マツダ キャロル – 小さな紳士は刈り上げがお似合い

スバル360の大ヒットに対抗すべく、マツダが投入したファミリー向けの軽自動車です。小さいながらもスペース有効活用のための工夫が凝らされ、本格的な4ドアセダンに仕立てられていました。

スポンサーリンク

小さくても本格派のセダン

マツダ(当時は東洋工業)が軽自動車に参入したのは1960年のこと。

R360クーペが最初のモデルでしたが、クーペの名の通り基本は2人乗り。後部座席はエマージェンシー用に割り切った狭さでした。エンジンも簡素なV型2気筒と、乗用車としては物足りないスペックでした。

そのマツダが本格的なファミリー向けに開発したのが1962年に発売したこのキャロルです。

マツダ キャロル 斜め前から
小さくてもちゃんとした4ドアセダンです

当初は2ドアモデルからスタートして翌年には4ドアモデルが追加になりました。

当時大ヒットしていたスバル360が今でいう2ボックスのような形なのに対して、キャロルはしっかり3ボックスのセダンらしい成り立ちをしています。

可愛らしいのに子供っぽくなく、端正で気品さえも感じさせます。あたかも「小さな紳士」といった趣のあるデザインです。

クリフカットが特徴的

リアのウインドウが後ろ向きに傾斜している「クリフカット」と呼ばれるスタイルが特徴になっています。

なんとなく「刈り上げ」のヘアスタイルを思い起こさせますね。

マツダ キャロル 斜め後ろから
クリフカットがよく分かります リアに搭載したエンジンの冷却用空気取り入れ口も

このデザインは見た目よりも機能性から生まれたものです。後席をリアのバルクヘッドぎりぎりまで下げ、その背もたれの延長線になるようにリアのガラスを設定したことで、頭がつかえず広々とした空間を確保することができました。

また、リアトランク(キャロルの場合はRR(後輪駆動)なのでエンジンフード)の開口部を大きく取ることができるというメリットもありました。

リアに搭載したエンジンを冷却するため、側面に空気取り入れ口が開いています。ここから外気をファンで取り込み、強制的に冷却する仕組みになっていました。

ちなみに、クリフカットという形状は、フォード・アングリアなどの外国車で見ることができますが、国産車ではこのキャロルぐらいではないでしょうか。

凝ったエンジン

エンジンは水冷直列4気筒の4ストロークOHVという本格的なものを採用していました。

アルミ製シリンダーに5ベアリングのクランクシャフト、半球型燃焼室とクロスフロー配置の吸排気弁を採用するなど凝った設計となっていました。

ただ、将来的に上位車種にも搭載することによる量産効果を狙ったため、排気量拡大に対応できる余裕を持った設計としたことで重量的には不利でした。剛性を高める配慮がなされたフル・モノコックボディの重さとあいまって、車重は500kgをオーバーしてしまいました。

車重400kg未満の軽量ボディでスイスイと軽快に走るライバルのスバル360に比べて、良く言えば軽自動車にしては重厚な乗り心地、悪く言えばキビキビ感に欠けるおっとりした性格のクルマとなってしまいました。

幻のロータリー化計画

1960年代後半になると、競合各社から強力なライバルが続々と登場。なかでもホンダのN360は先進的なFFレイアウトと圧倒的な高出力エンジンの搭載で軽自動車のあり方を革新しました。

時代の流れに取り残された「小さな紳士」は小手先のリフレッシュではどうにもならず、販売台数は激減してしまいました。

そこに起死回生を狙ってのちのマツダの代名詞ともなるロータリーエンジンの搭載が検討されました。しかし運輸省が軽自動車用エンジンとして認可しなかったことや技術的問題もあり、実現には至りませんでした。

平成時代に再登場

1970年の生産終了後、長いブランクを経て平成元年(1989年)に『オートザム・キャロル』として復活します。

しかし、これはマツダ自社開発ではなくスズキのアルトをベースに内外装のみを独自設計したものです。

初代ほどの特徴はなかったものの、丸くてキュートなデザインが女性にうけ、まずまずの販売台数を記録しました。

続く4代目からはアルトのOEMとなり独自性は完全消滅。キャロルの名前だけが残ることになりました。

スポンサーリンク

データ

  • 販売期間:1962年~1970年(昭和37年〜45年)
  • エンジン:直列4気筒OHV 358cc
  • ホイールベース:1,930mm
  • 全長:2,980mm
  • 全幅:1,295mm
  • 全高:1,340mm
  • 車重:525kg

管理人のつぶやき

本文では「小さな紳士」と表現しましたけど、漫画の「コボちゃん」みたいだな、というのが正直なところ。あの刈り上げがね。

ともあれこのサイズでも立派なセダンとして成立しているのは素晴らしいですね。

フォトギャラリー

マツダ キャロル クーペ
水色系のツートーンが素敵です こちらはクーペですね
マツダ キャロル リアのアップ
クリフカットをじっくり見てみましょう
マツダ キャロル 横から
後傾しているリアウインドウ
マツダ キャロル エンジンルーム
リアのエンジンルーム トランクじゃありません
マツダ キャロル 運転席
運転席のようす シンプルそのもの
マツダ キャロル 正面
よゐこなお顔をしています
タイトルとURLをコピーしました