BOSTON – 奇才トム・ショルツのクリエイティビティが生んだ幻のバンド

工学系の名門MIT(マサチューセッツ工科大学)出身のトム・ショルツが結成したアメリカのロックバンド。実質的にはトムがプロデュースしたプロジェクトのようなまさに幻のバンドでした。

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BOSTONとは

ボストン幻想飛行
デビューアルバム『幻想飛行』

奇才トム・ショルツ

ボストンを創ったトム・ショルツはMIT卒業後にポラロイド社に入社し、エンジニアとしてキャリアをスタートするというバリバリ理系の人でした。

しかしMIT在学中に独習したギターから火が付いたミュージシャン魂は抑えがたく、自宅にプロ顔負けの録音スタジオを構築。仕事のかたわら創りあげたデモテープがレコード会社の目に(耳に)留まり、プロデビューすることとなりました。

くだんのデモテープはボーカル以外はほぼすべてトム・ショルツが担当。ギター、ベース、キーボードにドラムです。まさに奇才と呼ぶべきマルチタレントぶりを発揮しました。

ただ、それよりも驚くべきは楽曲の素晴らしさです。デビューアルバム『幻想飛行』の始めの曲『More than a feeling(宇宙の彼方へ)』でいきなりボストンの虜になった人も多かったことでしょう。

バンドとしてのスタート

デモテープはほぼトムひとりで作り上げたものでしたが、レコード化するにはさらにクオリティをあげる必要がある、ということと、バンドのプロモーションに必須となるライブコンサートのためにメンバーが集められました。

トムとツイン・リードギターを担うことになるバリー・グドロー、ドラムスのシブ・ハッシャン、ベースのフラン・シーハン。ボーカルはデモテープから引き続きブラッド・デルプという布陣です。

ボストンのメンバー
ボストンのメンバー トムは長身です

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すべて手造り – no synthesizer used –

ボストンの音創りはすべて手造り。当時使われ始めていたシンセサイザーやリズムボックスといった機械に頼らず、自分たちで演奏した音源をトムがミックスダウンするという気の遠くなるような手間をかけた作品でした。

厚みのあるボストン・サウンドが完成の域に達したのは2枚目のアルバム『ドント・ルック・バック』。ビルボードで1位を獲得し、人気を確固たるものとした名作です。

ドント・ルック・バック
ボストン史上もっとも売れたアルバム『ドント・ルック・バック』

ボストン・サウンド

ボストンのサウンドには一度聴いたら忘れられない特徴があります。ひとつにはトムが発明したエフェクターによるギターの音色。歪んでいるのにマイルドで温かみがあるボストン・サウンドのもっとも核心的な要素です。このエフェクターはのちに他の多くのミュージシャンが採用することになります。

ふたつ目は多重録音による分厚いサウンド。まだ録音装置がアナログの時代にあれだけの厚みを持った音を創るのは容易ではありませんでした。職人芸といえる技と根気が必要です。レコードに”no synthesizer used”とクレジットしたくなるのも頷けます。

そして3つ目にあげたいのはブラッド・デルプによる透き通ったハイトーンのボーカル。トムの魔法の多重録音によって美しいコーラスが生み出されるのも素の声が良いからです。ボストンにはかけがえのないメンバーでしたが、残念なことに2007年、自死してしまいました。

オリンピックよりも寡作なバンド

デビューアルバムの『幻想飛行』(1976年)から次の『ドント・ルック・バック』(1978年)までは2年間のインターバルでしたが、3枚目の『サード・ステージ』(1986年)発売までには8年間という長いブランクがありました。

そしてその後も8年以上間隔があくというボストン・サイクルによって悠々自適にアルバムをリリースしていきます。

  • 4枚目『ウォーク・オン』(1994年)
  • 5枚目『コーポレイト・アメリカ』(2002年)
  • 6枚目『ライフ、ラブ&ホープ』(2013年)

ちなみにバンドのメンバーは変遷を重ね、オリジナルメンバーを含めるとなんとのべ16名を数えます。なかには親子で参加したメンバー(フラン・コスモとアンソニー・コスモ)や、女性ボーカル(キンバリー・ダーム)も加わるなど、今でいう多様性に富んだバンドというかプロジェクトになっていきました。ある意味、やはり幻のバンドだったといえましょう。

管理人のつぶやき

管理人が初めてボストンを聴いたのは2枚目のタイトルチューン『ドント・ルック・バック』でした。中学2年か3年の時でしたね。あまりの衝撃になけなしの小遣いはたいてアルバムを買いました。

アルバムを通しで聴いてノックアウトされると、それならぜひデビューアルバムも、ということで『幻想飛行』も購入。自分の中のロック音楽感性のキモの部分はこれで決まってしまいました。

3名目以降のアルバムもすべて入手しました。いずれもボストンらしさは感じられるものの、はじめの2枚を凌ぐ作品にはならなかったなぁというのが正直な感想。でもアルバムを出し続けてくれただけで尊いです。ありがとう、トムと仲間たち。

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