オーディオ専業メーカーであったオンキョーが1981年に発売したプリメインアンプの最上位機種。サーボテクノロジーに磨きをかけ、AU-Dシリーズを擁する王者サンスイに挑みました。
目次
オンキョー A-820GTとは

オンキョーアンプの看板テクノロジー「スーパーサーボ」
アンプの増幅素子が真空管からトランジスタに置き換わっていったのが1960年代。当初は「音が硬い」と言われたトランジスター式アンプですが、パーツの品質・性能向上や回路技術の進化によって音質面だけでなく信頼性も含めて真空管式を凌駕することになり、70年代になると一部のメーカーを除いてトランジスタ式アンプ一色になりました。
トランジスタ式アンプの性能を飛躍的に向上させたテクノロジーに増幅回路のDC化が挙げられます。DC(直流)まで増幅可能とした回路方式で、音質劣化の要因となるカップリングコンデンサーが不要になることから音質面で大きなメリットがありました。一方、デメリットとしては音楽信号には本来含まれていないDCが回路内部で発生し、出力に漏れ出してしまう(DC漏れ)ことがあり、音質劣化の原因になったりスピーカーに悪影響を与えてしまったりします。
オンキョーは「スーパーサーボ」と名付けた回路によりこれを克服。1978年に発売したプリメインアンプ、Integra A-805/808に搭載し高い評価を受けました。以降、「スーパーサーボ」は80年代のオンキョーアンプの代名詞となり、様々な角度から練り上げられて行きます。
第3世代の「スーパーサーボ・インテグラル」
まずは1980年に発売されたA-817に搭載された「ダブル・スーパーサーボ」へと改良されます。これは、アンプ出力のプラス側だけでなくマイナス側(アース側)にもサーボを効かせることで、アースに起因するノイズや歪を低減させるもの。
翌1981年には後継のGTシリーズが登場しますが、これにはスピーカーが逆チャンネルからの出力を拾うことで発生する起電力が原因となる混変調歪(オンキョーはこれを「時間差歪」と命名)を抑圧する「スーパーサーボ・インテグラル」が搭載されていました。その効果をオンキョーは「左右のスピーカーの間に押し込められていた再生音場のヴェールを剥ぎ取ったよう」と表現していました。

贅沢な物量投入
最上位機種だけに、A-820GTでは個々の部品にはハイグレードなものを採用。ツインワインド方式大型2トランス、重量級ダイキャスト製ヒートシンク、非磁性材料の多用、金メッキ端子など贅沢に物量が投入され、20kgを越える堂々たる重量級アンプとなっていました。


豊富な機能群
当時の主力ソースであるアナログディスク再生を完璧なものとするため、高品位なMCカートリッジの使用を前提としたハイゲインイコライザーを採用。ゲインと負荷インピーダンスの異なるMC用3ポジションと、MMカートリッジ用にも2ポジションを奢っていました。

AM放送やモノーラル録音のレコードなど低解像度のソースを心地よく再生するために、あえてアンプの解像度を落とす「ソフトネス」スイッチを搭載していました。他社製品には見られないオンキョー独自のもの。

再生モードはステレオ、リバースにモノラル3モードとフル装備。現代のアンプでは見なくなった機能です。

崩せなかったサンスイの牙城
オンキョーがこうした意欲的なフラッグシップを投入したのは、明らかにサンスイの最上位機種、907に対抗するためでした。サンスイのラインアップは入門機の607、中級クラスの707、そして最上位に907が君臨するという三層ピラミッドになっており(507という廉価モデルも短期間存在しました)、競合他社もそれをベンチマーク。各クラスに対抗馬を送り込んでいました。オンキョーのIntegraシリーズもA-817,819,820の三兄弟により激しくシェア争いを演じていました。
サンスイは各クラスで常にトップクラスの人気を獲得、いわば横綱相撲を取っていました。なかなかシェアを奪えない競合他社は徐々にフルラインアップを維持することが難しくなります。そして最上位機種をドロップするなどモデルを整理して戦力集中を図っていったのでした。
オンキョーの最上位機種も、820の前身である1980年発売のA-810、1981年発売のA-820GT、1982年のA-820GTR、そして83年のA-820RSを最後に一つ下のモデルである819に席を譲ることになります。その819も1986年のA-819XXが最終モデルとなり、以後はA-817に全力集中することになりました。
データ
- モデル名:Integra A-820GT
- 発売:1981年(昭和56年)
- 定価:159,000円
- 実効出力:110W + 110W(8Ω)
- 全高調波歪率:0.008%以下
- サイズ:W465 x H162 x D431(mm)
- 重量:21.5kg
カタログより



管理人のつぶやき
サンスイアンプのパネルカラーが力強さを感じさせるブラックなのに対して、オンキョーのアンプは上品な印象のホワイトシルバー。音の傾向も70年代のオンキョーアンプは繊細で女性的と評されることが多かったようです。
ただ、サーボテクノロジーで武装した80年代のオンキョーアンプは、電源部の強化もあいまってパワフルさも獲得。ハイゲインイコライザーとパワーアンプのシンプルな2アンプ構成によるストレートなサウンドは、デジタル時代にもフィットした魅力あるものでした。
中古品の価格はサンスイやソニーの333/555などと比べて割安なので、狙い目と言えるでしょう。
蛇足ですが、当時のオンキョーの商品企画担当者は自動車好きだったと想像します。だってGT⇒GTR⇒RSなんてまるでスカイライン。笑


