ラジオ用の高周波コイル製造を祖業とするオーディオメーカーのケンウッド(旧トリオ)が持てる技術のすべてを投入したFM専用チューナー。電波の介在を意識させないリアルなサウンドは圧巻。史上最強のチューナーと呼んでも過言ではありません。
ケンウッド L-02Tとは

チューナーならトリオ/ケンウッド
オーディオコンポーネントにはアンプ、スピーカー、チューナーなどいくつかのカテゴリーがありますが、それぞれにリーダー的存在と目されるメーカーがありました。
アンプならサンスイ、スピーカーならダイヤトーン、ターンテーブルならテクニクス、カセットデッキならナカミチ、といった具合に。もちろん評価はひとにより、また時代によっても変わるのですが、ことチューナーに関しては一貫してトリオ/ケンウッドなら間違いない、という評価が確立していました。
オーディオ信号(数ヘルツ~数十キロヘルツ)より遥かに高い周波数(数十メガヘルツ以上)となる高周波を扱う技術においては、高周波コイルメーカーから出発して無線機メーカーでもあったトリオ/ケンウッドに一日の長があったことはその背景のひとつといえましょう。
デジタルに比肩する性能を目指す
L-02Tが発売された1981年はデジタルオーディオの嚆矢となるCD(コンパクトディスク)登場前夜。アナログに比べてS/N比、歪率、ダイナミックレンジが飛躍的に向上する時代がやってくる、と喧伝されていました。
そんななか、アナログコンポーネントであるFMチューナーの性能を、デジタルに比肩するほどの高みに引き上げることを目指してトリオの技術陣が本機のために開発したふたつのテクノロジー。それが「ノン・スペクトラムIFシステム」と「ノン・ステップ・サンプリングホールドMPX」でした。
これらの技術により、歪率は従来製品よりひと桁も優れた0.003%(IF部)を達成。S/N比もステレオで88dB、モノラルなら98dBと、電波環境さえ良ければあたかも放送局と直結した、と言えるほどの受信性能を実現したのです。

オーディオ性能も一級品
受信機としての性能向上だけでは音の良いチューナーは生まれません。当然ながらオーディオ信号に対する入念な配慮が求められます。
L-02Tでは本体内部に飛び交う電磁波の干渉を抑えるよう工夫された基板レイアウトに加え、電源も各ステージを独立させ、さらに左右独立2トランス構成という贅沢さ。
また、同社のアンプにも採用されていた独自のΣ(シグマ)ドライブ・サーキットを搭載し、アンプと接続した際にできるループがもとになって発生する歪みをバイパスしてアンプに流さないことで信号の純度を高めていました。
大型で堅牢なつくりの筐体もあいまって、重量はチューナーの常識をくつがえす12.4Kgとまるでアンプ並み。重量においても史上最重量級のチューナーです。
価格も超ド級
性能が超ド級なら価格もしかり。当時のFMチューナーは、高級機でも10万円を超える機種はごく限られていましたが、L-02Tはそれらの遥か上をいく定価30万円。
いかにFMが貴重な音源だったとはいえ、この常識破りの価格に喜んで財布の紐を緩めたユーザーはごく限られていたことでしょう。その意味では「幻のチューナー」と呼んでも良いかもしれません。

データ
- モデル名:L-02T
- 発売:1981年(昭和56年)
- 定価:300,000円
- S/N比:88dB(ステレオ)、98dB(モノ)
- 高調波歪率:0.01%(1kHz、ステレオ)、0.004%(1kHz、モノ)
- チャンネルセパレーション:60dB(1kHz)
- サイズ:W480 x H147.5 x D423(mm)
- 重量:12.4kg
カタログより





管理人のつぶやき
すでに手放してしまいましたが、史上最高のチューナーを使ってみたくて中古のL-02Tを入手したことがあります。
第一印象は「でかい」「重い」「カッコいい」。
使ってみると実に高級感あふれる操作感。走行長の長~いスケールに手ごたえバツグンのダイヤルを回して指針をすべらせ、3つのメーターを見ながらチューニングします。メーターの指針の振れ方がゆったりとした余裕を感じさせてまたイイ。
同調ロックされた時に出てきた音は…やはり並みのチューナーとはひと味もふた味も違いました。音の重量感というか密度というか。とにかく濃いのです。それでいて細かい音もよく分離されて聴こえます。人の声などゾクゾクするほど生々しい。良く言われる「放送局と直結したような」とはこういう音なのか、と感激しました。
ただ拙宅の受信環境はあまり良くないため、S/Nが十分とれなかったのが残念でした。やはり30万円もの高級チューナーを持つなら、FM専用のアンテナを設置しないと宝の持ち腐れになっちゃうな、と思いました。


