの教育機関向け営業部隊が代理店におろしたものではないかと想像します。学校の先生が電気屋さんで買ったのではなかったんでしょうね。