昭和ラジカセのデザイン – スピーカーグリル前編:プラスチック

昭和の若者にとって、ラジカセは青春時代をともに過ごしたパートナー。ニッポンが世界に誇る電化製品の花形だったともいえるでしょう。多くのメーカーがしのぎを削ったラジカセには、性能や機能だけでなくデザインにも見るべきところが盛りだくさん。まずはラジカセの顔ともいえるスピーカーグリルについて、じっくり味わってみたいと思います。

スピーカーグリルとは

スピーカーグリルとはスピーカーを保護するためのカバーのこと。より正確にいうと、スピーカーの振動板(コーンともいいます)が外部からの衝撃で傷んだりしないないように、スピーカーの前面を覆うものです。

単品スピーカーの場合には、サランネットなどクロス製のグリルが多く、リスニング時には音の通りをよくするために外されることが多いです。

ラジカセの場合は持ち運ぶことが多いため、スピーカーが剥き出しではどこかにぶつけたりして痛めてしまう危険性があります。そのため、グリルは本体と一体化されていて外せないようになっているものがほとんどです。

形や素材も様々なラジカセのスピーカーグリル
形や素材も様々なラジカセのスピーカーグリル

スピーカーグリルはラジカセの表面積に占める比率が最も高いため、ラジカセのデザインを決定づける最重要パーツ。ラジカセの顔、といっても過言ではありません。

グリルのデザインは素材の違いによるところが大きいため、素材ごとに見ていきましょう。今回はプラスチックです。

プラスチック製グリル

デザインのバリエーションが最も多いと思われるのがプラスチック製グリルです。プラスチックの成型には金型を使いますが、新たな金型をおこすのはコストがかかるため大量生産向き。大衆向けの家電製品であるラジカセには好適といえましょう。

スリット

細長い線状の開口部が並ぶパターン。ルーバーとも呼ばれるようです。初期のラジカセに比較的よく見られるデザイン。シンプルで嫌味がありませんが、どちらかといえばクラシカルな印象です。他の形状よりもホコリが溜まりやすいかもしれませんが、掃除は綿棒でなぞるだけなので簡単です。

ソニー CF-1600

ラジカセ黎明期のモデルといって良いでしょう。スピーカーグリルは控えめでスピーカーの存在をあまり感じさせません。スピーカーグリル以外のエリアをぐるりとホワイトの線で囲ったデザインがユニークです。

ソニー CF-1600 1972年(昭和47年)
ソニー CF-1600 1972年(昭和47年)
ソニー CF-3800

ステレオラジカセがまだ非常に高価だった時代のモデル。CF-1600とくらべて積極的にデザインされたスリットは存在感があります。高級機らしい重厚感のあるデザインです。

ソニー CF-3800 1976年(昭和51年)
ソニー CF-3800 1976年(昭和51年)
日立 TRK-5190

日立パディスコとしては初めてのステレオタイプ。10cmという小型スピーカーをフルレンジではなくあえて2ウェイで使用。ツィーターの存在を際立たせたデザインです。

日立 TRK-5190 1976年(昭和51年)
日立 TRK-5190 1976年(昭和51年)
アイワ TPR-810

タイマーとしても機能するクォーツ時計を内蔵した初のラジカセ。クラシカルなスリットグリルとモダンなデジタル表示のアンマッチ感が微笑ましいデザインです。

アイワ TPR-810 1977年(昭和52年)
アイワ TPR-810 1977年(昭和52年)

パンチング

丸や楕円などの小穴を多数穿ったパターンです。単調な印象になりがちなので、ツイーター部は異なる形状にして変化を出すなどの工夫が見られます。

ナショナル RQ-448

横の長丸パンチングです。丸穴とくらべてファッショナブルな印象。ライトグレーのボディとあいまって軽快なイメージです。

ナショナル RQ-448 1973年(昭和48年)
ナショナル RQ-448 1973年(昭和48年)
シャープ GF-123MT

一発頭出し機能のAPSSや多機能マイクなど、先進性をアピールしていたシャープ。グリルにもメタリックな塗装を施して、まさにシャープな雰囲気を醸し出しています。

シャープ GF-123MT 1975年(昭和50年)
シャープ GF-123MT 1975年(昭和50年)
アイワ TPR-255

BCLブームにラジカセで参入したアイワらしい一台。一見すると横スリットですがよく見るとパンチングのように見えます。ツィーター部をホーン形状にした凝ったデザインです。

