バリー・グドロー – ボストンを創造したもうひとりの男

奇才トム・ショルツのワンマンプロジェクトとも言われるロックバンド「ボストン」。1970年代後半のロックシーンに衝撃を与えたバンドのひとつと言えるでしょう。バリー・グドローはギタリストとしてボストンに参加した初期メンバーで、のちにソロ活動や新バンド結成へと踏み出しました。

バリー・グドロー/Barry Goudreauとは

バリー・グドロー
ソロアルバム『Barry Goudreau』(邦題『ボストン・ホライゾン』)

ロックの歴史には、表舞台で脚光を浴びるスターのほかに、音の厚みを支えた職人タイプのギタリストが少なからずいます。バリー・グドロー(Barry Goudreau)もそんな一人です。
「Boston」のあの重層的なギター・サウンドを形づくった立役者の一人が、バリー・グドローなのです。

ボストン生まれのロック少年

1951年、アメリカ・マサチューセッツ州ボストンに生まれたグドローは、幼いころからラジオでロックやブルースを聴き、ギターに夢中になった少年でした。
11歳でアコースティック・ギターを手にし、13歳で最初のバンドに参加。15歳のころには、のちにボストンで再び組むことになるドラマー、シブ・ハシアンとすでに同じバンドで演奏していたそうです。

大学では地質学を専攻していましたが、音楽への情熱は冷めず、学生バンドで活動を続けていました。そのころ出会ったのが、MIT出身のエンジニア兼ミュージシャン、トム・ショルツ(Tom Scholz)です。この出会いがのちに「Boston」結成へとつながっていきます。

“完璧主義の天才”と“情熱のギタリスト”

1970年代半ば、グドローとショルツ、そしてヴォーカルのブラッド・デルプ(Brad Delp)らが中心となって、「Mother’s Milk」というバンドを結成します。これがのちに「Boston」として知られることになります。

ショルツは録音機材を自作するほどの完璧主義者でした。一方で、グドローはステージでのグルーヴやプレイヤーとしての感覚を重視するタイプです。二人の個性がうまくかみ合い、1976年にリリースされたデビュー・アルバム『Boston』は全米を席巻しました。

『More Than a Feeling』『Peace of Mind』『Foreplay/Long Time』――どの曲をとっても、今もなお聴き継がれるロックの名曲ばかりです。世界で1,700万枚を超えるセールスを記録したこのアルバムで、グドローはリードとリズムの両面で重要な役割を果たしました。

輝きの裏で生まれたすれ違い

しかし、成功の裏では少しずつ亀裂も生まれていきます。ショルツの完璧主義的な制作スタイルが強まるにつれ、グドローのギターが再録音されたり、最終的にミックスから外されたりする場面も増えていきました。
「もっと自分の音を出したい」という想いが募る一方で、バンド内での存在感は次第に薄れていったのです。

1978年の2枚目のアルバム『Don’t Look Back』では、彼の関与がさらに減少しました。グドロー自身も後に「1枚目より関われる部分が少なくて残念だった」と語っています。

ソロで見せた“もうひとつのボストン”

1980年、グドローはついに自身の名を冠したソロ・アルバム『Barry Goudreau』を発表します。
ここには、ボストンの仲間だったブラッド・デルプやシブ・ハシアンが再び参加しており、サウンドはまさに“もうひとつのボストン”とも言えるものでした。キャッチーなメロディと分厚いギター、そして温かみのあるトーンが印象的で、自由に音を鳴らす喜びが感じられます。

しかし、このソロ作をめぐってトム・ショルツとの関係は悪化します。レーベルが「ミリオンセラー・ギタリスト」と宣伝したことをショルツが快く思わず、二人の溝は決定的になりました。グドローはボストンを離れ、新たな道を歩み始めます。

オリオン・ザ・ハンター、RTZ、そして現在

1984年、グドローは「Orion the Hunter」を結成し、再びデルプをヴォーカルに迎えます。80年代らしいアリーナ・ロックのサウンドで人気を集めました。
1990年代には「RTZ(Return to Zero)」を立ち上げ、再びボストンの仲間と活動。メロディック・ロックとして高い評価を受けました。

2000年代にはブルース・ロック寄りの「Ernie and the Automatics」で活動し、2017年には新たなプロジェクト「Barry Goudreau’s Engine Room」を始動。2021年にはアルバム『The Road』をリリースしています。

グドロー・サウンドの魅力

グドローのギターは、派手なテクニックというよりも、音の厚みと温かさが魅力です。コードワークやリードのフレーズには“バンド全体を包み込む安心感”があり、ボストンの立体的なギター・サウンドを支えたのは彼の存在でもありました。

本人も「ボストン時代があったから今の自分がある」と語っています。
大きな成功の光と影を両方受け止めながら、自分のペースで音楽を続けてきた姿勢には、誠実なロック魂を感じます。

ロックの物語では、どうしても“カリスマひとり”に光が当たりがちですが、グドローのキャリアは違う角度からその構図を見せてくれます。

彼がいなければ、ボストンの音はあれほど豊かで立体的にはならなかったでしょう。彼が作ったソロ作品やRTZのサウンドには、もうひとつのボストンが息づいています。

管理人のつぶやき

ボストンのアルバムは、個人的には1枚目の『Boston(幻想飛行)』と次の『Don’t Look Back』が突出していて、3枚目の『Third Stage』以降はちょっとサウンドが大袈裟というか凝りすぎになり過ぎてしまったかなぁ、と思っています。もちろんどれも好きですが。

で、バリー・グドローの参画が2枚目までだった、というのはまさにボストン・サウンドの変化とと符合する事実。トム・ショルツの影に隠れてはいたけれど、バリー・グドローの存在はボストンにとって欠かせないものだったんじゃないでしょうか。

ところでバリーのソロアルバムのタイトル、原題では『Barry Goudreau』ですが邦題は『ボストン・ホライゾン』。ボストンの名を借りなかったら「バリー・グドローって誰?」ってなったでしょうが、バリーからすればちょっと悔しかったかもしれませんね。

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