日産 ローレル(初代) – ハイオーナーカーという新ジャンルを切り開く

高度経済成長の波に乗る日本経済は、池田内閣がぶち上げた所得倍増計画を1967年に達成。翌年には国民総生産がアメリカに次ぐ世界第二位に躍り出るという黄金時代を背景に、自分でハンドルを握る高級車として登場したのが日産のローレルでした。

日産 ローレル(初代/C30型)とは

日産ローレル(初代)
日産ローレル(初代)

初代ローレルというクルマ

日産ローレルと聞くと、90年代のちょっと渋いセダンを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、話はずっとさかのぼって1968年。初代ローレルが登場したときは、そもそも「個人が乗る高級車」という概念自体が、まだ新しかった時代でした。

当時のラインアップを思い出すと、ブルーバードはしっかりした大衆車、セドリックはどちらかというと会社や役所、運転手付きのイメージが強い存在。そのちょうど間に「自分で運転して楽しむ、ちょっといいクルマを作ろう」として生まれたのがローレルです。いまなら当たり前の考え方ですが、当時としてはかなり先進的だったんじゃないでしょうか。

ハイオーナーカーという新ジャンル
ハイオーナーカーという新ジャンル

日産はこのローレルを「ハイオーナーカー」と呼んでいました。なんだか気恥ずかしくなるような言葉ですが、要は“余裕のある大人が、自分で乗るためのクルマ”。速さをひけらかすわけでもなく、かといって実用一辺倒でもない。そのあたりの立ち位置が絶妙なのです。

510ブルーバードと兄弟っぽい雰囲気

初代ローレルを眺めていると、「あれ、これ510ブルーバードに似てない?」と思う人も多いはず。実際、開発時期が重なっていたこともあって、雰囲気はかなり近いものがあります。直線基調でスッとしたスタイル、無理に飾らないけれど安っぽくもない、あの感じです。

510型ブルーバード
510型ブルーバード

ただし、ローレルは一回り大きく、全体にゆったりしています。ホイールベースも長めで、特にリアまわりの伸びやかさは、ブルーバードとは別格。後席に座っても「ちゃんとしたクルマに乗ってる感」があるのは、やっぱりローレルならではですね。

エンジンは、日産とプリンスの合併直後という時代背景もあって、プリンス系のG18型を搭載。日産製ボディにプリンスのエンジン、という組み合わせは、今思うとちょっと面白い時代の産物です。

日産初のピラーレスハードトップ

初代ローレルを語るうえで外せないのが、やっぱり2ドアハードトップ。これがまた、実にエレガントなのです。しかも日産初のピラーレスハードトップ。窓を全部下げたときの開放感と、あのスッとしたシルエットは、今見ても惚れ惚れします。

流れるようなフォルム
流れるようなフォルム

三角窓がないのも当時としては先進的で、空調性能に自信があった証拠でしょう。こういうところに「高級車ですよ」という無言のアピールが効いています。

さらに2リッターモデルには「2000GX」というスポーティなグレードも用意されていて、SUツインキャブ仕様。とはいえ、ガチガチのスポーツというよりは、「余裕のある走りを楽しむ」ための性能。速さを誇るというより、余裕を楽しむクルマだったんだと思います。

流れるウィンカーと隠された給油口

リアビューで強烈に印象に残るのが、あの赤一色のテールランプ。しかも3連で、ウィンカーが内側から外側へと流れる、いわゆる「流れるウィンカー」です。最近のLEDウィンカーとはまた違う、電球ならではのゆったりした動きがたまりません。

特徴的な流れるウィンカー
特徴的な流れるウィンカー

ブレーキランプとウィンカーが共用なのも、いかにもアメリカ車的。当時のローレルが、どこかアメ車っぽい雰囲気をまとっているのは、このあたりの影響も大きいでしょう。

それから、給油口がナンバープレートの裏に隠されているのも面白いポイント。ボディサイドに余計なフタをつけないという美意識、いかにも“ハイオーナーカー”らしいこだわりです。

「ローレル」という名前の重み

ローレルは月桂樹、つまり勝者に与えられる月桂冠のローレル。ちょっと気取った名前ですが、当時の日産の本気度が伝わってきます。ブルーバードより上で、セドリックほど仰々しくない。そんな絶妙なポジションを、名前からもきちんと演出していたわけです。

結果としてローレルは、後にマークⅡと並ぶ存在になり、日本の“ちょっといいセダン”文化を引っ張っていくことになります。その原点が、この初代ローレル。いま見返しても、ただの古いクルマじゃなく、「新しい価値観を形にしようとした意欲作」だったことがよく分かります。

派手さはないけれど、じわじわと味が出る。旧車イベントで見かけると、つい足を止めてしまう。初代ローレルって、そんなクルマなんですよね。

日産ローレル(初代)

データ

  • 販売期間:1968年(昭和43年)~1972年(昭和47年)
  • エンジン:直4 1,815/1990cc
  • ホイールベース:2,620mm
  • 全長:4,290/4,350mm(セダン)、4,330mm(クーペ)
  • 全幅:1,605mm
  • 全高:1,380/1,405mm(セダン)、1,380mm(クーペ)
  • 重量:965/1,035kg(セダン)、1,020kg(クーペ)

管理人のつぶやき

管理人のなかでは、ローレルといえばバブル時代にトヨタのマークⅡ3兄弟と並んで売れまくった6代目(C33型)ですね。伝統のピラーレスハードトップを採用した低くてスタイリッシュなボディに、スカイラインと同じ名機RB20型直列6気筒エンジンと後輪のマルチリンクサスペンションが生み出すアスリートのような走り。

手首にロレックスをチャラつかせたバブルを地で行くような職場の先輩に、6代目ローレルで六本木だったか青山だったかまで夜のドライブに連れてってもらったのを覚えています。胸のすくような加速感にしなやかな乗り心地。田舎者には煌びやかな都会の灯りがまぶしかったっけな。ビーエムやベンツじゃなくてローレルだった、というのがなんか微笑ましいですね。

フォトギャラリー

日産ローレル2000GXクーペ
2000GXクーペ
日産ローレル2000GXクーペ
3連式ウインカー
3連式ウインカー
日産ローレルGX
ハイオーナーカーにはレッドカーペットがふさわしい
開放感バツグンなピラーレスHT
開放感バツグンなピラーレスHT
ダンディズムを感じる後ろ姿
510ブルーバードとよく似ているセダン
510ブルーバードとよく似ているセダン
初期型ローレル(初代)
クーペとは打って変わってスクエアなフォルム
クーペと異なるデザインのウィンカー
クーペと異なるデザインのウィンカー
2000GXハードトップ
2000GXハードトップ
2000GXハードトップ
いちばん映えるビュー
2000GXハードトップ
スポーティーグレードの証
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