アイワ TPR-255 1976年(昭和51年)
アイワ TPR-255 1976年(昭和51年)
パイオニア RK-888

オーディオメーカーらしいひと味違ったデザイン。パンチング穴が大きめなのは音ヌケを良くするためと思われます。ウーハー部は立体的な形状をしており、一角に円形のツィーター部が食い込んでいます。メッシュからツィーターのメタルキャップがキラリと透けて見えるところもカッコイイ。さすがパイオニアと唸らせる、ニクいデザインです。

パイオニア RK-888 1976年(昭和51年)
パイオニア RK-888 1976年(昭和51年)
ビクター RC-727

立体的な横長丸のパンチングですが、メタリック塗装のディフューザーふうツィーターグリルの自己主張が非常に強いため、ウーハーの存在感がやや希薄です。

ビクター RC-727 1977年(昭和52年)
ビクター RC-727 1977年(昭和52年)
ソニー CFS-686

正立式メカにドルビーNR搭載と、ラジカセのグレードを一気に引き上げた名機。大型メーターを搭載したスラント式のトップパネルと正立式メカが引き立つよう、グリルの存在感は控えめです。

ソニー CFS-686 1978年(昭和53年)
ソニー CFS-686 1978年(昭和53年)
ビクター RC-M80

1980年代になるとメタルメッシュのグリルが主流となり、プラスチック製グリルは少数派になりました。ビクターは最後まで粘ったメーカーのようです。四角いパンチングがメカニカルな印象。

ビクター RC-M80 1980年(昭和55年)
ビクター RC-M80 1980年(昭和55年)

独自デザイン

同じパターンの繰り返しであるスリットやパンチングとは異なる独自デザインには、ラジカセの個性が色濃く表れます。デザイナーの腕の見せ所といえましょう。

ナショナル RQ-552

ナショナルのラジオ、クーガシリーズにも相通じる凝ったデザイン。放射状の桟と惑星のように並べた円の組み合わせが存在感バツグンです。いかにも良い音がしそうなイメージ。それもそのはず、ニックネームは「音のMAC」。

ナショナル RQ-552 1975年(昭和50年)
ナショナル RQ-552 1975年(昭和50年)
ビクター RC-707

パンチングの一種ではありますが、中央にツィーター用グリルを配したデザインがユニークなので独自デザインとしました。実はスピーカーはフルレンジなのでなんちゃってグリルなのですが、あたかも同軸2ウェイのように見せています。

ビクター RC-707 1975年(昭和50年)
ビクター RC-707 1975年(昭和50年)
ナショナル RQ-556

ワイヤレスマイクがリモコンにもなる遊べるラジカセ。放射状の桟のみで構成されています。RQ-552のグリルよりも現代的なイメージです。

ナショナル RQ-556 1976年(昭和51年)
ナショナル RQ-556 1976年(昭和51年)
東芝 RT-2800

いかにもメカ好き少年のココロを刺激しそうなデザイン。リズムよく配置された大小の惑星は宇宙をイメージさせます。全体的にメカニカルな風合いで統一感があります。

東芝 RT-2800 1976年(昭和51年)
東芝 RT-2800 1976年(昭和51年)
アイワ TPR-830

TPR-810の後継機にあたります。TPR-810ではクラシカルなスリットタイプだったグリルは、スピーカーの存在感を強調するメタル調の丸い縁取りの中に折れ曲がったスリットを設けたユニークなデザインになりました。ただ、全体的にはいまひとつ垢ぬけない印象も。

アイワ TPR-830 1977年(昭和52年)
アイワ TPR-830 1977年(昭和52年)

管理人のつぶやき

素人目線のデザイン評、いかがだったでしょうか?

プラスチック製グリルは、次回紹介する予定のメタル製やクロス製のグリルにくらべてデザインの自由度が高くて観ていて面白いです。可塑性に富んだ素材であるプラスチックならではといえましょう。

このことは、メーカーごとの個性が発揮しやすいことを意味します。スピーカーグリルを見ただけでどのメーカーのどのモデルかわかるぐらいです。デザイナーもさぞや力が入ったことでしょう。

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