FM放送などラジオがアナログレコードとならんで貴重な音源だった時代、放送を録音する「エアチェック」はラジカセ定番の使い方でした。TPR-810は番組開始時刻ぴったりに録音がスタートできる正確なクォーツタイマーを搭載した初めてのステレオラジカセです。
目次
アイワ TPR-810(Stereoクォーツ810)とは

エアチェックという常識
現代のように音楽のストリーミング配信などなかった昭和のヤングにとって、ラジオの音楽番組はとても貴重な音源でした。LPレコードは一枚2,500円程度と、当時の若者にとってはかなりの贅沢品でしたからそう簡単に買う訳にもいかず、のちに流行するレコードのレンタルも80年代を待たねばなりませんでした。
そこで、FMやAMの音楽番組で流される好みの楽曲をテープに録音する、といういわゆる「エアチェック」が音楽好きの嗜みとして定着しました。
エアチェックのやり方にはふた通りありました。ひとつは音楽番組をリアルタイムに聴きながら欲しい曲だけ録音する、というもの。これには少々テクニックが必要でした。
DJが曲の紹介を終える瞬間をねらってラジカセやデッキのポーズボタンを解除して録音開始。で、曲が終わった瞬間にふたたびポーズボタンを押して録音終了です。このインとアウトのタイミングをいかに正確にとるか、というのがエアチェッカーの腕の見せ所でした。タイミングがわずかでもズレると曲の端っこが切れしまったり、逆にいらないアナウンスが入ってしまったりしたのでした。
もう一つのやりかたは番組の頭からおしまいまでまるまる録音してしまい、あとで好きな曲だけ別のテープにダビングする、というもの。これならタイミングがズレてもやり直しが簡単です。もっとも、ダビングするとノイズが増えたり音質が劣化してしまうので、あまりカセット向きとは言えませんでしたが。
まる録り派のつよい味方
番組をまる録りするならタイマーを使った「留守録」が便利です。
ほとんどのラジカセには「タイマースタンバイ・スイッチ」なるものが付いていました。ラジカセの外部につないだタイマーと連動させて録音を開始させることができましたので、留守の間や眠っている時間帯でも番組を録音することができます。
TPR-810はタイマーを内蔵したことが大きな特徴。しかも正確無比なクォーツタイマーです。まる録り派にとってこれほど心強い味方はありませんでした。

基本性能の優れたデッキ部
カセットデッキメーカーとして定評のあるアイワらしく、デッキ部の性能は優秀です。
テープの走行安定度を表すワウ・フラッターはコンポデッキ並みの0.09%。当時新登場した高性能なフェリクロームテープにも対応した3ポジションのテープセレクターを装備。ヘッドには音質と耐摩耗性を両立させた超硬質パーマロイを採用しています。
また、録音レベルは自動設定のオートのほかマニュアル調整も可能。テープの性能をシビアに追及したいコダワリ派にはうれしい装備です。

カセットホルダーにはオイルダンプ式イジェクトを採用し、スムーズで高級感のあるテープの出し入れが可能です。
充実のオーディオ部
アンプは出力6W(3W+3W)と余裕十分。また、スピーカーを本体前面だけでなく側面にも配置した4スピーカー方式。ステレオワイドが選べるモードスイッチと相まって、コンパクトなボディからは想像のつかない広がり感のあるサウンド空間を再現します。

高音と低音を独立させた本格的トーンコントロールに、小音量時でも迫力あるサウンドを響かせるラウドネススイッチも装備。

流行のシステムアップにも対応
ラジカセを核に、レコードプレーヤーや外部スピーカーを繋いで簡単なステレオシステムを組み上げることを「システムアップ」と呼んで、コンポステレオを組むゆとりのないヤングを狙って各社がアピールしていました。
アイワではシステムアップのことを「ミュージックトレイン」と称し、かなり積極的にフィーチャーしていました。カタログにはシステムアップ用のダイレクト・ドライブ・プレーヤーや2ウェイバスレフ式スピーカーが載っています。総額10万円オーバーですが、システムコンポよりは安かったです。

なお、名称の「ミュージックトレイン」は、列車(トレイン)のようにラジカセや周辺機器を「連結」させよう、というコンセプトを表したもの。なかなかシャレたセンスですね。
データ
- モデル名:TPR-810(stereoクォーツ810)
- 発売:1977年(昭和52年)
- 定価:66,800円
- サイズ:W450 x H326 x D131mm
- 重量:6.5kg(電池含む)
カタログより


管理人のつぶやき
カタログを飾るシステムアップの写真はどのメーカーのものもカッコよく、激しく物欲を刺激されたものです。コンポにはまだまだ手が届かないけどこれぐらいならなんとか!という絶妙な価格設定。
カッコ良さの決め手は実はラックだったりします。残念ながらアイワのラックは良く言えば質実剛健、実質本位。ストレートに言えば地味です。アイワというメーカーのイメージもそんな感じでしたが。
この日立パディスコのラックはとても気合の入ったデザイン。好き嫌いはあるでしょうが、どうせやるならアイワにもこのぐらいやってほしかったかな。


